あらすじ
シルクロード貿易が盛んな唐代末期。絹織物産業で栄える地方都市・銀(ぎん)城は、万華楼〈ばんかろう〉を境に上流階級の住む北城と、庶民が住む南城に分かれていた。南城の覇権を争うのは、竜竹幇(りゅうちくほう)と蛇幇(じゃほう)の二大組織。あくどいやり方の蛇幇に対し、庶民の味方である竜竹幇の女幇主・竜傲一(りゅうごういつ)は街中から頼られる存在だった。ある日、北城最大の絹織物商家・新絲路(しんしろ)から貴重な金糸が盗まれる。当主の李清流(りせいりゅう)に犯人だと疑われた竜傲一は、濡れ衣を晴らすため新絲路で働くことに。身分も性格も違う2人は反発しながらも惹かれ合っていくが、彼らを待ち受けていたのは宮廷に関わる危険な陰謀だった。しかも、李清流は自分が皇子だという出生の秘密を知り…!
第1話
シルクロード貿易が盛んな唐代末期。絹織物産業で栄える銀(ぎん)城は、上流階級の住む北城と庶民が住むにぎやかな南城に分かれていた。とある日、その境目にある万華楼(ばんかろう)で、2つの会合が開かれていた。李清流(りせいりゅう)が率いる都でも大人気の絹織物商店・新絲路(しんしろ)による新作発表会と、南城の覇権を争う二大組織・竜竹幇(りゅうちくほう)と蛇幇(じゃほう)による商売の権利をめぐる会合だ。竜竹幇の新しい女幇主・竜傲一(りゅうごういつ)は、持ち前の度胸と知恵で蛇幇から権利を勝ち取るが…。
第2話 盗まれた金糸
賭けに負け、繭の取引権を竜竹幇に奪われた蛇幇は、承服できずに奪還の機会を狙っていた。賭けの様子を見ていて興味を持った第六皇子の李昭(りしょう)は、配下に調べさせ、竜傲一が五雲(ごうん)閣という妓楼に住んでいることを知る。その頃、新絲路には刺繍に使う金糸が届くが、箱を開けてみると中は空で、盗まれていた。盗人の物と思われる服の切れ端から、竜傲一の住む五雲閣に手がかりがありそうだと知り、乗り込んでいく李清流だったが…。
第3話 二人一緒に
競りで竜傲一に勝ち、金糸を1万両の高値で買い戻せたと思っていた李清流だが、箱の中にあったのは別物だった。李清流は金糸を盗んだのは竜傲一だと疑い、彼女を捕らえた拍子に、その場にいた李昭を負傷させてしまう。そのことで2人とも牢獄に入れられ、翌朝まで同房で過ごすことになる。投獄の知らせを聞いた炎彬(えんひん)と小芹(しょうきん)は差し入れを持って面会に訪れるが、竜傲一は小芹から、町で竜竹幇の悪口が広まっていることを聞かされる。
第4話 馬子にも衣装
李昭を負傷させた罪で投獄された竜傲一と李清流だったが、銀城の町では、金糸を盗んだのは竜竹幇の仕業だという噂が広まっていた。金糸が無くなったせいで新絲路の職工は仕事を失い、その恨みから竜竹幇の縄張りの店に難癖をつける騒ぎまで起きていた。そんな中、七眼(しちがん)の指示で牢獄に入り込んだ蛇幇の構成員が、竜傲一の暗殺を試みる。しかし、李清流がそれを阻止。誤解が解けて2人が釈放された頃、李昭が新絲路にやってきて…。
第5話 住み込み始めます
杜長風(とちょうふう)の屋敷で開かれた宴席にて、李昭や業界の会頭たちの前で舞を強要された竜傲一は、見事に踊りきり、褒美の財宝を持ち帰って竜竹幇の仲間たちと分け合っていた。だが竜傲一の元には仲間から「金糸が無くなった前日に、新絲路の裏口で大春(だいしゅん)を見かけた」などの不利な情報がもたらされる。竜竹幇への疑いを晴らすため、竜傲一は新絲路に住み込みで働きながら、犯人捜しをすることになる。一方、李昭は銀城での税務調査を続けていた。
第6話 深夜の捜査
新絲路に住み込み、金糸泥棒について調べていた竜傲一は、倉庫内に手がかりを見つけ、夜中に李清流と2人で調べに入る。金糸に関する機密を断片で握っている新絲路の主管たちが、裏でつながり、犯行に及んだかもしれないと竜傲一は疑っていたのだ。一方、身分を隠して税務調査をしていた李昭は、賭けを通じて近づいた白小山(はくしょうざん)をいよいよ追い詰めるが…。そんな中、李清流は嫌がらせにより原材料を入手できなくなったことに頭を抱えていた。
第7話 知恵と度胸
騎射大会で接待してもなびかない江南の商人・沈一貫(しんいっかん)だったが、李清流と賭けで交流することに。賭けに加わった竜傲一の助けにより、沈一貫は取り引きに応じ、新絲路は無事に原材料を入手できることになった。職工と次第に親しくなった竜傲一は、新絲路の内部に高利率の銭荘(せんそう)があると知り、竜竹幇の全財産を預けることにする。金糸泥棒を追っていた竜傲一と李清流は、新絲路の会計係の主管が南城にある闇の銭荘に出入りしていることを知り…。
第8話 金糸衣の完成
金糸を取り戻した新絲路は、衣を完成させるべく生産を再開。金糸泥棒の疑いをかけられていた大春の汚名をそそげたうえに、新絲路に預けていた竜竹幇の全財産も利息がついているはずだと喜ぶ竜傲一。労をねぎらうため、李清流は竜傲一を含め全員を湯あみに連れていく。楽しい時間を過ごすが、その間に新絲路は帳場が封鎖され、銀子を動かせなくなっていた。新絲路が難局を切り抜けたことを知った李昭と杜長風が、税務官を差し向けたのだった。
第9話 新たな挑戦
新絲路に住み込むことを条件に、竜竹幇が生糸を卸すという約束を取り付けた竜傲一は、苦手なそろばんをはじき、仲間たちに稼がせることを懸命に考えていた。帳場を封鎖され、資金を動かせない李清流は、元手をかけずに作れそうな女物の肌着を作るよう職人に命じる。竜傲一や李昭も加わって新たな肌着を考案し、試しに街で売ってみるが、それが波紋を呼ぶ。炎彬は講談本を贈ることで小芹との距離を縮めるが、李清流の方は素直になれず…。
第10話 意外な才能
竜傲一が作った肌着は、街で評判になったものの役人に見とがめられる。杜小仙(としょうせん)は怒り心頭だったが、竜傲一は「肌着は着心地が大切だ」と譲らなかった。100着の注文も入り、得意げな竜傲一に対し、李清流は着心地と実用性を兼ね備えた、新しい胸当てを作るよう命じる。試行錯誤の末にようやく完成させた竜傲一だが、保管していた倉庫から火の手が上がり…。一方、杜小仙は李昭に、自分は父親の手駒であるという寂しい胸の内を吐露する。
第11話 まめな男 不器用な男
倉庫の火事で竜傲一はやけどを負ったが、命がけで商品を火事から守ったことで職人たちの人気者に。火の中から竜傲一を助け出したものの、手当てする役を李昭に取られ、商品を守ってくれた感謝を素直に伝えられない李清流。食事の席で優しさを見せようとしたり、贈り物をしたりするが、うまくいかない。竜傲一もその気持ちに気付けるはずもなく、李清流の行動を訝しがるばかり。いよいよ肌着の発売日を迎えるが、新絲路の前で蛇幇が暴れだし…。
第12話 浮き浮き枕
デザイン部門である意匠堂の堂主になった竜傲一は、早速新しい商品の浮き枕を考案し始める。李清流とともに試行錯誤する中、竜傲一は李清流を連れて、なじみの南城の屋台に出かける。竜傲一に勧められ、こわごわ肉を食べ始める李清流だが、自分とは縁遠かった彼女が生まれ育った環境に親しみを感じ始める。その時、屋台の店主が不眠に悩んでいると知った竜傲一は、また新たな商売を思いつく。杜小仙は李清流と竜傲一の仲に嫉妬心を募らせ…。
第13話 すれ違う二人
李昭(りしょう)の手助けもあり、竜竹幇(りゅうちくほう)で作った安価な枕は完売し、予約まで入る人気ぶりだった。儲かった銀子で、新絲路(しんしろ)の職人にもごちそうする竜傲一(りゅうごういつ)だったが、李清流(りせいりゅう)が来て「模倣品を作った」と責め立て、怒った竜傲一は新絲路から出ていく。廉価版の枕を作った意図を李清流に理解されず、師匠である鳳(ほう)おかみと、やけ酒を飲んでいた竜傲一は、「七眼(しちがん)が現れた」の報に、夜半、呂乗雲(りょじょううん)とともに七眼を追うが、廃屋へ導かれ、そこで目にしたのは…。
第14話 幇主の行方
七眼が配下の行商人を刺殺した現場に居合わせた竜傲一は、殺しの嫌疑をかけられ、捕らえられそうになるが、ケガをしつつも、廃寺へと逃げ込んでいた。町のあちこちにお触書が貼られ、竜傲一を捕らえた者には懸賞金が出されることになっていた。李清流は竜傲一の行方を捜す中で、行商人殺しは竜傲一ではないと確信する。一方、七眼は、指示通りに行商人を殺したのに、役人が約束を守ってくれないことに怒り、行動を起こそうとしていた…。
第15話
竜傲一を人質にして李清流を呼び出した七眼は、通関証を奪ったうえ、2人を窯の中に閉じ込めていた。2人を捜す鳳おかみや炎彬(えんひん)たちは、見つけた手がかりから窯場がある辺りではないかと推測し、急ぎ救出に向かう。それより一歩早く、窯では火が焚かれ、李清流は身を挺して竜傲一を守っていた。一方、通関証を手に入れた七眼は、繭を売りさばくべく、郊外へと向かっていた。安値ではあったが、胡人(こじん)が買ってくれることになっていた。
第16話 七夕の夜に
李清流の心が竜傲一に傾くのを心配する杜小仙(としょうせん)に、侍女の月児(げつじ)は、「竜傲一の真似をし、皆の心をつかむほうがいい」と助言していた。杜小仙は職人たちに優しくなり、李清流との距離を縮めようと七夕の夜に遊覧船を借り切る手配もしていた。郊外の寺から戻った李昭は、竜傲一に会うため、五雲(ごうん)閣に足しげく通っていた。七夕の夜、李清流、竜傲一、李昭、杜小仙の4人で千灯会(せんとうえ)へ行くことになったが、竜傲一がそこで開かれる歌会に出ることになり…。
第17話
七夕の夜、千灯会の歌会で下手な詩を披露し、李清流から馬鹿にされたと感じた竜傲一は、教養を高めるべく、竜竹幇の仲間に読書を命じ、内容を報告させていたが、町で今、1番人気がある話は、窯場にいた陶芸職人が作った李清流と竜傲一の噂話だった。一方、李清流は、長安から戻った節度使(せつどし)の杜長風(とちょうふう)から東女(とうじょ)国への贈り物として、夫婦の情交図である「女児図(じょじず)」を作るよう命じられるが、竜傲一の協力なしでは進められないという苦境に陥っていた。
第18話 幼なじみ
女児図を作るにあたり李清流と竜傲一で新しい商店、青竜号(せいりゅうごう)を設立することになったが、期待していた告白がなかったことで、竜傲一の心は荒れていた。青竜号が成立した祝いの席に杜小仙が現れ、抑えきれない胸の内を吐露し、涙を流して去る。そんな杜小仙を李清流が追いかけるも、杜小仙は昔のような関係には戻れないのだと嘆き悲しむ。その夜、李昭に招かれた杜小仙は、互いの境遇を思いやり、酒で憂さを晴らす。その事を耳にした李清流は…。
第19話 密書の存在
李昭の助けと竜傲一の奔走により、生糸は手に入り、女児図は無事に仕上がった。打ち上げの席で、李清流は竜傲一に熱いまなざしを向けるも、想いを打ち明けられず、青竜号の事業継続を提案。そんな李清流の態度に竜傲一は解散を宣言するが…。酔った李清流を介抱していた呂乗雲は、怪しい動きを見せる。一方、杜小仙は父親から、先に長安へ行くように命じられ、李清流へ文を送る。その頃、杜長風は自分を訴える密書が長安に届いたことを知る。
第20話 新たなる商売
東女国への贈り物を届けるために銀(ぎん)城を出発していた李清流、竜傲一たちは、途中、飢きんによる避難民に会い、朝廷が必要とする食糧等を水運によって輸送する「漕運(そううん)」という事業を見いだし、協働する相手を求めて、長江(ちょうこう)上流に本拠地を置く漕幇(そうほう)の翁大有(おうだいゆう)に会いに行く。そして、炎彬と小芹(しょうきん)を銀城での準備のために帰らせた李清流と竜傲一は異民族の集落、哲羅(ジュラ)集落にたどり着く。一方、銀城では、杜長風が商家たちに重い徴税を課していた。
第21話 共鳴する二人
女が主導権を握る異民族の習俗に戸惑い、夜ばいをかけられた李清流は、竜傲一の部屋に逃げ込んでいた。翌朝、役所から渡された箱の中身を疑った李清流と竜傲一は、首領の娘である玉烏阿吉(ユウアジ)らの案内で関所を通らず東女国へ向かう。一方、都では李昭が母の徳(とく)妃に命じられた宴への出席を拒否し、叱りに来た徳妃に、それまで抑え込んでいた苦悩や不満をぶつける。その頃、銀城にいた杜長風は、李清流と竜傲一を捕らえるべく、国境へ向かっていた。
第22話 宮中からの使い
東女国へと向かっていた李清流と竜傲一は、国境付近で杜長風ら官兵に捕まり、銀城に連れ戻され、重罪に問われていた。そこへ、2人を救出すべく、竜竹幇の呂乗雲、さらに、元(げん)宰相が現れ、驚くべき李清流の出生の秘密を明かす。無事に銀城へ帰ってきた竜傲一だったが、離れ離れになった李清流を想いながら酒に身を任せていた。その頃、賑やかな五雲(ごうん)閣から出た鳳おかみは、ある墓の前にいた。そんな鳳おかみの様子を見張っている者たちが…。
第23話 長安へ
長安行きが決まった李清流は、竜傲一に気持ちを伝えようと、新絲路で会う約束をしていたが、時間になっても竜傲一は現れない。親代わりだった五雲閣の鳳おかみを直前に殺されては、来られるはずもなかった。李清流は竜傲一へ、炎彬は小芹へ、それぞれ想いを文にしたため、長安へと出発していった。再び銀城を訪れていた李昭も、鳳おかみの死を知るが、慰めたい相手である竜傲一には会えず、長安へ戻る。竜傲一は小芹とともに姿を消していたのだ…。
第24話 師匠の形見
宮中では、朝議の場で李清流は皇帝から、皇子であることが宣言され、均(きん)王に封じられた。そして、朝廷での役職のみならず、縁談についても話し合われ…。一方、長安の旅館で刺客に襲われた竜傲一と小芹は、金吾衛(きんごえい)の将軍職に戻っている呂副幇主から、鳳おかみの形見である白錦鯉(はくきんり)の玉佩(ぎょくはい)について、「卜語(ぼくご)閣なら、何か分かるかもしれない」と聞き、早速訪れ、謎めいた女主人と勝負の賭けをする。その帰り道、竜傲一は再び刺客に襲われる。
第25話
卜語(ぼくご)閣を出たあとに襲われた竜傲一(りゅうごういつ)は、命の危険もあったが、李昭(りしょう)に助けられ、昭(しょう)王府で療養していた。竜傲一を捜していた小芹(しょうきん)や李清流(りせいりゅう)は、杜小仙(としょうせん)の言葉を頼りに昭王府へ行くが、「いない」と追い返されてしまう。しかし李昭は改めて小芹を呼び、また竜竹幇(りゅうちくほう)の仲間を銀(ぎん)城から呼び寄せ、何かと手を差し伸べていた。一方、李清流は祖母である太妃(たいひ)と対面し、そこで姉である昇平公主(しょうへいこうしゅ)にも会い、生母について教えてほしいと頼むが…。
第26話 清風の宴
銀城から出てきた痩猴(そうこう)、黒胖(こくはん)、そして漕幇(そうほう)の堂主(どうしゅ)は、李昭に見つけてもらっていた場所で清滝号(せいりゅうごう)の店を構え、漕運(そううん)の輸送路の試験運行もしていた。昭王府で療養していた竜傲一も、顔を合わせた徳(とく)妃から嫌味を言われ、清滝号へと住まいを移す。そして清滝号の正式開業の日、五雲(ごうん)閣の芸妓だった湘月(しょうげつ)が現れ、大臣の屋敷の宴席に踊り子として出向くと言う。鳳(ほう)おかみが遺した白錦鯉(はくきんり)の秘密を探れると考えた竜傲一は、踊り子に扮し宴に潜り込む。
第27話 ご懐妊
元(げん)宰相が開いた宴で、杜小仙が用意した媚薬入りの酒を飲んだ李清流と竜傲一。旅館で一夜を過ごし、婚姻の手続きを踏まずに情事に及んだとして、李清流は朝議の場で責められていた。心穏やかでない杜小仙は、再び想いを伝えるが、李清流の返事はつれない。李昭も竜傲一を想い、暴飲暴食を繰り返していた。当の竜傲一は、長安の商人を接待し飲みすぎていた。胃もたれを起こし、吐き気を催した竜傲一は、宮中に入るための奇策を思いつく。
第28話 退屈な後宮
皇帝に妊娠を認められ、竜傲一は均(きん)王府で養生していた。李清流は妊婦向けの薬の用意をするなど何かと世話を焼いていたが、竜傲一には退屈でたまらない。均王の妻として宮中への出入りも認められたが、礼儀作法を学ぶのは退屈で、妃や女官たちに意地悪もされる。しかし、白錦鯉の謎を探るという目的のため、めげずに後宮で徐々に味方を作っていくのだった。その頃、李昭は竜傲一を取られたことで心が荒れ、深酒を繰り返していた。
第29話 届かない米
竜傲一が銀城から豚もも肉を取り寄せていたことで、李清流は飢える民を救うために独自の経路がある漕運業者に頼れないかと朝議で提案する。宰相である元載(げんさい)の賛同も得られ、無事に米が長安に届いて李清流は皇帝に褒められる。しかし、庶民の元に届いてないと知った李清流は朝議で訴えるが…。一方、竜傲一は、宮中で徐々に味方を作っていたが、杜小仙の取り巻きたちからの嫌がらせや長安に届いた米が庶民の口に入らないことに苛立っていた。
第30話 籠の鳥
竜傲一は、宮中で築いた人脈を頼りに、皇帝付きの宦官(かんがん)から、古い官用水路の図を入手していた。これで李清流を手助けできると思ったが、李清流と杜小仙の親密な姿を見てしまったことに耐えられず、妓楼(ぎろう)で飲んでいた。偶然、妓楼で会い、一緒に飲んだ李昭は、竜傲一の心に自分がいないことを改めて突きつけられ傷心するが、妊婦が深酒していたことから竜傲一の妊娠に疑問を抱く。そして同志である杜小仙を使い、暴くことを試みるが…。
第31話
妊娠の嘘を李清流に知られ、竜傲一は均王府を出て行った。小芹や清滝号の仲間が捜すが見つからない。雷雨の夜、行き場を失い均王府の門前で雨宿りをしていた竜傲一を見つけた李清流は、もう二度と離さないと誓う。秋の狩りの時期が近づき、今年は南苑(なんえん)にある狩場で、皇太子、李清流、李昭が競う形で行われることになった。その狩場には、射止めた者に吉をもたらす白鹿がいるという噂があり、狩りの成功を祈る小宴を開いた徳妃は…。
第32話 陵墓崩落
宮中の一角に宦官や女官が気楽に集える場を作ろうとした竜傲一は、徳妃の腹心に意地悪をされたものの、太妃に救われ、印章も貸し与えられていた。その印章で崇文(すうぶん)館に潜入した竜傲一は、亡くなった独孤(どっこ)皇后とその娘、華陽公主(かようこうしゅ)の遺体に赤黒い痣があったという記述を見つける。青竜(せいりゅう)寺で見かけた僧侶の体にも同様の痣があり、李清流は生母の目尻にも痣があったという、ばあやの証言を思い出す。手がかりを求め、青竜寺に向かう李清流だったが…。
第33話 母の死
徳妃が画仙紙に毒を染み込ませて亡き独孤皇后や華陽公主を殺し、皇太子にも同じ手を使っていたことを突き止めた李清流は、朝議で告発する準備をしていた。ところが李昭が先に歩み出て、口を開いた。息子が母親を告発したことに周囲は驚き、皇帝は朝議の場に徳妃を呼ぶ。そして元宰相の助言で、皇帝は徹底した調査と李昭を庶子に落とすことを告げる。意外な展開に驚いた竜傲一は、傷心の李昭を元気づけに行くが、怒りの目を向けられ…。
第34話
懐妊が嘘だと暴かれた竜傲一は、牢獄で拷問を受けていたが、李清流の必死の訴えにより、皇帝が自ら裁くことになった。皇帝を欺いたのは大罪であり、斬首を言い渡されるが、その場にいた太妃の取りなしにより、身分剥奪と宮中からの追放に減刑された。李清流は竜傲一に離縁状を渡し、清滝号は封鎖され、竜傲一は姿を消した。均王府には、3日後に杜小仙との婚儀を執り行うよう聖旨(せいし)が届く。幼い頃からの夢が叶う杜小仙だったが…。
第35話 奈落の底へ
李清流と杜小仙の婚儀の日。禁を破って均王府に入り込み、かつて自分が暮らした部屋で感慨にふけっていた竜傲一の前に現れた元宰相は、竜傲一の師匠だった鳳おかみとの過去、そして朝廷でのし上がってきた自分の生きざまについて粛々と語り始めるのだった。その頃、均王府の広間では、李清流と杜小仙の婚礼が着々と進んでいた。李清流から手渡された茶を皇太子が口に運ぼうとしていた時、突如、竜傲一の「助けて」という声が響き…。
第36話(最終話) 均王の運命
杜小仙と縁を切るために毒入り茶を飲んだ李清流は、体の自由が利かないまま山の中に連れてこられ、助けに来た竜傲一と一緒に毒虫のいる穴へ突き落とされていた。悪事の後始末を元宰相が終えた頃、呂乗雲(りょじょううん)が金吾衛(きんごえい)を率いて炎彬(えんひん)や小芹とともに李清流たちを捜しに来たが、元宰相は、李昭が李清流たちと刺し違えたという筋書きを用意して臨む。穴の中では、解毒剤が本物かどうか分からぬまま、生きられるほうに賭けた李清流が薬を飲み…。