あらすじ
ある日目覚めるとすべての記憶を失っていた容楽(ようらく)は、自分が西啓(さいけい)の皇帝・容斉(ようせい)の妹だと聞かされる。優しい兄に心を開き始めた容楽だったが、その矢先、国同士の結盟のために北臨(ほくりん)へ嫁ぐことになる。容楽は北臨の宮中では仮面を着けて公主として振る舞いながら、街では茶楼の女主人・漫夭(まんよう)として、二重生活を送り始める。実は容斉は嫁ぐ容楽に、手にした者が天下を得るといわれる兵書“山河志(さんがし)”を北臨で探し出せば西啓に呼び戻すと約束しており、彼女は茶楼を拠点に山河志の行方を追っていたのだった。一方、容楽との政略結婚を拒む北臨の皇子・無憂(むゆう)は、その正体を知らずに漫夭を愛するようになり、彼女もまた無憂に惹かれ始める。そんな中、北臨の将軍・傅筹(ふちゅう)が凱旋するが…。
第1話 記憶を失った公主
何者かに襲われ、気を失った黒衣の女性。目覚めるとそこは西啓(さいけい)の皇宮だった。彼女は、自分が西啓の皇帝・容斉(ようせい)の妹で西啓の長公主・容楽(ようらく)だと告げられる。脳に傷を負い、記憶を失っているが、北臨(ほくりん)へ嫁ぐのが嫌で皇宮から逃げ出したのだという。容斉は容楽が好きだった茶室へ連れていき、好きな物や音楽に触れさせるが、容楽の記憶は戻らない。そんなある日、皇太后は容楽が北臨へ嫁がなければ、毒をあおって死ぬと容斉を脅し…。
第2話 攏月楼の若店主
政略結婚のために北臨に向かった容楽だが、結婚相手の黎(れい)王・宗政無憂(そうせいむゆう)は容楽との婚姻を断固拒絶する。容楽は「答えを出すのは半年後に」と妥協案を出すが、無憂の意思は固い。北臨での居所となる公主府に入るも、総管の秋怡(しゅうい)が目を光らせていて自由に外出することもままならない。何とか目をごまかして公主府を出た容楽は都の茶楼、攏月(ろうげつ)楼に向かう。この茶楼こそは容楽が北臨にやってきた真の目的を果たすための拠点だった。
第3話 後宮の宴
皇后が主催する宴(うたげ)に招待された容楽は、無憂の代わりに出席した陳(ちん)王・宗政無郁(そうせいむいく)を褒めそやす。これにより容楽が無郁に嫁ぐのではないかと宮中で噂になる。無憂と親しい無郁が西啓の公主を娶っても、無憂の勢力を増長させることになると恐れた皇太子は、尚書(しょうしょ)の余世海(よせいかい)たちと陰謀を企む。一方、容楽は「山河志(さんがし)」の手がかりを得るため、男装して香魂(こうこん)楼へやってくる。早速、目当ての芸妓(げいぎ)・沈魚(ちんぎょ)を指名するが、先約が入っており…。
第4話 皇太子の陰謀
容楽は無憂に殺されかけた沈魚を助け、攏月楼で身請けする。だが沈魚からも「山河志」の手がかりは得られなかった。そんな中、公主府で火事が発生。余世海の息子・余文杰(よぶんけつ)は消火に協力すると言って公主府にやってくるが、そこへ刺客が現れる。余文杰は刺客を追うふりをして部屋へ侵入し、公主に扮していた泠月(れいげつ)を辱めようとする。結局、容楽に見つかり、失敗に終わるが、北臨の皇帝は一連の事件が皇太子の画策だったと見抜き…。
第5話 英雄の凱旋
南境の反乱を平定した将軍・傅筹(ふちゅう)が都に凱旋(がいせん)した。北臨帝は功を称えて傅筹に褒美を与えると同時に、南境平定の策を講じた無憂に南境3州を任せようと考える。無憂の存在を脅威に感じ始めていた皇太子はいっそう危機感を強め、傅筹を味方に引き込むべく接近するがつれない。一方、容楽は黎王暗殺を企てたとして攏月(ろうげつ)、沈魚とともに刑部に連行されてしまう。それは自らの身代わりに漫夭(まんよう)を犯人に仕立て上げようとする、皇太子の陰謀だった。
第6話 水上の逢瀬
北臨帝は、西啓の公主との婚姻を嫌がる無憂に、中書監(ちゅうしょかん)の娘・孫雅璃(そんあり)を娶ればよいと勧める。しかし無憂は漫夭に惹かれており、雅璃を娶る気持ちも全くなかった。そこで北臨帝は半年以内に「山河志」を見つけられたら、誰を娶っても構わないと約束する。一方、容楽は攏月楼を訪れた無郁の相手をしていた。だが酒の匂いで意識を失ってしまい、折よく現れた無憂に連れ出される。2人は美しい景色に囲まれ、川下りを楽しみ…。
第7話 胸に秘めた志
雨でずぶ濡れになった漫夭を無憂は黎王府に引き止めた。一夜明けて帰ろうとしても執拗に引き止める無憂に、碁の対局で勝ったら帰らせてほしいと賭けを申し出る漫夭。そんな折、黎王府を訪れた無郁は、「船の沈没は事故ではなく汚職の口封じだ」と主張し、無憂に事件の解明を訴えるが、無憂は我関せずの姿勢を崩さない。しびれを切らした無郁は東宮に乗り込み汚職の元凶である皇太子を非難するが、逆に誣告(ぶこく)罪で捕らわれてしまい…。
第8話 恩人との再会
黎王府に長居した容楽は攏月楼へ帰るため、無憂に別れの挨拶をする。そこへ傅筹が現れ、容楽と傅筹は再会を果たす。傅筹は官職売買について調べる無憂のために、李志遠(りしえん)の手がかりを持ってきたのだ。だが無憂や容楽が李志遠の隠れ家へ到着すると、彼は余文杰の私兵に襲撃されていた。そして、「山河志」は秦(しん)家の旧宅の密室に隠されている可能性があると言い残し、息絶えてしまう。容楽は秦家の旧宅を改修した余(よ)家の屋敷に入り込み…。
第9話 密室探し
余世海の誕生祝いに招かれた無憂は、官職売買に関わる証人の名簿を突きつけ、余家父子(おやこ)を投獄するが、父子は、皇太子の使いでやってきた天仇門(てんきゅうもん)の者にあえなく殺される。早速、無憂は主のいなくなった余家の屋敷で、密室の捜索を開始。一方、容楽も攏月とともに「山河志」を手に入れるべく余家の屋敷に忍び込む。だが仕掛けにはまり、攏月にけがを負わせてしまう。攏月は容楽から無憂に頼めば、屋敷を見せてもらえるはずだと言うが…。
第10話 危機一髪
容楽は、漫夭としての自分に好意を示す無憂に惹かれていくが、自分の立場を考え彼を避け始める。攏月楼にやってきた無憂は漫夭が傅筹の接客中だと聞くと、たまたま店に来ていた雅璃を連れて2人のいる部屋に乗り込む。雅璃は気まずい空気に席を立ち、傅筹は無憂に追い出される。一方、公主府に無郁と昭蕓(しょううん)郡主が訪れ、容楽の替え玉の泠月を攏月楼へと誘う。漫夭と無憂の前に連れ出された泠月が足を滑らせた拍子に、仮面の紐がほどけて…。
第11話 花灯祭への誘い
北臨を訪問中の兄が刺客に狙われていると知り、狩り場へ救助に駆けつける容楽。だがそれは容楽が西啓の間者かどうかを確かめるために無憂が仕掛けた罠(わな)だった。まんまと引っかかった容楽は、すべてを受け入れるという無憂から愛の告白を受けたことで、「山河志」を手に入れたら西啓に帰るという決意が揺らぎ始める。そんな折、容楽は無憂から手作りの灯籠を贈られる。北臨の風習によると、それは花灯(かとう)祭への誘いを意味するという。
第12話 替え玉公主の婿選び
心の中で無憂に別れを告げ、西啓に戻ろうと決心する容楽。しかし、無憂の漫夭に対する想いを知った北臨帝によって、宮中に召し出される。無憂は公主と婚礼を挙げなければ漫夭を殺すと迫る北臨帝に「半年以内に『山河志』を見つけ出せば、婚姻も養民変法(ようみんへんぽう)の実施も自由」という約束を持ち出す。そんな折、容斉が宮中に現れ、謎の替え玉公主による婿選びが改めて行われることに。何も聞かされていない容楽を尻目に、替え玉は傅筹を婿に選び…。
第13話 駆け引きの代償
信頼する兄に裏切られ、意気消沈する容楽。一緒に世の中を変えようという無憂に共感し、結婚の約束をしたうえで「山河志」を差し出す。だが2人でともに一夜を過ごした翌朝、容楽は無郁が何気なく発した言葉を聞いてしまい、無憂が「山河志」を手に入れるために自分を欺いたと勘違いする。傷ついた容楽は黎王府を飛び出し、雨の中をさまよう。そして将軍府で目を覚まし、攏月たちが人質に取られていることを傅筹から知らされ…。
第14話 人質奪還
無憂は将軍府へ漫夭を捜しに来るが、居合わせた皇太子と替え玉公主とともに、傅筹が設けた宴に出席することに。傅筹は銘酒“十里香(じゅうりこう)”を振る舞うが、それは秦永(しんえい)が造ったいわくつきの酒だった。亡き師匠を侮辱され憤慨する無憂をよそに、皇太子は宴で舞を披露した芸妓・痕香(こんこう)に心を奪われる。一方、「山河志」を要求する容斉に、人質を殺さないことを約束させた容楽は、蕭煞(しょうさつ)に案内され、攏月たちが監禁されている反物店へ向かうが…。
第15話 若店主の正体
傅筹との婚礼を逃れるため攏月らと逃げ出した容楽だが、行く手に現れたのは西啓への帰路についたはずの容斉だった。攏月を人質に傅筹との婚礼を迫る容斉に、攏月は容楽を逃がすため自ら命を絶つ。絶望した容楽は自らの首に剣を当てて、言いなりにはならぬ覚悟を決めるが、今度は泠月らの命を盾に取られてなす術を失い、連れ戻されて失意のまま傅筹との婚礼に臨む。だが、婚礼の儀式が終わろうとした時、無憂が乗り込んできて…。
第16話 すれ違う心
無憂は花嫁の容楽を連れて、思雲(しうん)陵に立てこもる。だがお互いに一度失った信頼を取り戻すことは難しいと容楽から説得され、3日だけ2人で一緒に過ごし、彼女を解放する。将軍府に戻った容楽は、傅筹から差し出された婚礼の大切な儀式である誓いの杯を拒否し、すぐさま離縁してほしいと訴える。だが傅筹は最低でも1年は離縁できないと言いつつ、1年後も容楽の考えが変わらなければ、その時は望みを叶えると約束するのだった。
第17話 都落ち
無憂は無郁の配下が告発された責任を取って、黎王の称号を剥奪され無郁と青州(せいしゅう)へ下ることになった。このことを知った容楽は、「策を弄して無憂に罪を着せたのでは」と傅筹を詰問する。今後、どんなことも隠さずに話すと宣言する傅筹だが、容楽の不信感は消えない。そんな中、薬を飲んでいなかった容楽はしばらく昏睡状態に陥るが、そのことで記憶が戻らないことや定期的に起きる頭痛は、容斉から届く薬が原因ではとの疑念を抱くようになる。
第18話 寵姫の誕生祝い
東宮の宴へ傅筹とともに招かれた容楽は、自分の替え玉を演じた痕香の振る舞いを不審に思い、沈魚に素性を調べてもらう。北臨帝は東宮で芸妓の誕生祝いが開かれたと知って激怒し、皇太子に痕香を追い出すよう命ずる。だが皇太子は皇太子妃の忠告も聞かず、引き続き痕香を東宮に住まわせる。一方、傅筹は南境へ行った無憂が、無為に過ごしていることを訝しんでいた。そして配下の項影(こうえい)を南境へ遣わせ、ある者と接触させる。
第19話 疑惑
南境の豪族・鄭(てい)氏と仲間の秦(しん)氏は、流民をそそのかし反乱を起こさせようとするが、無憂の介入により失敗に終わる。また無憂は師兄(しけい)・無相子(むそうし)の協力を得て、青州の反乱を鎮める。孫継周(そんけいしゅう)は、無憂は今回の手柄によって爵位が復活し、都へ呼び戻されるのではないかと期待するが、無憂は南境で生涯を過ごしてもいいと言うのだった。一方、北臨の皇太子妃は、痕香を寵愛する皇太子に嫌気が差し、皇太子妃の位を廃してほしいと皇后に申し出る。
第20話 もう一つの同盟
南境の反乱を平定した功績で、無憂は黎王の爵位を回復され都に戻ることを許された。これを知った皇太子は、皇太子の座が脅かされることを恐れて、再び無憂の暗殺をもくろみ刺客を差し向ける。将軍府で暮らす容楽は傅筹に心を開かないまでも、静謐(せいひつ)園での日々にささやかな安らぎを見いだし始めていた。一方、同盟での約束を果たさぬ西啓にしびれを切らした北臨帝は、新たに宸(しん)国と同盟を結び、無憂の帰京を待って尉(い)国を討とうと考える。
第21話 再会と裏切り
清涼(せいりょう)湖で釣りをしていた容楽や昭蕓(しょううん)たちは、突然現れた刺客の集団に襲われる。狙われたのは、その場に居合わせた宸国の鎮北(ちんほく)王だった。刺客たちと争ううち、容楽は剣で刺されそうになるが、そのとき突如現れた無憂が剣先を素手でつかんで阻み、彼女を救う。一方、傅筹は皇宮に戻ってきた無郁と再会したことで、無憂が帰京したと知る。嫌な予感がした傅筹は慌てて清涼湖へ向かうが、途中で皇太子と痕香に出くわし、足止めされてしまい…。
第22話 和親同盟の真意
生涯、将軍府で暮らすことを考え始めていた容楽だったが、清涼湖での鎮北王暗殺に利用されたと知り、傅筹への不信感を強める。助かった鎮北王は傅筹と容楽を攏月楼に招いた。鎮北王は鷹揚(おうよう)で親しみやすく見えるが言葉の端々に含みがある。同じ席に無憂も招かれていると知った傅筹は、無憂が到着するや口実をつけて容楽とその場を去り、無憂は鎮北王と語り合う。同盟と花嫁選びの名目で北臨を訪れた鎮北王だが、その真意は知れない。
第23話 御花園の罠
南境で軍功を立てた無憂が、鎮北王をも刺客から救ったことで、皇太子は勢力争いに焦りを感じ始める。そこで懇意にしている皇族の娘を、鎮北王に嫁がせようと考えていた。皇后は花見という名目で皇族の娘を集め、鎮北王が宸国から持参した宝を皆に探させる。この宝が馬具と確信する昭蕓は、見つけたら乗馬好きな無郁に贈ろうと考えていた。一方、容楽は侍女に呼ばれ、偏殿へ案内される。そこで皇后を待っていると次第に意識が遠のき…。
第24話 駆け落ち
宸国の宝を手にした昭蕓は、鎮北王から王妃になってほしいと言われる。この申し出に怒った無郁は、昭蕓との関係を北臨帝に明かし、昭蕓を異国に嫁がせぬよう懇願する。だが出征を控え、宸国の支援を必要としていた北臨帝は、鎮北王の要望に応えるしかなかった。無憂は昭蕓の意思を尊重してほしいと鎮北王に掛け合うが、昭蕓と無郁は早まって駆け落ちしてしまう。2人の軽率な行動に腹を立てた鎮北王は、傅筹に2人を連れ戻すよう命じる。
第25話 愛ゆえの嘘
国のため無郁のためを思った昭蕓は宸国に嫁ぐ決意を固め、「鎮北王のほうが頼りになる」と心を偽って無郁に別れを告げる。無憂と親しい昭蕓を嫁がせることにより、無憂と宸国が繋がることを恐れる皇太子は、昭蕓の暗殺を企んだ。暗殺が成功すれば、昭蕓の警護を任されている無憂を罪に問うこともできる。輿入れの前日、昭蕓を送るため容楽は雅璃とともに駅館(えきかん)を訪れるが、部屋に1人になった昭蕓を狙ったのは容楽と同じ顔をした賊だった。
第26話 神医の弟子
近頃、頻繁に外出している蕭煞が気になる泠月。また公主への裏切りを企んでいるのではないかと懸念する。ある日、こっそり後をつけ、香魂楼に入る蕭煞を目撃する。香魂楼の女将によると、蕭煞は今や常客で、ある妓女を巡り、皇太子妃の弟と乱闘騒ぎまで起こしたらしい。沈魚と泠月は香魂楼を捜索し、可(か)という女性を助け出す。可は幼い頃、ある医術の達人にさらわれ、兄とはぐれたと言う。容楽は蕭煞が可の兄ではないかと疑う。
第27話 形見の七絶草
蕭可(しょうか)が難病に侵されていると知った容楽は、治療に必要な七絶(しちぜつ)草を手に入れたいと考えた。無憂が在りかを知っていると聞いた容楽が蕭可のために無憂を訪ねると、無憂は会いに来た理由さえ聞かず1つの箱を手渡す。そこには、かつて雲(うん)貴妃が無憂のために手に入れた七絶草が入っていた。すでに無憂との関係は過去のことと考えている容楽だが、雅璃を無憂に嫁がせたいと考える皇后は、無憂と容楽の噂を聞き、突然将軍府に訪ねてくる。
第28話 決別
北臨帝は皇后とともに将軍府を訪れ、容楽の気持ちを確かめたうえで、傅筹に容楽と離縁するよう命じる。それは容楽を忘れられぬ無憂の想いを叶えてやりたい親心からであった。傅筹は、無憂のことしか眼中にない北臨帝や容楽に腹を立て、容楽に対して強引に関係を迫ってしまう。傅筹の暴挙に失望した容楽は、将軍府から出ていくことを決心し、泠月に荷造りをさせる。すると花嫁衣装が入った箱の中から傅筹が書いた離縁状を発見する。
第29話 壊れた友情
余家の旧宅で気を失った容楽は、ある崖の上で目覚める。沈魚は「山河志」を奪うため、容楽を人質に取り、無憂をおびき出そうとしていたのだ。沈魚は駆けつけた無憂に、容楽が今までいかに無憂を想っていたかを話して聞かせ、あっさり「山河志」を手に入れて逃亡する。無憂と容楽はお互いの気持ちを確かめ合い、とうとう一緒になることを決意する。だが将軍府へ戻った容楽は、事情を察していた傅筹に軟禁されてしまうのだった。
第30話 討伐前夜
尉国討伐に自ら出征する北臨帝は、大将を1人同行する意向を明らかにした。無郁は大将に無憂を推薦し、自らも従軍を志願する。無憂に軍功を立てさせまいとする皇太子は、傅筹の従軍を推そうとするが、傅筹はこれを制して無郁の意見に賛同する。だが従軍を命じられた無憂は、これを拒絶して討伐自体を批判。激怒した北臨帝は無憂を南境に追放してしまう。結局、不在の間の政(まつりごと)を皇太子に任せ、傅筹を従軍させる決定が下されるが…。
第31話 大逆
傅筹の書斎で兵力配置図を見つけた容楽は、傅筹が皇太子と結託し、謀反を起こそうとしていると気づく。容楽はすぐさま軍営に駆けつけ、北臨帝に状況を説明する。だが北臨帝は、傅筹を皇太子から引き離し、戦に同行させているから問題ないと言う。しかし傅筹が将軍府にいたと聞くと、軍営にいる傅筹が偽者だと発覚する。北臨帝は偽者の傅筹の正体を暴こうとするが、すでに薬を盛られており、体の自由を奪われてしまう。偽者の正体は…。
第32話 暗殺者の正体
軍営での北臨帝暗殺は無憂の仕業だという報告に范陽(はんよう)王は反論するが、偽者の傅筹は無憂と徒党を組んで謀反を企てたとして、兵らに范陽王の殺害を命じる。一方、都にいる皇太子は、傅筹の協力による皇位簒奪(さんだつ)を頼みにして放蕩(ほうとう)の日々を送っていたが、皇帝暗殺と傅筹の正体を知り、自身も利用されていることに気づく。愕然とする皇太子だが、すでに後戻りはできず…。傅筹は禁衛軍を手中に収めたうえで無郁も軟禁し、都で無憂を迎え撃つ態勢を整える。
第33話 交わらぬ想い
林申(りんしん)と戦って力尽き、将軍府に連れ戻されてしまった容楽。謀反を諦めさせようと傅筹を説得するが、傅筹の決意は変わらない。だが傅筹は将軍府に忍び込んだ蕭煞の話から、容楽が毒に侵され、余命幾ばくもないことを知る。そこで容楽が自分を受け入れ、一緒に遠くへ逃げてくれるなら、謀反を諦めるからじっくり考えてほしいと申し出る。その夜、傅筹が酒を飲んでいると、容楽は傅筹にもたれかかり、申し出に応じると言うのだが…。
第34話 3つの菓子
傅筹は痕香のせいで、容楽の心をつかみ損ねたことに激怒し、痕香を密室に閉じ込めてしまう。そんな中、容斉は密かに将軍府を訪れ、持参した3つの菓子を容楽に振る舞う。だが容楽は警戒し、兄が作ったという菓子に手を付けようとしない。結局、3つとも容斉と半分ずつ食べるということで納得するが、容楽は菓子を食べた途端、気を失ってしまう。一方、皇太子は朝臣の勧めもあり、早々に即位しようとしていたが、無憂が都へ戻ってきて…。
第35話 誤算
傅筹は容楽に扮した痕香に蝎寒散(かつかんさん)という毒を飲ませ、無憂を脅そうと計画していた。蝎寒散を服用すれば半刻しか命はない。解毒薬と引き換えに投降を迫られた無憂は容楽の命を救うためにこれを受け入れた。しかし計画が成功し傅筹が復讐を果たした瞬間、衝撃の事実が明らかになる。無憂を投降させた傅筹は朝堂で皇太子の過去の罪を暴き、苻鴛(ふえん)の金冊(きんさつ)と鳳印(ほういん)を証拠に北臨帝の長子であると名乗りを上げて、臣下らに自らの皇位継承権を主張する。
第36話 静かな決意
白髪となって将軍府に戻った容楽は強くなろうと決意を固め、項影に名剣を用意させ剣の稽古を始める。無憂は傅筹に捕らえられ皇宮内の森閻(しんえん)宮で拷問を受けていた。その中で無憂は傅筹が自分を敵視し謀反を企てた予想外の理由と傅筹の正体を知る。容楽は蕭煞とともに皇宮に潜入して無憂の居場所を突き止めるが、厳重な警護を前になす術もない。そこで黎王府に住む蕭可を訪ねて、密かに墨玉(ぼくぎょく)扇を託し、無隠楼(むいんろう)の無相子に協力を求める。
第37話 脱走
傅筹の陰謀によって即位できなかった皇太子は、ある場所に閉じ込められてしまう。その部屋で皇太子はある人物と再会を果たす。同じく皇宮のある場所に軟禁されていた雅璃は、皇后の助けを借り、脱走を試みる。一方、容楽は傅筹をだまして令牌(れいはい)を手に入れ、大事な物を取りに思雲陵へ急ぐ。蕭煞と無相子は令牌を使って無憂を救出するが、無憂をつないだ檻がまさに皇宮の門から出ようとした時、兵に追われた雅璃が飛び出してくる。
第38話 摂政王誕生
無相子の力を借りて皇宮を逃れた無憂は、容楽らとともに筏(いかだ)で中山(ちゅうざん)を離れて南境に向かう。皇太子が乱心したとの報告を受けた傅筹が見たものは、自分を父と呼び、遊んでくれとせがむ少年のような皇太子の姿だった。父の愛を渇望する皇太子に少年時代の自分を重ね、しばし感傷にふける傅筹だったが皇太子は皇太子妃とともに林申の刃に倒れる。朝廷では皇后が懿旨(いし)を下し、今まさに傅筹が皇位に就こうとしていた。しかし楊惟(ようい)が異議を唱えて…。
第39話 南境の1年
無憂と容楽たちが中山を離れ、南境で暮らし始めてから1年が過ぎる。北臨は傅筹が支配する北境と、無憂が治める南境に分断され、辺境では争いが続いていた。そんな折、無憂を国君(こっくん)として迎え、同盟を結びたいという国書が宸国から届く。だが無憂は父親の敵を討ち、北臨を安定させるまで皇帝を名乗る気はなかった。一方、辺境の戦で活躍した南境の羅(ら)家軍が青州へ凱旋し、羅家軍の統帥・羅植(らしょく)将軍をねぎらう宴が王府で催される。
第40話 白髪の王妃
傲慢で粗暴な羅植は凱旋を祝う宴に招待されるが、開始時刻になっても姿を現さない無憂と容楽にいら立ち、蕭煞と争いになってしまう。無憂とともに現れた容楽は、争っていた2人をとがめ、罰を与えるが、羅植は素直に罰を受けようとしない。そこで容楽は羅植に弓で腕比べをしようと提案する。一方、青州で最も有名な茶楼では、講談師が繰り広げる白髪妖婦の話題で連日にぎわっていた。そんなある日、無憂と容楽がお忍びで茶楼を訪れる。
第41話 軍営の怪奇
羅家軍の軍営で羅橋(らきょう)将軍と兵らが殺された。白髪妖婦の仕業と見せかけて容楽を陥れる陰謀であるのは間違いないが、証拠はつかめない。王府の外では容楽が人の血を吸う白髪妖婦で、黎王と不義密通をした北臨の将軍夫人だという噂が盛んにささやかれている。そして王府の中でも見えない思惑が進行しつつあった。北境では苻鴛がかつての苻皇后として皇宮に収まっていた。傅筹は苻鴛を皇太后とする冊封(さくほう)を急ごうとするが、楊惟の猛反対を受ける。
第42話 旧師への忠告
苻鴛と庭を散歩していた傅筹が奇声を耳にして東宮に入ると、そこには死んだはずの北臨帝が閉じ込められていた。北臨帝の姿を見た苻鴛はひとしきり錯乱した後、傅筹に南境攻めと無憂の殺害を迫るが傅筹の顔は曇る。南境では無憂が孫継周を呼び出し、師弟の縁を切った。警告を突きつけられた孫継周は帰って娘を焚きつけ、雅璃は策を講じて無憂の床に潜り込んで一夜を明かす。無憂が雅璃と一夜をともにしたと聞かされた容楽は愕然とするが…。
第43話 逆雪
朝議の場で蔡厳和(さいげんか)は雅璃が無憂と一夜をともにしたという話題を持ち出した。孫継周は厳和とともに容楽を排斥し、強引に雅璃を王妃に据えようとする。一夜の過ちはなかったことを無憂に暴かれても、白髪妖婦が兵を殺した罪は償わせるとして一歩も引かない。折しも羅家軍での白髪妖婦の事件を北営軍に伝えた者がおり、憤った北営の兵たちが暴動を起こしたという知らせが入った。無憂は容楽が白髪妖婦ではない証拠を示すと公言するが…。
第44話 ぶらんこと風鈴
白髪妖婦の事件は解決し、容楽と無憂は婚礼を挙げた。やっと正式な王妃と認められた容楽だが、自分のために雲貴妃の亡骸を残して都を離れた無憂の気持ちを思うと自責の念で心は晴れない。無憂はそんな容楽を気遣って気晴らしに学堂へと誘う。無邪気な子供たちを見て笑顔になる容楽だが、子供たちが暗唱する詩に失われた記憶の断片がよみがえり、また頭痛にさいなまれる。だが容楽は頭痛が毒による症状であることを無憂に隠していた。
第45話 断ち切れぬ情
容楽の前に現れた傅筹は、彼女の治療に必要な血烏(けつう)を届けに来たと言うが、警戒した容楽は剣を構え、受け取ろうとしない。傅筹はその剣を自らの胸に突き刺し、自分が死ぬことで恐怖が消えるなら殺してくれと迫る。そのとき無憂と無相子が駆けつけてきたが、容楽は傅筹を助けに来た痕香の暗器で負傷する。幸い傷は重傷ではなかったが、無憂は不機嫌になり容楽とまともに話をしようともしない。一方、北境では傅筹の不在中に苻鴛が思雲陵を訪れて…。
第46話 雪に消えた魂
思雲陵が破壊され、雲貴妃の亡骸が行方知れずという報告を受けた無憂は、南境を離れようとしていた傅筹に追いつく。そこへ駆けつけた容楽とともに、傅筹にとどめを刺そうとすると、苻鴛の一団が現れる。傅筹を殺せば雲貴妃の亡骸を返さないという脅しに激昂する無憂。しかも、亡骸はすでに遺灰にされていた。悲しみと怒りの中、やむを得ず傅筹の身柄を引き渡す2人だが、遺灰が収められていた木箱には残酷な細工が施されており…。
第47話 説得の文
雅璃と侍女の春泥(しゅんでい)は青州王府の一室に監禁された。春泥は雅璃から暴行を受けた傷を示し、自分がそばにいることでかえって雅璃は過去を思い出して苦しむと訴え、容楽に仕えたいと願い出る。容楽が様子を見に行くと雅璃は乱心していた。一方、容楽に黙って出征した無憂からは援軍の派遣を求める文が何度も届いていた。無憂の憤りは理解できるものの、この出征に勝利の確証が持てない容楽は、無憂に文を送り、開戦を思いとどまらせようとする。
第48話 王妃の醜聞
漫音(まんいん)閣で目覚めた容楽は、隣に見知らぬ男がいることに驚く。容楽は曲者と見て剣を突きつけて侍衛に取り押さえさせるが、そこへ現れた雅璃は王妃が男を囲っていたと騒ぎ立てる。騒ぎは大臣らの耳にも入り、朝議に出た容楽は詮議を受けることになった。やましいところは何もない容楽だが、次々とあるはずのない証拠が提示され、不貞ばかりか北臨の間者の疑惑までかけられてしまう。前線から帰還した無憂に容楽は無実を訴えるが…。
第49話 異国での再会
南境を追われ、宸国の鎮北王府にたどり着いた容楽は、昭蕓と1年ぶりの再会を果たす。その直後、西啓から容斉、北臨から傅筹がそれぞれ鎮北王府へとやってくる。2人の目的は窮地に陥った容楽を助けることだったが、容斉に嵌められ容楽を失った傅筹は、敵意を剥き出しにする。一方、容楽は鎮北王の書斎へと入っていく不審な女性を目撃する。女性の素性は昭蕓も分からないと言う。その晩、容楽が書斎に忍び込むと、そこには意外な人物が…。
第50話 大芝居
無憂と容楽の関係決裂は世を欺く策であり、容楽は泠月の裏切りにも気づいていた。容楽が宸国に身を寄せたのは、容楽を陥れた泠月と「山河志」を奪った沈魚、それぞれの背後にいる黒幕を確かめるため、そして軍馬を手に入れるためだ。ある日、容楽は鎮北王から傅筹と容斉を招いた宴に誘われた。2人の目的は軍馬の調達だが一方に売るだけの軍馬しかいないため、どちらに売るべきか助言が欲しいと言う鎮北王。容楽は同席を約束するが…。
第51話 悲しき因縁
宴席から別室へ移った容楽は、酔い覚ましを飲んで意識を失ったふりをする。泠月は林申に命じられたとおり容楽を擎天(けいてん)閣へ運ぼうとするが、鎮北王の配下に殺されそうになり、蕭煞に助けられる。だが蕭煞が自分の正体を見抜いたと知ると本性を露わにする。一方、容楽の居場所を捜していた傅筹と無憂は偽の情報をつかまされ、擎天閣へ駆けつけるが、到着した途端に爆発が起きる。体ごと吹き飛ばされた無憂と傅筹は、容楽が死んだと思い込み…。
第52話 雪解け
宸国の皇位を奪い取ろうと画策する鎮北王は、計画が狂い出すと兵を動員し、容楽や無憂に総攻撃をかける。しかし、そこに宸国の幼帝が兵を率いてやってくる。鎮北王は謀反の意思を隠して言い逃れをするが、苻鴛と交わした盟書を読み上げられると、罪を認め…。一方、容楽は突然倒れてしまうが、診察によって子供を身ごもっていることが判明する。すべてが丸く収まり、容斉は西啓へ、傅筹は北臨へ、そして容楽と無憂は南境へと帰っていく。
第53話 残酷な解毒法
傅筹から届いた和議の文を無憂は受け入れた。南境には終戦と婚儀の触れが出され、街には平和が戻ってくる。一方、傅筹は無憂たちが婚儀を控えていると聞き、北臨帝が失踪した件を伝えられずにいた。容楽の体が毒に冒されていることは、懐妊後も無憂には隠されたままだ。蕭可は無郁が偶然手に入れた医書から、容楽が冒されているのは“天命”の毒であると知る。医書には解毒法も書かれていたが、それは容楽にとって受け入れ難い方法だった。
第54話 秦家の姉妹
容楽は項影から風鈴を手渡され、痕香は秦永の娘だと告げられた。自分の過去を知る糸口になることを期待して痕香に会いに出かけた容楽は、そこで失われた記憶に隠された自分の過去を知る。一方、宸国で自身と無憂が兄弟であると聞かされた傅筹は、かつて苻鴛の侍女だった女の証言を聞き、自分は苻鴛の実の息子ではなく復讐のために利用されたのだと確信する。さらに詳しい事実を容斉から聞きだそうとするが、その頃、容斉は…。
第55話 青梅のなる家
痕香や項影の命を盾に脅し、一緒に来れば“天命”の毒を解毒すると言う容斉。かつて住んだことがあるという家に連れていかれた容楽は容斉の望みを叶えるため、そこで半年の間、一緒に暮らすことに同意した。容斉の目的は「山河志」のように思えたが、なぜ自分が漫(まん)と呼ばれ、2人が村人から夫婦として扱われるのかは不可解だ。容斉の意図が分からぬまま一緒に暮らす容楽だが、ある日「斉(せい)兄さん」という言葉がふいに口を突いた。
第56話 冷宮の記憶
容斉と容楽は西啓に連れ戻され、容楽が気づいた時、子供は姿を消していた。約束は嘘だったと容斉を責める容楽だが、軟禁された冷宮を目にすると、そこで暮らしていた記憶が脳裏をよぎる。そんな中、容斉は記憶を失う前の容楽との日々に想いを馳せる。かつて2人は愛し合っていた。しかし、苻鴛の計画により彼女は秦漫(しんまん)から容楽公主となり、容斉を助けるために“天命”の毒に冒されたのだ。一方、無憂や傅筹らは容楽と子供を救うべく…。
第57話 最期の願い
冷宮を脱出した痕香と容楽は逃げる途中で苻鴛に見つかり、容楽は痕香を逃がして再び冷宮に連れ戻される。容斉は痕香の力を借りて容楽を助け出すが、容楽は容斉の目的が自分と痕香の子供を盾に無憂と傅筹を脅して北臨を制することだと信じて疑わない。“天命”の毒のせいで意識がもうろうとする容楽を前に容斉は、ある覚悟を決めていた。一方、苻鴛は皇宮に侵入した無憂と傅筹に、容楽と北臨帝を引き渡す代償として残酷な要求を突きつける。
第58話(最終話) 山河の志
痕香は苻鴛から、念児(ねんじ)を救いたければ容楽の子供を殺すよう迫られるが、機転を利かせ、2人の子供を救う。だが林申の反撃によって、傅筹とともに息の根を止められる。苻鴛は長年憎んだ北臨帝の死を見届けると、息子の容斉を失った衝撃から、炎の中に身を投げる。一方、容楽は“天命”の毒を排除できたものの、自分のために犠牲になった容斉に申し訳なく、無憂と離れて西啓で暮らすことに。そんなある日、無憂のもとに容斉の遺書が届けられる。