あらすじ
昌隆(しょうりゅう)30年の冬、長く続いた敵国・金珀(きんはく)国との戦いで縉(しん)国を勝利に導いた花(か)家軍。その功績により花家の娘・花琉璃(かりゅうり)は、県主の称号を与えられ、皇帝から都に呼ばれる。しかしそれは、「花家の兵力増長が皇位を脅かす」と言う官吏たちをなだめるためのいわば人質としてだった。そのことを百も承知で都入りした花琉璃は、気が強く武芸の達人でありながら人々を欺くために病弱でか弱い令嬢を装うことに。だが、幼い頃に何度も文(ふみ)を送っていた皇太子・姫元溯(きげんそ)にだけは素顔を見抜かれていて…!? 芝居を続ける花琉璃とそんな彼女の動向に目を光らせる姫元溯。2人は互いの腹を探るうち、惹かれ合っていき…。
第1話 初めての都
縉(しん)国の辺境にて護国大将軍夫妻が率いる花(か)家軍は、金珀(きんはく)国との大戦で勝利を収める。褒美として娘の花琉璃(かりゅうり)が都に招かれるが、それは花家の勢力拡大を牽制すべく娘を人質に取ったにすぎなかった。花琉璃は非難をかわすために到着早々気絶したふりをし、繊細で弱々しい姿を大衆の前にさらす。初めて花琉璃に会った皇太子の姫元溯(きげんそ)は、幼い頃にやり取りした文(ふみ)から受けた印象と、まるで違うことを不審に思う。一方、花琉璃も姫元溯に警戒心を抱き…。
第2話 在りし日の文
金玲苑(きんれいえん)を訪れた花琉璃は、店で居合わせた令嬢や朝廷の文官たちの情報を楽師から聞き出すも、純粋な客ではないと感づかれて慌てて退散。楽師を装っていた姫元溯は仮面を外し、不敵な笑みを浮かべる。戸(こ)部の田尚書(でんしょうしょ)を父に、順安(じゅんあん)公主を母に持つ田嘉敏(でんかびん)は、金玲苑で自分にふてぶてしい態度を取ってきた花琉璃が気に入らず嫌がらせを行う。やり返すために尚書府へ向かった花琉璃は、知り得た情報を駆使して順安公主に取り入る。
第3話 病弱令嬢の庭の秘密
花琉璃は人夫を集めて花府の造園を始めた。一番よく働く小白(しょうはく)は鳶尾(えんび)のお気に入りだが、花琉璃は「1人が目立ちすぎれば他はやる気を失う」と辞めさせてしまう。不満を訴える鳶尾に、小白は姫元溯が潜入させた配下であることを告げる。ある日、花府に刺客が侵入したとの知らせを聞いて姫元溯が駆けつけると、刺客らは皆撃退されていた。姫元溯は庭に仕掛けがあることに気づくが、その一方で花琉璃も彼に見破られたことに気づき…。
第4話 望まぬ縁談
花琉璃は満を持して昌隆(しょうりゅう)帝に謁見するが、金珀国との戦(いくさ)で花家は資金を無駄遣いしたあげく、和議を結ばざるを得ない状況に陥ったと英(えい)王・姫元灝(きげんこう)から非難されてしまう。しかし花琉璃は、2つの物を使って戦の難しさを説き、朝臣たちをあっさりと納得させた。次いで昌隆帝から縁談を持ちかけられた花琉璃は、相手が英王だと察すると断固拒否すべく一計を案じる。英王の母である賢妃(けんひ)も花家との縁談に眉をひそめ、昌隆帝に異論を唱えるのだった。
第5話 雪中の舞姫
英王に淡い気持ちを抱いている田嘉敏は、花琉璃も賢妃から梅花宴に招かれたと知り、憤りを隠せない。人目を奪ってやろうと剣舞を披露するも、それを見た花琉璃は、ただの見かけ倒しだと鼻白む。母親を引き合いに出されてやむなく舞うことになった花琉璃は、外套(がいとう)を脱ぎ去り美しい赤い衣を披露して皆からの注目を集めた。一方、花琉璃を狙う刺客は侍女に扮して梅花宴に潜り込み、花琉璃を毒殺するための機会をうかがうが…。
第6話 皇太子の弱み
許婚(いいなずけ)面をした英王と、刺客から県主を守るという名目の姫元溯から、なにかと付きまとわれて心の安まるときがない花琉璃。特に姫元溯は腹の底が読めず、警戒を解くことができない。そんな中、花琉璃を格技場へ連れ出し、「運動はできない」という彼女に審判をさせる姫元溯。力士たちの取り組みは審判を狙うかのごとく迫り来るが、花琉璃はか弱いふりをして逃げ続ける。しかし、ある作戦を思いついた花琉璃は、とっさに姫元溯に抱きつき…。
第7話 拷問のごとき初体験
万国朝拝会に向けて金珀国との和議や各国使臣の接待を担当する鴻臚寺卿(こうろじけい)が選ばれることになり、英王は自ら名乗りを上げた。朝議で花家を批判する英王の発言を聞いた花琉璃は、英王が鴻臚寺卿に選ばれれば花家は一層不利になると考え、対抗馬に姫元溯を立てようと考える。しかし、腹の読めない姫元溯を警戒するゆえに、英王の許婚であることを口実に、「距離を置きたい」と彼に伝えたばかりだった。そこで誠意を示そうとある策を思いつくが…。
第8話 予想外の加勢
姫元溯に担ぎ出された花琉璃は、英王の対抗馬として鴻臚寺卿の座を争うことになる。姫元溯に期待を裏切られて憤慨する花琉璃だったが、名誉挽回が難しい彼に運命を託すのは危険なため、自分で戦うほうがいいとあっさり受け入れる。しかし英王の困惑を知った皇太后は、英王を優位に立たせるために療養の名目で花琉璃を宮中に軟禁してしまう。花琉璃は難局を打開するため、仲良くなった宮女の協力を得て皇太后の歓心を買おうとするが…。
第9話 勝負の行方は分からない
皇太后に気に入られた花琉璃は英王との婚姻を勧められた。姫元溯は刺客捕縛の報告も聞き流し、裴済懐(はいせいかい)に八つ当たりをする始末。焼き肉を餌に姫元溯の屋敷に招かれた花琉璃は、柿の木が東宮に植えられた経緯を聞き、姫元溯が幼くして母親を亡くしたことを思い出す。2人で食事をしたあと、幼い頃に花琉璃からもらった文や贈り物を取り出した姫元溯は、彼女と昔話に花を咲かせた。そんな中、祭天(さいてん)の儀が始まり、花琉璃も皇太后の口利きで参加する。
第10話 龍井龍井坊の改造計画
自分が鴻臚寺卿になることを疑わない英王。しかし、英王の施策はその場しのぎだと花琉璃に指摘され、さらに見当違いな施策に臨んだことで民の心は離れていく。一方、花琉璃は好感度も高く、さばけない野菜を買い取って農民を助けたことで一層の人気を獲得。さらに、民の救済と万国朝拝会の使臣の滞在に利がある施策として、郊外の龍井(りゅうせい)坊に店を出すことに。英王を応援する田嘉敏は花琉璃に対抗するため、同じく店を開くよう英王に提案するが…。
第11話 無謀なお嬢様
英王が龍井坊に開いた店は損を出していたが、一方で花琉璃の店は大繁盛する。花琉璃は商売のかたわら、龍井坊から立ち退きを強いられた住民を店で雇い、利益も配分していた。これを知った英王はついに負けを認め、花琉璃が鴻臚寺卿に任じられる。姫元溯は初めて朝議に現れた官服姿の花琉璃に目を細めて喜ぶ。ある日、何者かに尾行されているのを察知した花琉璃は自らおとりとなるため、人けのない通りに向かう。すると、そこに現れたのは…。
第12話 発揮された実力
さらわれた花琉璃と田嘉敏を救うため、奔走する姫元溯。賢妃の反対を振り切った英王も合流し、二手に分かれて捜索する。一方、酒に酔って田嘉敏を襲おうとした人さらいたちに怒った花琉璃は、ついに実力を発揮して全員を倒した。そのあと再び、か弱い令嬢を演じ始めた花琉璃だったが、彼女の真の姿を知った田嘉敏は大きな秘密を抱えることに。そんな中、自分を見張る怪しい人物を見つけた花琉璃は、何者かと問い詰める。その正体は…。
第13話 愛する者を守る術
姫元溯(きげんそ)が花琉璃(かりゅうり)を救出するために黒甲(こくこう)軍を出動させたことで、姫元溯の親衛隊の存在が明らかになり、文官らは彼の野心を疑って非難の声を上げた。軍を持たせたのは自分だと昌隆(しょうりゅう)帝が擁護したことでこの件は切り上げられたが、私室に戻った昌隆帝は軽率に軍を動かした姫元溯をたしなめる。しかし、姫元溯が黒甲軍を持ったのは、過去の不幸な出来事により自分が力を持たねば大切な者は守れないと痛感するに至ったためだった。
第14話 花家軍の凱旋
上巳(じょうし)節の日、花神廟(かしんびょう)を訪れて亡き母をしのんだ姫元溯は偶然花琉璃と出会い、しばし2人の時を過ごす。姫元溯が今は亡き大切な女性を想っていると感じた花琉璃は、銀杏の葉で作った蝶々(ちょうちょう)を手渡して慰めるが、姫元溯の想い人が誰なのか気になってしかたがない。そこで、贈り物を用意して田嘉敏(でんかびん)を訪ね、生前姫元溯と親しかったが夭逝したという美女について聞き出す。一方、姫元溯は裴済懐(はいせいかい)に探らせた花琉璃と金珀(きんはく)国の賀遠亭(がえんてい)の過去が気になっていた。
第15話 険しい恋路
玉京(ぎょくけい)に凱旋(がいせん)した花応庭(かおうてい)は早速、花琉璃とともに朝議へ向かう。姫元溯は馬車が壊れたという口実で花琉璃の馬車に乗り込んでくるが、父親が一緒だと分かり、気まずい思いをする。昌隆帝は花応庭の武将としての労をねぎらい、玉京で新たな職務に就かせようと考えていたが、花応庭は意外なことを言い出す。ある日、姫元溯は花琉璃の兄・花長空(かちょうくう)のために、書物を持って花(か)家にやってくる。姫元溯の狙いを察した花応庭は、花琉璃を外出させて…。
第16話 愛の証しは使いよう
“裏山”と記した紙を花琉璃の部屋へ放り込んだ姫元溯。不安なまま待ち続けるが、現れた花琉璃の姿を見て顔をほころばせる。話をするうちに、花神廟で姫元溯が線香を上げていた相手は自分が思っていた人ではないと知った花琉璃は、安堵している自分に気づき、姫元溯のことが好きだと自覚する。一方、賀遠亭に深手を負わされた雲寒(うんかん)を太師(たいし)府にかくまった杜琇瑩(としゅうえい)は、手厚く看病をしていた。そんな杜琇瑩に雲寒は、姫元溯に届けるよう呼び笛を託す。
第17話 あざとさ対決
馬車の先頭を歩く横暴な侍衛が民を鞭(むち)で打とうとするところに出くわした鳶尾(えんび)。熊手を振るって阻止するが、馬車から出てきたのは、さらに高慢な楽陽(らくよう)長公主だった。長公主は法で取り締まろうとする花琉璃を力で押さえつけようとするものの、姫元溯が現れるとすぐに態度を変えて娘の謝瑶(しゃよう)を呼び出す。謝瑶は美しいが、花琉璃をも引かせるあざとい女子。姫元溯は相手にしていない様子だが、姫元溯の妃(きさき)候補という噂(うわさ)を聞いている花琉璃は気が気ではない。
第18話 和議交渉
万国朝拝会が正式に開幕し、花琉璃は各国の使臣たちの接待に余念がなかった。金珀国からは第二皇子の賀遠亭が使臣として到着し、昌隆帝に贈り物を献上する。縉(しん)国と金珀国の和議交渉も順調に進み、調印まであと一歩というところで、賀遠亭が突如として青寒(せいかん)草原の境界を500里後退させるという条件に不服を申し立てたため、交渉は膠着(こうちゃく)状態に。また過去の関係をほのめかされて花琉璃は逆上してしまう。2人の過去が気になる姫元溯は…。
第19話 灯籠の下の告白
謝臨州(しゃりんしゅう)と結託して辺境防衛図を花(か)府から盗み出そうと考えている賀遠亭。縉国の朝議の場に現れると、何度か顔を合わせた花琉璃のことが忘れられないと話し、金珀国との和議を口実に花家への婿入りを申し出る。花琉璃の婚姻話に冷静さを欠いた姫元溯は、2人の婚姻を承諾しないよう昌隆帝に進言。一方、婿入りの話を聞いた花応庭たちは憤慨するも、花琉璃はすでに対策を考えていた。そして、賀遠亭が訪ねてきたと聞くと、厨房(ちゅうぼう)へと向かい…。
第20話 防衛図を巡る攻防
繰り広げられる賀遠亭と姫元溯の張り合いは花琉璃の頭痛の種となっていた。そんな中、賀遠亭が花府に泊まり込むのは花琉璃への下心と同時に、辺境防衛図を盗み出そうと企(たくら)んでいるからだと察した花琉璃と姫元溯。あえて偽の防衛図をつかませることで敵の裏をかこうとするが、そのために姫元溯が考え出したのは思いもよらない奇策だった。花長空の科挙当日、ついに防衛図を阿瓦(あが)に盗み出させることに成功した賀遠亭は、強気で和議に臨むが…。
第21話 流れ星に願いを
無事に和議が締結され、花長空も会試(かいし)に首席で合格。ようやく肩の荷を降ろすことができた花琉璃は、田嘉敏と英(えい)王が開いた祝いの宴でしばしの開放感を味わう。一夜明けて、姫元溯は病床に伏す杜太師(とたいし)の見舞いに花琉璃を同行させる。花家の娘として太師から嫌われている自分を連れていけば怒りを買うのではと心配する花琉璃だったが、太師は未来の君主である姫元溯とともに、その妃となる花琉璃の存在をも認めて2人に縉国の未来を託す。
第22話 二重間者
10年前の雲倉嶺(うんそうれい)の役で軍糧の輸送を遅らせたのが、当時連岳(れんがく)と名乗っていた朱御史(しゅぎょし)だと知った花琉璃。朱御史の屋敷に忍び込み、証拠をちらつかせて問い詰める。観念した朱御史は花琉璃に真実を打ち明けようとするが、突如乱入した刺客によって殺されてしまう。花琉璃はその場にいた幼い娘のあやふやな証言により朱御史を殺したと疑われ、花家の者は花府に監禁されることに。しかしこれは、黒幕の目をくらますための姫元溯の画策だった。
第23話 あなたを守りたい
杜太師が亡くなった悲しみを1人で抱えきれず、雲寒から渡されていた呼び笛を吹いた杜琇瑩は、やってきた雲寒に自身の胸の内を打ち明ける。太平宴に参加できない花琉璃は、「最愛の人は己で守る」と決意を固めて姫元溯を助けに向かうが、城門の守りが強化されたために花家軍の精鋭を城内に引き入れることができずにいた。その頃、林(りん)妃は目を覚まさない姫元弘(きげんこう)を看病していたが、侍女が部屋から出ていくと何やら怪しげな表情を浮かべ…。
第24話 (最終話)
太平の世の礎
崖から落ちた姫元溯と花琉璃が無事に英王に見つけ出された。2人は負傷した身でありながら療養する間もなく黒幕の謝臨州を捕らえに向かう。都を離れようとする謝臨州は城門に詰めていた裴済懐に馬車を止められるが、楽陽長公主を人質に逃げきろうとする。しかし、天は悪を見逃さなかった。黒幕が裁かれた今、2人はもう1人の黒幕である林妃に会うために皇宮へ戻る。そして林妃の口から、かつて姫元溯の母親が殺された真相が語られて…。