あらすじ
唐の第2代皇帝・李世民(りせいみん)の時代、宮廷で服作りの達人として活躍していた安四娘(あんしじょう)は尚服(しょうふく)局を去り、今は街でひっそりと娘の琉璃(るり)と暮らしながら服作りに励んでいた。しかし、弟子の卓錦娘(たくきんじょう)に頼まれて製作した服のせいで、琉璃を1人残して自殺しなければならない羽目に。母の旧友で不禄(ふろく)院に勤める孫徳成(そんとくせい)の養子となった琉璃は、素性と性別を隠して成長し、宮中で疫病防止の消毒をする医官となる。そんな中、母から服作りの才能を引き継いでいた琉璃だったが、とあることからそれが卓錦娘に気づかれてしまう。危険を察知して宮中を出た琉璃は、あてもなく叔父が営んでいる服屋に向かう道中、裴行倹(はいこうけん)という男と出会い…。
第1話 金針の因縁
唐の貞観(じょうがん)11年、宮中では楊妃(ようひ)が新皇后に封ぜられるという噂が流れていた。これまで楊妃を軽んじてきた林尚服(りんしょうふく)は尚服局への風当たりが強くなることを恐れて頭を痛めている。卓錦娘(たくきんじょう)は林尚服に、皇后の冊封の儀の際に着用する褘衣(きい)を贈って楊妃に取り入れば過去の無礼も帳消しになると進言するが、楊妃の歓心を買えるほどの褘衣を作れる者は今の尚服局にはいない。卓錦娘は林尚服に命じられ、師匠であり刺繍の達人である安(あん)氏のもとを訪れるが…。
第2話
安氏は約束どおり褘衣の刺繍を直して卓錦娘に手渡した。見事な褘衣を手にした卓錦娘と林尚服は意気揚々と楊妃のもとを訪れ、尚服局からの贈り物として褘衣を楊妃に献上しようとする。しかし、そこへ皇帝・李世民(りせいみん)が現れた。皇后に冊封するとの聖旨も下されぬうちに、楊妃が皇后の褘衣を作らせていたと誤解した皇帝は憤り、楊妃は誤解を晴らすために自害しようとする。責任を追及された卓錦娘は苦し紛れに、褘衣を作らせたのは安氏だと嘘をつく。
第3話 欲望の成就
安氏は娘の琉璃(るり)を孫徳成(そんとくせい)に託し、娘や孫徳成らを守るために自害した。琉璃は豆子(とうし)と名を変えて素性や性別を隠し、宮中の不禄(ふろく)院で孫徳成の弟子として暮らす。防疫のため骸の消毒をする医官として働く琉璃は、母の死の事情を知らず、母譲りの刺繍と裁縫の腕前を見せては孫徳成に注意される日々だ。ある日、琉璃が落とした安氏の形見の巾着を尚服局の鄧七娘(とうしちじょう)が拾う。卓錦娘は弟子の鄧七娘が美しい巾着を持っているのを見ると、出どころを追及し始め…。
第4話 皇宮からの逃走
武才人(ぶさいじん)の協力を得て、巾着の件は何とかごまかすことができた。だが、それもつかの間、琉璃が狄(てき)才人に死に装束を贈った話を聞いた卓錦娘は、琉璃と武才人が口裏を合わせたのではと疑うと同時に、琉璃は裁縫が得意なことを知ってしまった。素性を探るため、卓錦娘は琉璃を不禄院から尚服局に引き抜こうとする。危険を感じた孫徳成は、「琉璃が18歳になったら皇宮を出す」という安氏との約束を繰り上げて、琉璃を皇宮から逃がそうとするが…。
第5話 再会の光と影
11年ぶりに会った父親に親子の名乗りを拒絶された琉璃は、客のふりをして如意(にょい)衣装店を訪れた。叔父に迷惑をかけないよう名乗らず店を去る琉璃だったが、安四郎(あんしろう)は客が琉璃だと気づくと急いで後を追う。再会を心から喜ぶ安四郎は一緒に暮らそうと言うが、叔父を罪人である自分の巻き添えにすることを恐れる琉璃は、母の遺言どおり西(せい)州に行くことを望む。西州に行くめどが立つまでは玉児(ぎょくじ)と名を変えて、店を預かる阿霓(あげい)と暮らすことになった。
第6話 失われた財物
琉璃は紛失した包みを四門学(しもんがく)へ受け取りに行くが、包みを持って出てきたのは河東(かとう)公の世子の友人の1人だった。嫌がらせをして返してくれないだろうと考えた琉璃は、とっさの機転で顔を隠して無事に包みを受け取るが、その中身は石ころだった。裴行倹(はいこうけん)が中身をすり替えたのだと考え、四門学に引き返す琉璃。しかし、裴行倹は罪を認めようとはせず、逆に琉璃こそが因縁をつけて自分に銭をたかろうとしているのだと主張する。
第7話 予期せぬ求婚劇
琉璃は如意衣装店の絵師として闘花(とうか)宴に出かけた。しかし、そこで顔を合わせた庫狄珊瑚(こてきさんご)が着ていたのは、なんと琉璃が都尉(とい)府の女主人・崔(さい)氏に作ったのとうり二つの衣装だった。琉璃の機転で気まずい空気は解消されたが、恥をかかされたうえに縁談の望みが消えたと感じた珊瑚は琉璃が側室に選ばれないよう、わざと転ばせて嫌がらせをする。玉の輿の夢が消えて、不機嫌に家に戻る珊瑚。しかし、庫狄宅には思いもかけない縁談が持ち込まれていた。
第8話 結納合戦
庫狄家が申し込まれた縁談の相手が実は如意衣装店の絵師で、絵師が琉璃だと知った曹(そう)氏は店に乗り込むと琉璃に散々悪態をつく。曹氏の理不尽な言い分や脅しに怒りを覚えながらも、琉璃は家族として問題の解決を約束する。解決法を考える琉璃は、偶然店に居合わせた裴行倹が「頼みがあるなら屋敷まで来い」と言って去ったことから、裴行倹は裴炎(はいえん)と裴如琢(はいじょたく)の友人であることに思い至った。その夜、裴宅を訪ねた琉璃は、ある取り引きを持ちかける。
第9話 善なる
琉璃と阿霓の如意衣装店、曹氏と珊瑚の曹記衣装店、2つの店の対立が明確になった。どちらの店も胡(こ)商大会での優勝を目指す。曹氏の甥・曹吾(そうご)は阿霓に首ったけで、商売敵の如意衣裳店に味方しようとする。宮廷では皇帝の体調が回復したものの、皇帝と皇太子の関係は冷え切ったままだった。曹王は好機とばかり、皇帝と皇太子を離反させようとする。皇太子への不信感を深める皇帝は皇太子を召喚し、武才人は、参内する皇太子に策を授ける。
第10話 曹記衣装店の策略
四門学の倉庫に荷が運び込まれた。ただの巻紙を兵(へい)部が護送するというかつてないものものしさに、科挙改革を阻止しようとする曹王が陰で動いていると考えた裴行倹は、荷の中に何かあると見て探り始める。一方、縁談の解決と引き換えに狩猟図を完成させた琉璃は、改めて裴行倹に財物を返せと要求するが、裴行倹は「とっていない物は返せない」の一点張りだ。そこで琉璃は裴行倹が盗みを働いたとの訴状を書いて、四門学の助教に裁きを訴える。
第11話 忍び寄る謀反の影
裴行倹が衣を取り戻してくれたおかげで、如意衣装店は無事に衣を胡商大会に出品し一等を獲得できた。裴行倹に感謝しつつも、「とられた財物は改めて取り戻す」といきまく琉璃。しかし内心では、もしかすると裴行倹に濡れ衣を着せているのではと不安になり始めている。一方、宮中では卓錦娘の指示により順子(じゅんし)が厳しい拷問を受けていた。水も睡眠時間も与えられず心身ともに衰弱しきった順子は、ついに琉璃が皇宮の外に出たことを明かしてしまう。
第12話 知られた秘密
“豆子”の手配書が街中に貼られた。琉璃は医官姿で、裴行倹と楼閣で話していた。「皇宮へ入るため、腰牌を貸してほしい」と言う裴行倹。そこへ“豆子”を捕らえに来た捕吏たちがやってくる。絶体絶命の琉璃に対し、裴行倹は「腰牌(こしはい)を貸すなら、脱出を助けよう」と言う。やむなく取り引きに応じる琉璃を抱え、裴行倹は馬に乗って逃げる。無事に逃走できたものの、琉璃は自分の体に触れた裴行倹に、女であることを知られてしまう。
第13話 師匠の思い
孫徳成と順子を救うため、琉璃は豆医官の衣に着替えて自首する。捕らわれた琉璃のもとに卓錦娘がやってきて、裁縫と刺繍の技を誰から習ったのか聞き出そうとするが、正体を明かせない琉璃は、奇書の絵柄から学んだとはぐらかす。釈放されて不禄院に戻った順子は、孫徳成と口を利こうとしない。見捨てられたと思い込んでいる順子の心を開こうとする孫徳成だが…。その頃、裴行倹と阿霓は琉璃を救い出すため、ある者に目をつけていた。
第14話 刺繍に隠された文字
武才人は腰当てを尚服局に作らせ、刺繍は琉璃を指名したが、琉璃は掖庭(えきてい)に捕らわれている。掖庭の琉璃は早く皇太子に身の危険を伝えなければと焦っていた。鄧七娘に協力を頼むが、鄧七娘も皇太子に直接伝えるすべはない。そこで鄧七娘は腰当ての仕事を卓錦娘から引き受けると、掖庭の琉璃に仕上げさせて、完成品を武才人に届けた。出来栄えに満足した武才人に琉璃の作であることを伝える鄧七娘。改めて武才人が刺繍をよく見ると、そこには…。
第15話
魏林は卓錦娘の命を受けて、掖庭の琉璃に毒入りの桂花糕(けいかこう)を届けた。しかし、桂花糕を預かった獄卒は琉璃に渡さず食べてしまう。琉璃が命をも顧みず我が身の危険を知らせてくれたことを知った皇太子は、掖庭へ琉璃を救い出しにやってくるが、その折に桂花糕を盗み食いした獄卒が急死してしまった。差し入れをした者が明らかになるのは時間の問題だ。琉璃の毒殺を命じたことが発覚するのを恐れた卓錦娘が、魏林を連れて潘秦海(はんしんかい)のもとへ向かうと…。
第16話 皇太子の賭け
阿碧(あへき)と刺繍の腕前を勝負することになった琉璃。皆が注目する中、琉璃はなかなか針を動かそうとしない。阿碧が完成させた花の刺繍は、実物かと見まごうほど、見事な出来ばえだった。感嘆する宮女たちは、琉璃の完成させた刺繍を見て更に驚く。ある日、市場で糸を買う役目を与えられた琉璃は皇宮を出る。安宅で、久しぶりの再会を喜ぶ琉璃と阿霓。琉璃は美しく装いを凝らし、裴行倹に対する訴状を撤回するために、四門学へ向かう。
第17話 笑顔の仮面
皇太子に甲冑の運搬を知られたことに気づいた曹王は、ひそかに積荷の中身を入れ替え、皇太子が手配したかのように偽装する。皇太子は罪を着せられようとしていることを知らないまま、皇帝に甲冑の存在を奏上しようとするが、ただならぬ空気を感じ取った武才人に制止される。なんとしても皇太子を排除したい曹王は、皇太子を鹿狩りに誘う。身の危険を感じた皇太子は、裴行倹に同行を依頼。狩り場では案の定、罠が仕掛けられていて…。
第18話 正体のない毒
命は助かったものの、皇太子は曹王の策略で深手を負った。曹王の息がかかる太医(たいい)院の医師は信用できないが、治療は必要だ。武才人が信頼できる医師を皇宮外から呼び寄せ、矢に毒は使われていないことが分かった。しかし、傷は薬でいったん回復し始めたものの、数日で悪化し、癒える気配がない。矢に毒はなかったはずだが、その症状は毒によるもののように見える。原因を突き止めるため、裴行倹らが直接傷に触れる薬や紗布(しゃふ)を調べると…。
第19話
武才人と琉璃と裴行倹の連携で皇太子の傷は徐々に癒え、体力も回復してきた。しかし、再び曹王に命を狙われることのないよう、回復は内密にし、重体を装い続ける。腕比べで裴行倹が勝利を収めさえすれば、皇太子の身辺も多少安全になるはずだ。曹王が東宮に送り込もうとしている蒲巴弩(ほはど)は、武術の実力においては裴行倹の敵ではないが、東宮に間者を送り込む機会を曹王がみすみす手放すわけがない。腕比べは裴行倹の優勢で進んでいったが…。
第20話
蒲巴弩との腕比べに勝利した裴行倹だったが、傷を負ってしまい、床につく。もうろうとした意識の中、琉璃のことを心配し、彼女の名を呼び続ける裴行倹。一方、琉璃は負傷した裴行倹の無事を祈り、彼そっくりの人形を相手に自分の想いを語りかけていた。盂蘭盆会(うらぼんえ)を控え、妃嬪(ひひん)たちは当日に着る衣づくりに忙しい。卓錦娘は楊妃に図案を提示するが、楊妃はどれも気に入らない。一方、武才人は自分の衣の担当者に琉璃を指名する。
第21話 再会のよろこび
皇太子と酒を酌み交わして泥酔した琉璃。裴行倹は介抱しながら、男女は距離を保てと説く。さらに琉璃を助けるため、部下に庫狄延忠と宮中との関係を探らせる。その頃、盂蘭盆会で楊妃が着る衣の図柄に頭を悩ませている卓錦娘に、琉璃は“百鳥朝鳳”の図を献上。それは後宮において楊妃が皇后と同等の地位にある存在だと誇示する意味を持つ絵柄だった。一方、武才人には花の王である牡丹の柄を提案。そのやり取りを、楊妃の間者が盗み見ていた。
第22話
盂蘭盆会の日、皆が甘露(かんろ)之殿に集まる中、楊妃と武才人はまだ姿を見せない。楊妃は用意した豪華な礼服を身にまとい、わざと遅れて登場することで、皇后も同然の自分の地位を皆に誇示しようと考えていた。しかし、皇帝は現れた楊妃の姿を見ると表情を険しくする。思惑が外れ、仏事に鳥の羽根を織り込んだ華美な衣で臨んだことで立場が悪くなった楊妃は、武才人も豪華な礼服を用意したことを訴え、皇帝を待たせていることを非難するが…。
第23話 皇太子の
盂蘭盆会で打撃を受けた楊妃は皇太子を倒す覚悟を新たにし、その身辺を探らせた。皇太子が琉璃を特にかわいがっていることを知った楊妃は、宮中に皇太子は男色だとの噂を流す。噂を耳にした武才人や裴行倹は、琉璃との接触を控えるよう忠告するが、皇太子は「やましいことは何もない」と聞く耳を持たない。今日も琉璃を東宮に召すが、曹王が送り込んだ内侍は皇太子と琉璃が2人きりとなる嘉徳(かとく)之殿の香炉に何やら怪しい香を仕込んでいた。
第24話 守りたい人
裏庭で養蚕(ようさん)の作業をしていた皇太子。皇帝はその姿に感心し、織物の技を教えた琉璃に褒賞を賜った。機嫌をよくした皇帝が楊妃や武才人を伴い東宮の宮殿に入ると、妙な香りが漂っている。部屋で催淫効果のある迷情香(めいじょうこう)がたかれていたのだ。それを知り皇帝は激怒、皇太子を問い詰める。身に覚えがないと、弁明する皇太子。楊妃と曹王は「皇太子には男色の噂がある」と言い、迷情香をたいていたのは噂が真実である証拠だと主張する。
第25話 早朝の猫捜し
長孫(ちょうそん)皇后のために作った衣に、うっかり安氏の絶技である双面繍(そうめんしゅう)を施してしまった琉璃。これに気がついた卓錦娘に問い詰められた琉璃は、まずは命を守るため「夢の中で仙女に教わった」と言い訳をし、習った技法を卓錦娘にも教えると苦し紛れの約束をする。その頃、裴行倹への疑惑を強めた孫徳成は、琉璃のために彼を始末しようと考えていた。順子に勧められて毒入りの汁物を飲んだ裴行倹は、体に力が入らなくなったところで、何者かに拉致されてしまう。
第26話
「夢で仙女に刺繍を習った」という話を聞いても半信半疑だった卓錦娘だが、琉璃から「新たな刺繍を習った」と尚服局では教えていない技法を見せられ、「もしや」と思い始める。ある夜のこと、夢に安氏が現れて卓錦娘はうなされる。折しもその日は安氏の命日だ。琉璃の話が一気に信憑性を帯び、安氏が自分を恨んでいると恐れた卓錦娘は霊がいるという弈心(えきしん)宮へ弔いに出かける。しかし、その時、弈心宮では琉璃が好物をそなえて母を弔っていた。
第27話 “天下第一針”を懸けた戦い
金針を手に入れた卓錦娘は儀式を執り行い、“天下第一針”の称号を名乗ろうとした。納得がいかない琉璃は、「金針を持つ者が“天下第一針”を名乗るのではなく、一番の腕を持つ者が金針と称号を得るべきだ」と卓錦娘に腕比べを挑み、金針を取り戻そうとする。第1戦の染めのお題は「赤」だ。しかし卓錦娘が手を回したため、琉璃が材料庫で受け取った紫膠(しこう)は、しけっていて鮮やかな色が出ず、在庫はないという。そこで、琉璃が東宮に向かうと…。
第28話 哀しき代償
楊妃と曹王の指示を裏で受けた純陽散人(じゅんようさんじん)が、皇帝の前で唐の未来を占う。神からのお告げは「唐は3代続いたのち、武氏の女が主となる」というものだった。その内容に衝撃を受ける皇帝。武才人は、皇帝が自分を亡き者にするだろうと予測する。それを知った裴行倹は、武才人の命を救うため、ある策を授けるが…。一方、琉璃と卓錦娘は、腕比べの第2戦に向けて準備をしていた。卓錦娘は琉璃がどんな裙子(くんし)を作るか探ろうとする。
第29話 恩人への誓い
琉璃と卓錦娘との腕比べ第2戦当日。琉璃は阿碧たちによって部屋に閉じ込められ、会場に行くことができずに負けてしまう。なんとか抜け出した琉璃は、命を守るために出家の道を選んだ武才人に会うため咸池(かんち)殿へ向かう。生きていることが幸せだと語る武才人は、自分に仕えて咸池殿で穏やかな日々を送ろうと琉璃を誘う。しかし琉璃は、母親の敵を討つため、憎き卓錦娘を負かさなければいけないと決意を語る。そして腕比べの第3戦に臨むが…。
第30話 奪われた称号
鄧七娘は琉璃が閉じ込められた密室を発見し救い出そうとするが、琉璃はかたくなに逃げないと言い張る。琉璃の身を案じる鄧七娘に、「ここにいても卓錦娘を負かすことができる」と琉璃は、ある物を用意させるが…。一方、皇帝の命がもう長くないと知った曹王は焦っていた。このまま皇帝が崩御すれば李治が即位し、敵対していた自分を生かしておくとは思えない。瀬戸際に立った曹王は、皇帝を毒殺し、その罪を皇太子に着せようと考える。
第31話 曹王の駒
卑怯な手段で腕比べに勝った卓錦娘は、今度こそ金針を祭る儀式を執り行おうとするが、琉璃は卓錦娘が“天下第一針”を名乗ることを断じて認めようとはせず、板打ち20回の罰を与えられてしまった。裴行倹によって救い出されたものの、琉璃は心身に深い傷を負い、うなされ続ける。曹王は潘秦海を使って皇帝の毒殺を企むが、おじけづいた潘秦海は、なかなか手を下せずにいる。曹王から実行を迫られ、思い余った潘秦海は皇太子を呼び出し…。
第32話 霊薬と毒薬
死を予感した皇帝は、改めて後継者として皇太子を指名する。このままでは皇帝に即位する望みが絶たれると、焦る曹王。一方、病床に伏せる琉璃を陰ながら支える裴行倹は、街の名医から薬をもらい、順子を介して琉璃に与える。その名医を訪ねる裴行倹の姿を蒲巴弩が目撃し、「裴行倹には想い人がいて、治療のための薬を名医からもらっている」と曹王に告げる。これを知った曹王は、裴行倹を操るため新たな陰謀をめぐらす。
第33話 明かされた秘密
曹王の企みで薬の禁断症状に苦しむ琉璃に、なす術のない裴行倹たち。裴行倹の想い人が誰なのか探る楊妃は、琉璃に疑惑の目を向ける。楊妃にさらわれた琉璃は、ついに女であることを明かしてしまう。囚われの身となった琉璃に、楊妃が出した解放の条件は、皇太子のために龍袍(りゅうほう)を作ること。しかしそれは、皇太子に謀反の意がある証拠を捏造する手助けをすることを意味していた。その頃、裴行倹もまた、曹王に呼び出され…。
第34話 二重の
曹王は琉璃の命を救うことを条件に、裴行倹を配下に引き入れようと考えた。帰順を説得させるため琉璃と裴行倹を会わせるが、琉璃は裴行倹を説得しようとはしない。曹王の前で裴行倹を責め立てた琉璃は、曹王に気づかれぬよう、ひそかに書きつけを手渡す。それには、明日曹王が謀反を起こすことが書かれていた。東宮に戻った裴行倹は、書きつけを皇太子に見せ、曹王の謀反への対応を促す。しかし、この書きつけこそが、曹王らの罠だった。
第35話
玄武門で皇太子を捕らえるつもりでいた曹王らは、逆に皇太子の兵に包囲される。皇太子から「曹王謀反」の知らせを受けて、その場に詰めていた顧命(こめい)大臣らも、曹王の許可なき挙兵を目の当たりにしたが、曹王はすでに皇帝が聖旨を下して、李治の皇太子の位を廃位したと主張する。互いに相手の謀反を主張する曹王と李治に、顧命大臣らは陛下に判断を仰ぐことにする。しかしその頃、甘露之殿では潘秦海が皇帝に毒入りの湯薬を飲ませようとしていた。
第36話 最後の賭け
重い中毒を患った琉璃は、昏睡に陥る。李治はなんとか回復させようとするが、宮廷の名医にも解毒することができない。そこに、牢に囚われていた薬王が連れてこられ、「断崖絶壁に生えている、ある希少な薬草を入手すれば、解毒薬が作れる」と発言。これを聞いた裴行倹は、琉璃の命を救うため、薬草を採りに行く許可を皇太子に求める。一方、琉璃が女性であることを知った皇太子は、自分の妃嬪として召すことを考える。
第37話 届かぬ想い
李世民が崩御し、李治が新皇帝に即位する。一方、裴行倹が持ち帰った薬草のおかげで一命を取り留めた琉璃。李治は昏睡状態が続く琉璃を後宮に移し、手厚く看病していた。琉璃と裴行倹の関係に気づいた李治は、謁見を求める裴行倹を避ける。やがて琉璃が目覚めると、安氏の冤罪を晴らすことを約束し、琉璃を妃嬪に封じることを告げようとするが、琉璃が願い出たのは、出家して武才人のそばに仕えたいという思いがけない要望だった。
第38話 縁を結ぶ白い鳩
李治は武才人と琉璃を連れて万年(ばんねん)宮へ避暑にやってきた。しかし、琉璃は山頂の梳粧(そしょう)楼に籠もって絵を描いたり、衣を作ったりするのみで李治の気持ちを受け入れようとはしない。長安県の県令となった裴行倹が、万年宮を訪ねてきた。拝謁を願い出る目的は琉璃に会うことだと察した王伏勝(おうふくしょう)は、李治には取り次がず、帰るよう説得したが、裴行倹は大雨が降る中でも頑として門前を動かない。これを知った武才人は、玉柳(ぎょくりゅう)にあることを命じる。
第39話 もう一人の
琉璃は晴れて宮中を離れ、裴行倹との婚礼を心待ちにしている。しかし、裴行倹の財産を預かる臨海(りんかい)大長公主は決して2人の婚礼を祝福してはいなかった。裴行倹は最初の妻を大長公主の陰湿ないびりによって亡くしているため、身の安全を守るために琉璃を蘇定方の屋敷に預ける。裴行倹が婚礼の報告で河東公府を訪れ、相手が庫狄延忠の娘であることを告げると、崔夫人はかつて庫狄家の娘を側室にしようとして恥をかかされたことを思い出す。
第40話(最終話) 嫁ぐ日
大長公主から贈られた屋敷を受け取ることにした裴行倹と琉璃。反抗の意ありと取られないためであり、吏部への推挙で配下が増えれば今の屋敷ではまかないきれないためでもあった。大きな屋敷を治めるためにも、河東公府と中眷(ちゅうけん)裴家の一族との間で事を荒立てないためにも、賢く忠実な侍女が必要になる。琉璃は伯父に信頼できる侍女を探してくれと頼むが、大長公主の命を受けた珊瑚は間者とも言うべき侍女を婚礼の祝いに贈ろうと考えていた。