あらすじ
空桑(くうそう)の世子(せいし)・時影(じえい)は、嘉蘭(からん)皇城を訪れた赤(せき)族の幼い郡主・朱顔(しゅがん)と出会うが、思いがけず秋水(しゅうすい)皇妃の怒りを買い、窮地に追い込まれる。皇妃殺しの罪を着せられた時影を救うため、母親である皇后・白嫣(はくえん)は九嶷(きゅうぎ)山の大司命(だいしめい)・時鈺(じぎょく)に助けを求める。大司命は法術を使って時影の死を装い彼を救い出すが、「成人するまでに世子の死を悼んだ者と出会えば、その者に殺される」と予言。同じ頃、朱顔は世子の死を悲しみ、彼のために祈りを捧げていた。数年後、九嶷山を訪れた朱顔は禁断の地に足を踏み入れ、そこで出会った神官に心を奪われる。それは成長した時影であり、彼もまた、朱顔が予言の娘であると知りながら次第に惹かれていく…。
第1話 雪寒薇が導く運命の出会い
赤(せき)族の郡主である朱顔(しゅがん)は、法術を学んで国を守りたいと思う活発なお嬢様。修行に反対する父親を納得させるため、空桑(くうそう)の世子(せいし)である時影(じえい)に贈り物をして、修行に賛成してもらおうとする。皇城で贈り物の雪寒薇(せつかんび)を摘もうとして足を滑らせた朱顔は、帝君の寵妃(ちょうひ)・秋水(しゅうすい)に無礼を働いてしまう。そこに現れた時影の巧みな弁舌のおかげで朱顔は罪を免れたが、時影は秋水の恨みを買ってしまった。その夜、宮女に呼ばれた時影が秋水のもとに足を運ぶと…。
第2話 運命の再会
時影は成人して母親を迎えに行く日を夢見つつ、九嶷(きゅうぎ)山にて法術の修練を続けていた。ただ一人の友人は、齢(よわい)1万年に及び、人の姿になることもできる神鳥・重明(ちょうめい)。やがて10年に一度の祭祀(さいし)「望星大典(ぼうせいたいてん)」を行うため、空桑の王たちが九嶷山に集まって来る。その一行に、死者を蘇らせる法術を探し求める朱顔の姿があった。朱顔は親友・白雪鶯(はくせつおう)が落とした舞衣(まいぎぬ)を拾いに、帝王(ていおう)谷へと足を踏み入れる。そこは歴代の帝(みかど)と后(きさき)が眠る陵墓がある禁断の聖域だった。
第3話 動き始める運命の歯車
帝王谷で白雪鶯の舞衣を見つけた朱顔は、そこで時影と再会するが、彼の正体には気づかない。その時、2人は突然氷(ひょう)族の襲撃に遭う。時影が見事撃退するも、争いのさなかに白雪鶯の舞衣は燃えてしまう。氷族の目的は帝王谷にあるという伝説の秘宝・后土(こうど)の指輪だった。朱顔は幼い頃に会った世子と目の前の神官が似ていることに気づきそうになるが、自分の生存を人に知られてはならない時影は、法術で朱顔の一晩の記憶を消して帰らせるのだった。
第4話 災いの娘
母・白嫣(はくえん)の自害と六部の王たちの態度に怒り狂った時影は、逆上し魔道に落ちそうになる。朱顔は彼を正気に戻そうとして重傷を負い、我に返った時影は、朱顔に自分の霊力を与える。その時、朱顔の額に琉璃(るり)花の紋章が浮かび上がる。それは、大司命(だいしめい)がかつて予言した、時影の命取りとなる災いの娘の印だった。朱顔を殺すことを主張する重明だったが、時影はそれを拒み、朱顔は帝王谷に来たこと、時影に会ったことを決して他言しないと誓う。
第5話 もう1つの出会い
時影の復讐心が消えていることに失望した大司命は、望星大典の記録官を務めるよう時影に命じる。大典には時影の弟である時雨(じう)が帝君の名代(みょうだい)として出席する。大司命は時影に、己の地位を奪われたことを自覚してほしかったのだ。その時雨は川のほとりで演説の練習をしていたが、通りがかった白雪鶯と出会い意気投合する。翌日の祭祀で、時雨が第二皇子と知って驚く白雪鶯。望星使(ぼうせいし)に選ばれた白雪鶯は、重明の羽で作った舞衣を身につけて踊るが…。
第6話 命懸けの切なる願い
妹の白雪鶯が時雨と相思相愛の仲であることを知った白雪鷺(はくせつろ)は、時雨が白雪鶯に贈った木彫りの鳥を人前にさらして、時雨を窮地に追い込もうとする。一方、時影の命を守るために何としても朱顔を亡き者にしたい重明は、星尊(せいそん)帝の陵墓にある七星(しちせい)灯を入手するよう偽の指示を朱顔に伝える。時影から法術を学びたい一心で陵墓に向かった朱顔だが、幻覚に襲われて絶体絶命の危機に。異変を感じた時影は陵墓に駆けつけ、命懸けの朱顔の姿を目にする。
第7話 大司命の策謀
大司命は18歳になった時影に少司命(しょうしめい)の地位を与え、人々の前に姿を現すことを求める。少司命としての最初の任務は、六部の子弟から男女を問わず弟子を募ることだった。一方、九嶷山での法術の修練の話を聞いても気が乗らない朱顔。自分を否定した人物がいる場所へは戻りたくないと思っていた朱顔だが、赤淵(せきえん)の勧めにより選抜試験に参加することに。九嶷山に集まった弟子候補者の中には、白雪鷺・白雪鶯姉妹や、青(せい)王の密命を受けた青罡(せいこう)将軍の姿もあった。
第8話 弟子選抜試験
白(はく)家の長女である白雪鷺を時影の后にしたい大司命は、彼女が選抜試験を有利に進められるよう取り計らう。さらに青罡が帯びている偵察の任務を見破り、事故に見せかけて脱落させようとする。2人で組むことになった青罡と朱顔は、青罡へと差し向けられた獰猛な怪物・窮奇(きゅうき)に襲われる。朱顔は古書に学んだ窮奇の生態を思い出し、口八丁で追い払うが、窮奇につられてやって来た伝説の“混沌(こんとん)”までもが現れ、朱顔はその中に取り込まれてしまう。
第9話 玉骨を手に入れる者
混沌の中に2人きりで閉じ込められた朱顔と時影は、不思議な老婆に出会う。このまま混沌に残り、ずっと一緒に暮らすよう勧められて動揺する朱顔だが、時影は老婆の思惑を見抜き、混沌の出口を探し当てる。時影の機転で混沌から脱出した朱顔は、自分を怒らせた時影の真意に気づき、その無事を確かめるために千月(せんげつ)峰の山頂へと向かう。時影の法器・玉骨(ぎょっこつ)があるのを見て安心したのもつかの間、そこへやって来た白雪鷺との玉骨の奪い合いが始まる。
第10話 落ちこぼれ弟子
時影に批判された朱顔は、その評語を時影のたもとに落書きするが、それに気づいた時影は法術によって評語を朱顔の手の甲に転写する。その後、課堂での講義の内容についていけず居眠りをしてしまった朱顔は、時影から入門書を書き写すよう命じられる。朱顔が写経をしていると青罡がやって来て、「己の法力強化のために少司命の髪がほしい」と頼まれる。代わりに写経を手伝うと言う青罡だが…。一方、大司命は白雪鷺に青罡の監視を命じていた。
第11話 秘められた少司命の素性
青罡に頼まれた時影の髪の毛を手に入れるため、朱顔は弟子入りを認めてもらった礼として時影の髪を梳(す)き、彼の髪を手に入れる。しかしこれは、世継ぎとしての時雨の立場を守るために少司命の正体を確かめたい青(せい)族による陰謀だった。少司命が死んだはずの世子だと確信した青罡は、青(せい)妃の指示どおり、時影を暗殺しようと試みるが…。一方重明は、災いの娘である朱顔と時影が打ち解けていく様子を見ていられず、朱顔を追い払う手段を探していた。
第12話 雷鳴と揺れる心
弟子たちが編んで霊力を注いだ腕輪の中から時影が選んで腕につけたのは、劣等生の朱顔の作品だった。精神を統一し雑念を払ってくれるというこの腕輪だが、朱顔が時影に接近するとひそかに揺れ動き、九嶷山には雷鳴が響き渡った。一方、平静を保っていた青罡の腕輪は白雪鷺が近づくと揺れ始め、皆に冷やかされる。基礎の習得が遅れている朱顔に法術を特別に伝授した時影だが、喜んだ朱顔が抱きついたとたん、時影の体に思いがけない変化が起こる。
第13話 弟子選抜の決着
朱顔は試験に遅刻した憂さ晴らしで酔い潰れ、時影の部屋で目を覚ます。朱顔は酔った勢いで「一番弟子になる」と豪語したことを恐縮するが、朱顔に真の向学心を見いだした時影は、その心意気を激励する。酔ったうえでの失態の罰として庭の掃き掃除をしながら朱顔が風を操る呪文を独習していると、時影は風を感じ取る極意を朱顔に伝えるのだった。やがて一月(ひとつき)の修練期間が終わり、一番弟子を決める最後の試合は白雪鷺と朱顔の一騎打ちとなった。
第14話 あなたと見たい景色
白雪鷺との対決に勝利した朱顔は、時影の一番弟子として九嶷山に留(とど)まることに。しかし、九嶷山の近くに眠る龍神が目覚めようとしていることに気づいた赤淵は朱顔を心配し、龍神の目覚めに備えて、水中で生きられる鮫(こう)人の“鳧水(ふすい)術”を朱顔に教える。そして弟子入り初日を迎えた朱顔。時影の前で赤族が得意とする御火(ぎょか)術を披露するが、基本ができていないと否定され、ひたすら形を練習させられる。そんなある日、九嶷(きゅうぎ)郡の村で疫病が発生して…。
第15話 龍神の潜む淵
九嶷(きゅうぎ)郡の疫病は無事に収まったものの、時影(じえい)は急に発生した病気の原因に疑念を抱く。川の水を飲んだ村人たちが真っ先に発病したことを村長から聞き、東渓(とうけい)の上流まで調べに行った時影と朱顔(しゅがん)は、川の水面に謎の泡が出ている様子を目にする。大司命(だいしめい)は時影から奇妙な現象の報告を受け、東渓の水源が実は九嶷(きゅうぎ)山ではなく、蒼梧(そうご)の淵(ふち)にあることを口にする。かつて龍神が封じられた蒼梧の淵が関連していることで、大司命は世の大乱を予感する。
第16話 龍神の怒り
時影から法器を1つ選ぶよう言われ朱顔が選んだのは、幼い頃に時影が選んだ物と同じだった。気をよくした朱顔に、時影は石室に籠もり瞑想(めいそう)に入ることを告げる。瞑想中の時影をひそかに訪ねる朱顔。そこに青(せい)王が放った刺客が現れ、朱顔は時影を守るために戦うが、大司命の呪文が発動し刺客は倒される。これは大司命が敵を一掃するための罠(わな)だった。時影が真境(しんきょう)に達する機会を邪魔された大司命は朱顔を叱責する。その夜、赤淵(せきえん)の前に龍神が出現し…。
第17話 鮫族の秘宝 龍血古玉
朱顔は白雪鶯(はくせつおう)の筆跡を真似(まね)た白雪鷺(はくせつろ)の手紙にだまされ、美容に効く女蘿(じょら)の花を探しに女蘿渓へ。そこに現れた氷(ひょう)族の刺客に襲われるが、朱顔の危機を察知した時影が駆けつける。しかし時影も霊力が弱っていたため、追い詰められた2人は水中に逃げ込む。そこは星尊(せいそん)帝に封印された龍神が眠る蒼梧の淵だった。現れた龍神は時影から星尊帝と同じにおいを感じ取り、彼らを殺そうとする。その時、朱顔が赤淵からもらった鮫(こう)族の秘宝・龍血古玉(りゅうけつこぎょく)が輝きを放つ。
第18話 断ち切れない思い
師匠である少司命(しょうしめい)・時影の正体が死んだはずの世子(せいし)だったと知った朱顔。世子を生き返らせたい一心で時影を煩わせてきたことが、逆に苦しい過去を忘れたい時影の心を傷つけたと思い後悔を募らせる。時影もまた、残酷な言葉で朱顔の願いを断とうとしたことを謝罪し、孤独な人生で朱顔だけが慰めだったと打ち明ける。朱顔への恋心を自覚した時影は、俗念を断つために厳しい制裁を自ら望んで受け、少司命としての正しい道に戻ろうと葛藤する。
第19話 郡主のお見合い
時影を俗世の騒動から遠ざけるために、朱顔は迎えに来た両親と共に九嶷山を去ることに。どこにいても心は師匠と共にあると告げる朱顔に、時影はこれまでの修練への褒美として、白薇(はくび)皇后が残した古代の法器・玉骨(ぎょっこつ)を与える。それは歴代帝王が皇后に贈ってきた結納品でもあった。天極風(てんきょくふう)城に戻ると、赤(せき)王と王妃は朱顔に次々とお見合いをさせるが、相手は金持ちだが俗物ばかり。嫌になった朱顔は、赤淵こそが自分の意中の人だと宣言してしまう。
第20話 王族の婚姻と個々の想い
白雪鷺の聡明(そうめい)さを買っている青(せい)妃は、帝君に時雨(じう)と白雪鷺の婚姻を願い出る。青妃の独断専行をよしとしない帝君は、白雪鷺と白雪鶯を呼び寄せ、時雨にどちらの郡主を妻にするか今すぐ選べと命じる。一方、朱顔のもとにも縁談が舞い込む。青(せい)族の権力を盤石にしたい青妃が、青罡(せいこう)に朱顔との婚姻を命じたのだ。白雪鷺に想いを打ち明けて拒絶された青罡は、青妃の命に従って赤(せき)王府に縁談を申し込む。だが朱顔と青罡は互いを男女と思うことができず…。
第21話 折り鶴に託す願い
時影から青罡との婚姻を祝う手紙と贈り物が届けられ、深く傷ついた朱顔は赤王府を飛び出す。追ってきた赤淵に諭され赤王府に戻った朱顔は、青妃の差し金により赤(せき)族軍の食糧が断たれ、危機に陥っていると知る。赤族を窮地から救うために、青罡との婚姻を決心する朱顔。一方、青妃のもとを訪ねた青罡は、親しくとも恋情のない朱顔との婚姻の拒否を申し入れる。居合わせた白雪鷺の前で、愛する者しか娶(めと)らないと誓う青罡に白雪鷺は心を乱される。
第22話 よみがえった恋人
抱き合う朱顔と赤淵を目撃した赤王は激怒し、青族の使者は婚姻を取り消すと告げ去って行く。自分をかばう朱顔の姿を見て、200年前の恋人・曜儀(ようぎ)を思い出す赤淵。朱顔は曜儀とうり二つだったのだ。朱顔が曜儀の転生であると確信した赤淵は、事態を収めるために赤王府を去る。一方、赤族配下の霍図(フォトゥ)部の王は、鮫(こう)人の愛妃・魚姫(ぎょき)とその息子・蘇摩(そま)を寵愛(ちょうあい)していたが、突如襲い掛かった黒い影に命を奪われる。大妃(たいひ)は魚姫が元凶だと死刑を命ずるが…。
第23話 花嫁の逃亡作戦
勅命による婚姻に逆らえない朱顔は、両親との別れを惜しみながら天極風城を後にする。だが実は、望まぬ婚姻から逃げ出すことを決心していた。霍図部に到着した日の夜、人目を盗んで馬を探していた朱顔は、結界の張られた馬屋を見つける。そこには魚姫と蘇摩が餓死寸前で幽閉されていて…。一方、朱顔が辺境の霍図部に嫁ぐと聞いた時影は、平静を装いながらも動揺していた。そんな折、霍図部の方角に海皇(かいこう)の再来を予兆する帰邪(きじゃ)星が現れる。
第24話 師匠からの痛い教訓
柯爾克(カルク)親王との婚礼を目前にして、朱顔はその場で描いた絵姿から自分の分身を生み出す。分身を残して逃げ出した朱顔は砂の魔物を出現させ、婚礼の場を大混乱に陥れる。一方時影は、霍図部の鮫人が権力者によって捕らわれていると知り、大妃に会うため婚礼の場に立ち寄る。花嫁が偽物だと見抜いた時影は、本物の朱顔を追いかけて再会を果たす。朱顔が喜んだのもつかの間、身のほど知らずな逃亡計画をたしなめられ、分身の末路を見に戻ると…。
第25話 魔神との激闘
時影の結界に閉じ込められた朱顔は、時影からもらった書を修練して結界を破り、魚姫と蘇摩を捜す。だがすでに2人の姿はなく、朱顔は彼らを追って天極風城へ帰る決心をする。一方、古嵬(こがい)城に忍び込んだ赤淵は、虐待されている鮫人たちを発見。彼らを逃した赤淵の前に、大巫師(だいふし)が立ちふさがる。魂を失った鮫人を操り、赤淵を追い詰める大巫師。そこに割って入ったのは時影だった。時影と赤淵の共闘により窮地に陥った大巫師は魔神を召喚し…。
第26話 あなたの背中で見る景色
大巫師の石の破片を肩に受け、邪気に侵された時影。海国(かいこく)軍を落ち着かせるために海皇捜しを急ぐと言うが、朱顔は弱った時影に術をかけ、強引に夏(か)城内の神医のもとに連れて行く。その神医は60数年前に九嶷山で修行したことがあり、想い人のために身の破滅を招いたある神官の話を時影に聞かせた。時影は改めて俗世の情を捨てることを心に誓い、朱顔に冷たい態度を取る。その頃、白(はく)王は時影の活躍に目をつけ、取り入るための策を弄していた。
第27話 思いがけない再会
海国軍に捕らえられ、その軍営に連れ去られた朱顔。魔神との戦いによって体に傷を受け、一時的に法力を失っていた時影だが、体内の真元(しんげん)を動かすという禁忌をあえて犯し、朱顔を助けるために海国軍営へと乗り込む。ひと足先に軍営に入り朱顔を助け出した赤淵は、互いを想い合う朱顔と時影の姿を見て、朱顔の身柄を時影に託す。天極風城から兵を撤退させることを時影に約束し、その場を去った赤淵は海国軍へ戻り、思いがけない人物と再会する。
第28話 龍の血脈
赤淵は海皇の血が覚醒した蘇摩を助けるが、そこに現れた時影は、赤淵が海皇だと思い込む。澗(かん)長老に追われる赤淵は、時影に見逃してくれるよう頼み姿を消す。海国軍の捜査に駆けつけた青罡は、時影を陣中にいる時雨に会わせる。再会を喜び合う2人の兄弟だったが、青妃に召し出された朱顔を救うため、時影は嘉蘭(からん)の宮殿に向かう。だが、そこに時影の父・北冕(ほくべん)帝が現れ、窮地に立たされた時影をかばおうと、朱顔は帝君に口答えしてしまう。
第29話 朱顔を愛する2人の男
赤淵(せきえん)は自分が海皇(かいこう)だと偽り、朱顔(しゅがん)を呼び出す。朱顔は時影(じえい)と話し合って停戦するよう懇願し、赤淵は蘇摩(そま)の治療と世話を朱顔に頼んだ。蘇摩を屋敷に連れて帰った朱顔だが、母親を目の前で殺され心に大きな傷を負った蘇摩は、全く言うことを聞かない。ついには屋敷を飛び出し、白風麟(はくふうりん)に捕らえられて一悶着を起こす。一方、時影は母・白嫣(はくえん)の旧宅を訪れ、子供の頃を懐かしむ。そこへ赤淵が訪ねて来て、2人は腹を割って過去と未来を語り合う。
第30話 少司命の決断
牢(ろう)に現れた巫咸(ふかん)の後を追い幻影の世界に入った時影は、そこで待っていた智者(ちしゃ)こと星尊(せいそん)帝に会う。7000年前、自らの過ちで白薇(はくび)皇后を亡くした星尊帝は、衰えゆく空桑(くうそう)を葬り去るため、氷(ひょう)族を操っていたことを時影に明かす。時影に空桑の明るい未来を見いだした星尊帝は時影の手で討たれることを望み、この世を去った。朱顔への想いを遂げるため、時影は還俗(げんぞく)を決意する。その覚悟を知った赤淵は、朱顔の幸せを願い時影の背中を押すのだった。
第31話 不器用な恋の行方
嘉蘭(からん)に戻るために自ら負傷した時雨(じう)は、停戦と撤兵の指揮を時影に任せる。時雨が回復したら兵権を返上するとしたうえで空桑の中枢に戻った時影は、白風麟と青罡(せいこう)に撤兵を指示するが、白風麟は時影の命に従うことに不満を隠そうともしない。そんな中、時影を世子(せいし)とし、白雪鷺(はくせつろ)を世子妃(せいしひ)として迎えさせたい大司命(だいしめい)は、朱顔を時影から遠ざけようとする。一方、朱顔への想いを伝えきれない時影に、重明(ちょうめい)は女心をつかむための手練手管を指導するが…。
第32話 闇に落ちた蘇摩
海国(かいこく)軍と空桑軍の撤退が進む中、蘇摩は朱顔に心を開き始めたが、空桑の法術を試したせいで突然苦しみだす。朱顔が医者の指示どおり蘇摩に龍血古玉(りゅうけつこぎょく)を近づけると、古玉は蘇摩の額に吸収される。それを見た医者は蘇摩が海皇だと確信し、蘇摩を海国軍の澗(かん)長老に売り渡してしまう。空桑打倒を目論む澗長老は、空桑人を憎むよう蘇摩に術を施し、その記憶を書き換えた。その頃、嘉蘭の時影たちは、帰邪(きじゃ)星の光が一変し凶兆を示していることに気づく。
第33話 愛と正義のはざまで
空桑を裏切った証拠となる密書を取り返すよう白風麟に指示された白雪鷺は青罡を訪ね、甘い言葉で彼に言い寄り奪還に成功する。だが青罡のまっすぐな心に触れ、野心が揺らぎそうになる白雪鷺。一方、海皇の行方を追う時影は、如意(にょい)を捜して聞き出すため絵姿を描くが、その絵姿を見た白風麟は、星海雲庭(せいかいうんてい)で人気の高い美貌の妓女(ぎじょ)と同一人物だと思い当たる。時影たちを出し抜き星海雲庭に乗り込んだ白風麟は、如意を捕らえて激しい拷問を加える。
第34話 師弟の死闘
海皇・止淵(しえん)として時影との一騎打ちに臨む赤淵。時影の前に立ちはだかった朱顔は赤淵を守るため、自分が愛しているのは赤淵だと言い放つ。時影はその言葉に激しく動揺するが海皇抹殺の手を止めるわけにいかず、天誅(てんちゅう)を放つ。朱顔は千樹(せんじゅ)で対抗するが、千樹の防壁が崩れそうになり、思わず術を中断した時影は天誅の反動を自ら受けてしまう。朱顔はやはり災いの娘だったとして排除することを決めた大司命から彼女を守るため、時影は朱顔に破門を言い渡す。
第35話 最愛の人を失う時
赤淵は時影に星海雲庭での決闘を申し出る。星海雲庭に空桑軍を引きつけ、その間に朝雲渡(ちょううんと)から鮫(こう)人を碧落(へきらく)海に逃がす作戦だ。鮫人たちを守るよう頼まれた朱顔は、今は亡き海国軍の澗長老の姿に化けて朝雲渡からの逃走を助ける。さらに空桑軍の前で自分が海皇だと名乗り、青罡の手助けもあって、先陣に立つ白風麟の矛を収めさせる。一方、星海雲庭では時影と赤淵の熾烈な決闘が始まっていた。そこへ鮫人たちを碧落海に帰した朱顔が駆けつけるが…。
第36話 命綱の禁術
朱顔の向けた剣先で胸を貫き、自ら命を絶った時影。何としても時影の命をよみがえらせるために、朱顔は生き返りの方法を教えてほしいと大司命に懇願する。死者があの世との間に留(とど)まっていられる7日の間に、消えゆく魂魄(こんぱく)を元に戻すための禁術・星回血誓(せいかいけっせい)の奥義を探し出すため、朱顔は再び時影の精神の結界へと入り込む。そこで時影が胸に秘めていた切ない想いを知った朱顔は、これまで誰一人として成功した者のいない命懸けの挑戦を繰り広げる。
第37話 生と死のはざまで
目覚めた時影の魂魄が完全に固まるまでの3日間、記憶を失い自分が世子だと思っている時影のそばで、侍女として世話をする朱顔。記憶が混乱すると時影の魂の炎は消えてしまうため、朱顔との過去のいきさつを悟られることなく過ごさねばならない。だが共に過ごすうちに、時影の心には、この見知らぬ侍女に対する懐かしい思いが兆し始める。一方で朱顔は、星回血誓を成し遂げるため中陰(ちゅういん)に身を置いた影響で、次々に五感が失われていく。
第38話 世子と過ごす 最後の1日
時影と朱顔は最後の1日を繁星(はんせい)湖で過ごす。朱顔への想いが心に残っている時影は一生このまま共に生きようと願うが…。時影を重明に託し山を下りた朱顔は、ついに視覚と聴覚も失い、昏睡状態で白雪鷺と青罡に助けられる。医術では回復しない朱顔の病に、2人はとまどう。一方、時影の還俗を望んでいた大司命は考えを変え、北冕(ほくべん)帝のもとを訪れ白嫣と時影の冤罪を晴らすよう迫る。その頃、氷族の巫咸が白風麟の前に現れ、ある取り引きを持ちかける。
第39話 煉獄の試練
白雪鷺と青罡の法術で意識を取り戻し、視覚と聴覚も回復した朱顔。時影とは二度と会わないと誓った朱顔だが、時影が俗世へ戻るための儀式・万劫(まんごう)地獄に挑むと聞き、急いで九嶷(きゅうぎ)山へと向かう。還俗を願う者にあらゆる試練を与える万劫地獄で、時影は亡き母親と再会するが、現実の世界と同じく母親を救えず苦しむ時影の前に、今度は赤淵を殺された恨みを募らせた朱顔が姿を見せる。死を迫る朱顔に対し、時影は再び自ら命を差し出そうとする。
第40話 師弟から伴侶へ
還俗し、朱顔を伴侶とすることを決意した時影は、自分のもとから去るという朱顔を説得し、2人は重明に別れを告げ九嶷山を下りる。天極風(てんきょくふう)城で時影は、赤(せき)王に朱顔との婚儀を申し込む。一方、嘉蘭では、捕らえられた白風麟の審理が行われる。白風麟は北冕帝の前で罪を認めるが、海皇が長年赤(せき)王府に隠れており、赤王は鮫(こう)族と結託していたと告発。朱顔を含む赤王府の全員が反逆罪で嘉蘭に連行されることに。そんな中、再び夜空に帰邪星が輝き…。
第41話 破壊神 虚遥が現る
龍神によって魂魄を守られていた止淵は、時影と朱顔の術で生き返った。今日が2月29日だと聞いた止淵は、2人を黄泉(よみ)の滝へと連れていく。この日は龍神と海皇が感応し、碧落海への道が開かれる日だからだ。朱顔と止淵は力を合わせて蘇摩を悪夢から救い出し、蘇摩は如意と共に碧落海に帰った。しかし次の瞬間、止淵は破壊神・虚遥(きょよう)に体を乗っ取られてしまう。虚遥は止淵の曜儀(ようぎ)への想いにつけ込み、彼の体を操って時影を倒し朱顔を連れ去る。
第42話 星に誓う愛
虚遥に支配された止淵は、朱顔を曜儀に変えることと引き換えに、海皇を見つけ出す取り引きに応じる。さらに空桑に宣戦し、蠱惑(こわく)の力で氷族の兵を自在に操り、軍勢を嘉蘭へと進めた。赤王と王妃が自害したという噂を聞いた朱顔は葉(よう)城へ駆けつけ、両親の亡骸(なきがら)と対面する。止淵との結託の疑惑を晴らし、赤(せき)族と娘を守るために命を絶ったことを知り、ある決断をする朱顔。その夜、白(はく)塔に時影を呼び出した朱顔は、2人きりで祝言を挙げたいと告げる。
第43話(最終話) 最後の戦い
時影は七曜(しちよう)の術で氷族軍の不死身の力を奪い、最後に残った巫咸も倒す。止淵の姿をした虚遥は、2つの指輪・皇天(こうてん)と后土(こうど)の力で今の雲荒(うんこう)を滅ぼし新世界を作る計画を朱顔に語る。朱顔は言葉巧みに后土を手に入れると、さらに危険を冒して皇天の呪文も聞き出そうとするが…。朱顔が自我を失う寸前、指輪の呪文を悟った時影の手に皇天が移る。虚遥は時影と朱顔を異空間へと引きずり込み、指輪の力を得た時影・朱顔と破壊神との決戦が始まるのだった。