アン・ジェウク
1971年9月12日生まれ。94年MBC公開採用タレントとしてデビュー。97年「星に願いを」で大ブレイクし、日本はもちろんアジア各国で絶大な人気を得る。出演作は「ひまわり」(98)「グッバイ・マイ・ラブ」(99)「母よ姉よ~Twins~」(00)「オー!必勝」(04)「光と影」(12)など。
ソ・ユジン
1981年8月11日生まれ。00年「トギ」で女優デビューと同時に注目を集め、01年「おいしいプロポーズ」で一躍人気女優に。出演作は「ライバル」(02)「ソウル1945」(06)「愛をたずねて三千里」(07)「黄金の魚」(10)「ハッピーエンディング」(12)「キレイな男」(13)など。
シム・ヒョンタク
1977年12月4日生まれ。98年モデルとしてデビュー後、俳優活動を開始。出演作は「いとしのソヨン」(12)「黒の旋律」(13)「私たち、恋してる」「白夜姫」(14)「離婚弁護士は恋愛中」「恋は七転び八起き」(15)など。
シム・イヨン
1980年1月31日生まれ。00年、映画『リアル・フィクション』でデビュー。出演作は「メリは外泊中」(10)「棚ぼたのあなた」(12)「百年の遺産-ククスがむすぶ愛-」「怪しい家政婦」(13)「美女の誕生」(14)など。
ソンフン
1983年2月14日生まれ。11年「芙蓉閣の女たち~新妓生伝」でデビュー。出演作は「シンイ-信義-」「太陽のあなた」(12)「熱愛」(13)「高潔な君」「オー・マイ・ビーナス(原題)」(15)など。本作で大ブレイクを果たす。
シン・ヘソン
1989年8月31日生まれ。13年「ゆれながら咲く花」でデビュー。出演作は「ナイショの恋していいですか!?」(14)「ああ、私の幽霊さま」「彼女はキレイだった」『華麗なるリベンジ』(15)など。本作で一躍注目の的に。
イム・スヒャン
1990年4月19日生まれ。09年、映画『40minutes』でデビュー。11年「芙蓉閣の女たち~新妓生伝」で初主演を飾る。出演作は「IRIS2-アイリス2-:ラスト・ジェネレーション」(13)「感激時代~闘神の誕生」(14)など。
アン・ウヨン
1991年生まれ。14年広告モデルとして芸能界に入り、15年「風船ガム」で本格的に俳優活動を開始。本作で注目を集め、人気急上昇中の新人俳優。最新作はコン・ヒョジン主演の「嫉妬の化身(原題)」。
KBSで土曜と日曜の夜に放送される“週末ドラマ”といえば、ホームドラマの定番枠。全50話以上の長編でありながらも刺激的な要素は極力入れずに、家族がそろって見て楽しめるドラマを、公営放送としてプライドをかけて制作している。そして2016年の上半期、また新しい国民的ドラマが誕生した。子持ちシングルの男女が再婚するまでの紆余曲折をハートウォーミングに描いた「ドキドキ再婚ロマンス 子どもが5人!?」だ。
主演はドラマ「星に願いを」や「グッバイ・マイ・ラブ」などでアジアにおける韓流ブームの火付け役となったアン・ジェウクと、「おいしいプロポーズ」「ライバル」で愛されたソ・ユジン。2000年代前半に青春スターの代名詞だったふたりは、現在はどちらも結婚して、それぞれ1児のパパと2児のママとなり、本作で実感こもった父性・母性あふれる演技を見せている。
正直言うと、最初はタイトルから、再婚によって5人の子持ちになるカップルのドタバタ劇を想像していたが、それは見事にくつがえされた。このドラマで、アン・ジェウクが演じる衣料ブランドのチーム長サンテは、会社では仕事ができて信頼される上司であり、家に帰れば2人の子どもの良きパパ。5年前に死別した妻の家族と同居しているが、妻の家族との仲は円満で、祖父母が子供たちの育児のサポートもしてくれる。平穏な日々を送るサンテにとって、欠けているものといえば恋愛感情だけ。時おり、亡き妻を想ってはため息をつく。
そこにサンテの新しい部下として現れたのが、夫の浮気で離婚にいたった3児の子持ち女性。ソ・ユジン演じるミジョンだ。これまでの韓国ドラマにおけるシングルマザーのヒロインといえば、これといった取り柄はなく、人柄のみで男性の心をつかむシンデレラストーリーが多かったが、ミジョンはバリバリのキャリアウーマン。子どもに対して、しつけをきちんとする一方で、たっぷりと愛情を注いでいる。そんなミジョンの能力と人柄に目をかけるようになったサンテは、プライベートでも子を持つ親としての悩みを共有するようになり、次第に恋愛感情を抱くようになる。ミジョンもまた、公私にわたって気にかけてくれるサンテを頼もしいと思い、大人の恋愛は自然な形で進行してゆく。
アン・ジェウク本人が「いろんな役を今まで演じてきたけれど、あまりに優しすぎて、息苦しいくらい」というほど、誠実さのかたまりであるサンテ。それゆえにサンテとミジョンは、勢いで恋に落ちるのではなく、社会人としても親としても常識的な感覚を持ちつつ、再婚したら5人の子持ちになる現実を十分に考えたうえで、慎重に愛を育んでいくのだ。
離婚や再婚を経験している家庭も少なくない現代社会で、実際にも起こり得る問題を描いたことが、このドラマが共感を呼び、愛された大きな要因だ。サンテとミジョンの再婚に一番の障害となるのは、やはり家族の問題。が、それも、いたって常識的に、かつハートウォーミングに描かれる。サンテの再婚を望んでいるものの、相手が3人の子持ちだとわかると、心配から反対するサンテの両親。サンテが結婚すれば他人となってしまうことや、溺愛する孫とも別れて暮らさなくてはならないことを悲しむサンテの妻の両親。これまでのドラマならば、母親がハチマキを巻いて断食したり、髪の毛をつかんでのとっくみあいで結婚を阻もうとするところだが、そういったドタバタは一切出てこない。感情的な言葉を発したとしても、それはその人物の立場にしてみたら十分に理解できるもので、どの人物にも共感し、情がわいてくるのだ。
そして、もっとも考えさせられるのが子どもたちの問題だ。資産家の祖母のもとで育てられたサンテの子どもと、倹約と自立を植え付けられて育ったミジョンの子どもたちは、同級生で親友だったにも関わらず、一緒に生活するうちに、育った環境の違いから、少しずつトラブルを起こすようになる。その都度、サンテとミジョンは改めて再婚の難しさを悟るようになるが、2人で話し合いながら、子どもたちとコミュニケーションをとりながら、解決策や妥協点を見出していく。こうした光景は、再婚カップルでなくとも、子を持つ親ならば誰もが共感することだろう。
と、ここまでを読むと堅苦しいドラマだと思われてしまうが、ドラマの大ヒットの要因のもうひとつが、主人公カップルそっちのけで盛り上がる3組のカップルのラブストーリーだ。
1組目はサンテの妹ヨンテ(シン・ヘソン)と、サンテの会社がウェアを提供するプロゴルファーのサンミン(ソンフン)のストーリー。片想いの相手に7年間も告白できぬうちに失恋したヨンテが泣きじゃくる現場にたまたま遭遇したサンミンは、一途すぎるヨンテに恋をしてしまい、失恋の傷がいえないヨンテの心をつかむべく、あの手この手で押しまくる。ヨンテの言動ひとつひとつに上がったり下がったりするサンミンがなんともかわいらしく、母性本能をくすぐられずにはいられない。一方のヨンテも、もどかしいほどの堅物ぶりがキュートで、このカップルを見たさにドラマを見るという視聴者が急増した。と同時に、ソンフンとシン・ヘソンはこのドラマで一躍スターダムにのし上がった。
2組目は、サンミンの弟のテミン(アン・ウヨン)と、サンテの亡き妻の妹ジンジュ(イム・スヒャン)のストーリーだ。お嬢様で苦労しらずのジンジュは、序盤こそイライラするキャラクターなのだが、誠実な小学校教師であるテミンを本気で愛することで、あたりまえのように使っていたお金の価値を知り、自立をはかってゆく。そんなジンジュをますます愛しく思うテミンの温かい男ぶりも胸キュンもの。が、問題なのが、このテミンこそがヨンテの7年間の片思いの相手であり、サンミンの弟なのだ。ヨンテ×サンミン、ジンジュ×テミンカップルの交錯した恋のゆくえに、最後まで目が離せなくなる。
3組目は、売れない映画監督のサンテの兄ホテ(シム・ヒョンタク)と、元恋人スニョン(シム・イヨン)のストーリー。かつて恋人同士だったものの、ある理由から別れた2人が再会して…というもので、ホテに大人の分別と責任感が芽生える過程が温かい目線で描かれる。
このように主人公カップルの再婚を現実的に描きつつも、同時進行のサイドストーリーでは韓ドラ定番の萌え要素をふんだんに盛り込むことで、幅広い視聴者から愛された「ドキドキ再婚ロマンス 子どもが5人!?」。全86回の長編でも、まったく飽きることがなく、さらさらと見られることうけあいだ。(DVDは、韓国で放送された全54話を、全86回に再編集した日本編集版となります。)
余談であるが、私は、1997年に「星に願いを」を見てアン・ジェウクのファンになり、韓国語を学び、当時は外国人などほとんどいなかった彼のファンクラブに加入。ファンミーティングやキャンプなどに参加するなかで、韓国とその文化に濃密に触れ、自然と韓流ライターになった経緯がある。まさにアン・ジェウクがいたから、今の自分があると言っても過言ではなく、それゆえに、当時はトレンディドラマのスターだったアン・ジェウクが、結婚してパパになり、ドラマでもよきパパを演じるようになったこと。そして、このような愛される作品で深みのある素晴らしい演技を見せてくれていることをうれしく思いながら、このコラムを執筆した。家族みんなで楽しめるほっこりとしたホームドラマの決定版。ぜひ、多くの人に見ていただきたい!!
韓国エンターテインメントライター
安部裕子