ある日、皇帝の甥（おい）で廷尉（ていい）の陸時硯（りくしげん）は見知らぬ女に胸を刺される夢を見て目を覚ます。城西渠（じょうさいきょ）が崩壊し、捜査を命じられた陸時硯は、無実を訴える工事の責任者・沈文祁（しんぶんき）を連行。そこで沈（しん）家の次女・沈甄（しんしん）の涙を見た瞬間、陸時硯は胸が締め付けられ気絶してしまう。後日、沈甄の涙を再び見た陸時硯は、彼女が泣くと胸が痛むこと、夢に現れた女と沈甄が瓜二つであることに気がつく。さらに捜査を続け、沈文祁の罪に疑問を感じた陸時硯は、沈甄とともに潜入捜査で恋人同士を演じることに！？ 恋人として過ごす時間の中で、衝突しながらも惹かれ合い…。涙と胸の痛み、不可解な夢で繋がる2人の事件と恋の真相とはー！？

永安（えいあん）城に住む沈甄（しんしん）は、有能な都官尚書（とかんしょうしょ）の父･沈文祁（しんぶんき）と、商才に恵まれた姉・沈姌（しんぜん）にかわいがられて幸せに暮らしていた。だがある日、廷尉府（ていいふ）の陸時硯（りくしげん）が屋敷に乗り込んでくると状況は一変する。沈文祁は城西渠（じょうさいきょ）の建築に携わっていたが、長引く大雨で城西渠が崩壊し大勢が亡くなったため、責任を問われて連行されることに。父の無実を信じる沈甄が涙ながらに訴えると、突然、陸時硯の胸が締め付けられ、挙句には気絶してしまう。

父から託された金庫の中身が誕辰の贈り物であったことが腑に落ちない沈甄は、ふとあることを思い出す。それは金（きん）氏銭荘（せんそう）の店主が漏らした言葉だった。沈甄は他にも父が預けた物があるに違いないと確信し再び銭荘に向かうが、同じくそれを狙う者にあと一歩のところで持ち去られてしまう。銭荘で火事に巻き込まれ誘拐されそうになったところを陸時硯に助けられ、2人は城西渠崩壊の真相解明と父親救出のために協力しあうことになる。

粛寧伯（しゅくねいはく）府での危機を脱した沈甄は陸時硯の屋敷に身を寄せることになった。父の無事解放を祈る沈甄は涙に暮れるが、そのたびに陸時硯の胸は激しく痛む。陸時硯は施工図が粛寧伯府で発見された理由を探るため、粛寧伯（しゅくねいはく）と許威（きょい）を拷問にかけるが、納得のいく答えを得ることはできない。そんな中、御史台（ぎょしだい）の周述安（しゅうしゅつあん）が現れ、沈文祁が牢（ろう）内で毒を盛られたと告げる。また周述安は施工図の筆跡を鑑定するため沈文祁の娘婿･李棣（りてい）を同行させていた。

沈甄と陸時硯は街中で城西から流浪してきた民と遭遇する。流浪民の履物に違和感を覚えた陸時硯が共同で捜査をする周述安に会いに行くと、施工図がすり替えられたという事実を告げられる。捜査状況を整理した2人は改めて、捜査のために力を合わせることを決める。一方、沈甄は陸時硯の屋敷に戻る途中でまたも許威に狙われてしまう。沈甄の身を挺した作戦と、駆けつけた陸時硯の機転により難を逃れるが、沈甄は気を失ってしまい…。

自分の夫が愛する妹を苦しめていたことを知った沈姌。平静を装いながらも心中は複雑だった。一方、沈甄は施工図の下図を得るため呉（ご）州へ行きたいと陸時硯に頼み込むが、若い娘の連続失踪事件が解決するまでは無理だと拒まれる。廷尉府は犯人から逃げ出した娘の証言を得ようとするが、娘は男性との面会を極度に恐れ、捜査は難航。それを知った沈甄は女子の役人として娘に会い、動揺する彼女に優しく語りかけ、犯人の姿絵を描きあげた。

陸時硯のもとへ母である長公主が突然訪ねてくる。長公主は華やかな格好をした沈甄を妓女（ぎじょ）だと思い込み、出自の怪しい女子を囲わないよう陸時硯に忠告する。陸時硯は沈甄の部屋へ行き、長公主の非礼を謝罪するのだった。李棣は沈姌に高価な羊脂玉（ようしぎょく）から作られた腕輪を贈る。母の文（ぶん）氏にも高価な宝飾品を贈ったと知った沈姌は、李（り）家の帳簿を調べる。だが帳簿に宝飾品に関する記載はなく、沈姌はますます夫への疑いを強めるのだった。

沈姌の夫・李棣に妾（めかけ）がいることが発覚。しかもその女は李棣の子を妊娠しており、李（り）府に引っ越してくることになった。夫に不信感をさらに募らせる沈姌は、周述安から届いた文を読み、妾も李棣に利用されていること、そして自分も周述安の捜査のために利用されていることを悟る。一方、身分を偽装した沈甄と陸時硯は無事に呉州へ到着。施工図の下図を持つ魯思（ろし）の屋敷を訪ねるが、すでに呉州で悪名高い趙沖（ちょうちゅう）に奪われたあとだった。

荊（けい）州の商人・衛晛（えいけん）とその妾・秦卿（しんけい）に成りすまして呉州に来た陸時硯と沈甄は、派手な振る舞いで注目を集める。2人は地元の商人と噂（うわさ）話をしている趙沖の前に現れ、李（り）画伯の｢春江（しゅんこう）図｣を贈る。趙沖は、衛晛が自分の管轄する穀物を使って酒造りの商売をしようとしていることを聞くが、衛晛の素性を疑って、すぐには応じない。さらに自分の妾の扶曼（ふばん）と沈甄の交換を持ちかけたため、怒った陸時硯は、｢春江図｣を取り戻し、商いの提案も取り下げる。

沈姌と周述安は李棣の文鎮を拓本に取り、それを使って密書を解読する。密書の内容は、李棣が沈文祁を陥れた動かぬ証拠だった。沈姌と周述安は、李棣の銭の流れを調べるため、帳簿を捜すことにする。呉州に来ている陸時硯は、商談を装い趙沖の屋敷を訪ねる。扶曼を妾に迎えるよう勧められた陸時硯は、秦卿の機嫌を取るため趙沖から絵を譲り受けることになる。だが陸時硯が「秋月（しゅうげつ）図」を所望すると、趙沖は不自然に話をそらし…。

趙沖の手先として送り込まれた扶曼には、さまざまな任務が課されていた。薬の知識を持つ扶曼は陸時硯に薬湯での湯あみを勧め、陸時硯の衣まで脱がせようとする。ある情報により扶曼の狙いに気づいた沈甄が直前で阻止して事なきを得たが、訳あって任務を全うしたい扶曼との間でいくつもの攻防が繰り広げられる。一方、都にいる沈姌と周述安は李棣の別邸で、ある装置を見つけた。沈姌が記憶や推理を頼りにその装置を起動させると…。

沈甄は施工図の下図が隠された｢秋月図｣を発見するが、簡単には奪えそうにない。すり替えるための贋作を描いている陸時硯と沈甄のところへ、趙沖に渡す金塊の到着が遅れるという知らせが届く。この危機を乗り切るため、陸時硯は贋作の｢秋月図｣を持って趙沖の屋敷に忍び込み、絵のすり替えに成功。そこで偶然、趙沖と都の関係を聞いた陸時硯は、自分は呉州に残り捜査を続けるため、帰京して周述安に下図を渡してくれと沈甄に伝える。

陸時硯は趙沖と李記（りき）を捕らえて水路を進むが、追いかけてきた龐術（ほうしゅつ）に深手を負わされる。薄れゆく意識の中で思い出したのは愛らしい沈甄の姿だった。沈甄はいつまで経っても待ち合わせ場所に来ない陸時硯を心配する。そこへ現れたのは手下を連れた龐虎（ほうこ）だった。だが危ういところで孟（もう）将軍が駆けつけ、九死に一生を得る。一方、周述安は李棣と何如（かじょ）の通婚帖を沈姌に見せる。李府に戻った沈姌は、重婚を理由に夫に離縁を切り出すが…。

趙沖（ちょうちゅう）と李記（りき）を捕らえ帰路につく沈甄（しんしん）と陸時硯（りくしげん）の間には気まずい空気が流れていた。意識が朦朧（もうろう）とする中で口づけをしてしまったことを弁解し、本当の想いを沈甄に伝えたい陸時硯だったが、話の途中で刺客が現れる。激闘の中、刺客が振り上げた刃から身を挺して自分を守ってくれた沈甄に再び想いを伝えようとする陸時硯。しかし、口下手ゆえにうまく伝えられず、2人の間にはさらに溝ができる結果に。そうこうするうちに一行は都に到着し…。

仲睦（むつ）まじかった姉夫婦でさえ、義兄の裏切りによっていとも容易（たやす）く関係が破綻してしまった。愛の儚さを知った沈甄は、恋に臆病になっていた。沈甄の胸の内を知った陸時硯は、改めて想いを伝えるが、酒に酔った沈甄は眠ってしまう。陸時硯は自分の誠意を沈甄に伝えるために、失敗の許されない完璧な作戦を立てることに。一方、銭を調達しなければならない李棣（りてい）は、沈姌（しんぜん）の棚を漁り始め、隠されていた筆の中から自分の文鎮の拓本を見つけ…。

李棣は周述安（しゅうしゅつあん）のもとに行き、李（り）家の揉めごとを家法で裁いていいか尋ねる。李棣のただならぬ様子に不信感を抱いた周述安は百香（はくきょう）閣へ向かうが、そこは既に売りに出されたあとだった。焦った周述安が李（り）府に乗り込むと、李棣は沈姌と引き換えに裏帳簿を渡すよう要求する。周述安は李府の捜索を陸時硯に任せると、沈姌を助けに向かった。陸時硯たちが李府を捜索すると蘭児（らんじ）の亡骸（なきがら）が見つかる。一方、沈甄のいる廷尉府（ていいふ）では思わぬ事態が生じていた。

趙沖殺害の捜査が難航している陸時硯は犯行現場を再び捜査することに。見落としていた不自然な点に気がつくと捜査は一気に進展し、下手人を捕らえることに成功。下手人は首謀者の名を語ることなく自害するが、沈甄の無実を証明するには十分だった。一方、沈姌を連れ帰った周述安は傷を負っていた。助けてくれた恩義にどう報いればと言う沈姌に、周述安は過去に沈姌に助けられたこと、そして長年募らせてきた自身の想いを告げる。

沈文祁（しんぶんき）が無事に釈放され、沈（しん）家の父娘と陸時硯たちが祝宴を開いていると蘇珩（そこう）が現れた。沈甄との婚姻を望む蘇珩が暴走しないよう、陸時硯は大量の酒を勧めて泥酔させるが皮肉にも酒の力に後押しされて蘇珩は沈甄に求婚する。沈甄はわさびを口にし、涙を流して陸時硯を失神させその場をごまかすが、なおも婚姻を迫る蘇珩に｢自分にとって兄のような存在のあなたには男女の情を持てない｣と拒む。そして陸時硯からの求婚を受け入れるのだった。

徐意清（じょいせい）は長公主への贈り物を買うため百香閣に入る。そこでは盗（ぬす）っ人に銭を奪われた沈甄が助けを求めていた。徐意清に追い詰められた盗っ人が、ちょうど店に入ってきた蘇珩に銭を渡して逃げたため、徐意清は彼を仲間だと勘違いする。徐意清が蘇珩と戦っていると、陸時硯さらには扶曼（ふばん）が店に入ってきた。沈甄と陸時硯は、扶曼との思いがけない再会を喜ぶ。扶曼から都に来た経緯を聞いた陸時硯は、許威（きょい）が生きているのではないかと疑い始める。

陸時硯に追われ鎮（ちん）国公府に逃げ込んだ許威は、沈甄を人質にする。訳の分からない条件を突きつける許威だが、不利な形勢に陥るとその場から逃げ出し、長公主や役人の前で自害する。許威が最期に放った言葉により城西渠（じょうさいきょ）の事案の首謀者は長公主だとされ、御史台（ぎょしだい）に連行されてしまう。それを陰から見ていた陸時硯は、自身も関与を疑われ連行されることを警戒して姿を消した。沈甄は、怪我を負いながら逃走する陸時硯を心配し信じ続けるが…。

長公主を貶めた裏切り者は鎮国公府に長年仕える趙（ちょう）家職だと見破った陸時硯は、確証を得るための罠（わな）を仕掛ける。沈甄は、御史台を訪れる楊宗（ようそう）を待ち伏せし、周述安との面会に同席する。周述安とのやりとりを楊宗に聞かせることで逃走中の陸時硯に情報を伝えるためだ。一方、蘇珩は徐意清の提案で、鎮国公府に武器を運び込んだ者を特定するため沈甄に姿絵を依頼する。蘇珩の記憶を頼りに描くと、できあがった姿絵は趙沖の手下の龐虎（ほうこ）だった。

陸時硯は趙家職を捕らえ、長公主の印章を偽造して鉄鉱を買ったことを白状させる。趙家職は御史台に送られ、尋問されることになった。ある日、沈甄は荘玥（そうげつ）の店に招かれる。荘玥から火加減を見るよう頼まれて厨房（ちゅうぼう）に向かうと、そこにいたのは陸時硯だった。2人は束の間の再会を喜び合う。長公主の事案に関する真相を知った蘇珩は、徐意清に仲立ちしてもらい、陸時硯に謝罪する。和解した2人に何者かが襲いかかろうとして…。

龐虎の一味に狙われた周述安をかばった沈姌は意識不明に陥る。一層、龐虎を捕らえることを決意した周述安と陸時硯らは、数日後に執り行われる祈祷の礼で敵が動くことを予想する。祭礼では葛（かつ）道士と皇太子が祈祷を行うが、突然飛来した鳥の大群に皇太子が襲われる事態に。さらに、ある人物が元凶だと言い出した葛道士がその者の干支の八字を発表したところ、それは沈甄を指し示していた。噂（うわさ）は瞬く間に広がり、沈甄は中傷を受ける。

周述安は皇帝に、長公主が謀反を企てた証拠が集まったと伝える。そばで聞いていた皇后は、長公主に寛大な処分を下すよう皇帝に頼む。続けて皇后は皇帝に、祈祷の礼には皇太子だけでなく六皇子も参加させるよう提案。一方、徐意清は皇宮に忍び込み、葛道士の部屋で事案解決の鍵となる証拠を見つけ出す。運悪く逃げる途中で瓦に足を取られるが、そこに現れたのは冀北（きほく）から戻った蘇珩だった。2人は陸時硯のもとへ行き、今後の計画を話し合う。

一連の事件が解決すると、沈甄の家族や友人にはさまざまな好事が訪れる。その一方で沈甄は長公主と共に意識不明の陸時硯の看病を続ける。夢の中を彷徨っていた陸時硯は無事に目を覚ますが、沈甄の記憶のみ失っており、沈甄が涙を流しても胸が痛むことはなかった。2人がこれまで乗り越えてきた事件を再現するなど、あらゆる手段で陸時硯の沈甄に関する記憶を呼び戻そうとするも、思い出す気配はない。それどころか陸時硯は沈甄を拒絶し…。。