あらすじ
碧羅天(へきらてん)の宝を得た者が天下を得る。その宝を開けられるのは“聖女”だけ――そんな伝説を信じる者たちが“聖女”を得ようとしのぎを削る時代。聡明で明るい少女・花不棄(かふき)は育ての親である九(きゅう)おじさんと、世間から身を潜める流浪の人生を送ってきた。だがある日、九おじさんに「自分が何者か知りたければ都へ行け」と言われる。そんな中、皇帝の甥・陳煜(ちんいく)が父親の私生児の娘を捜すため、花不棄がいる町までやってくる。花不棄は陳煜を利用し、彼の一行について都へ行こうと考えるが、突如謎の刺客に九おじさんを殺されてしまう。悲しみに沈む花不棄へ手を差し伸べたのは、仮面をつけた正体不明の義侠・蓮衣客(れんいかく)だった…。
第1話 義侠との出会い
己の運命を知らぬまま、赤子の頃から世を渡り歩く生活を続ける花不棄(かふき)。家族と呼べるのは、本当の名を捨てた九(きゅう)おじさんと犬の阿黄(あこう)のみ。おじさんから目立つ行動を禁じられている不棄だが、おじさんの病を治すため隠れて商いに精を出していた。ある日、彼女は品物を買いつける途中で、悪党退治をする義侠・蓮衣客(れんいかく)と運命的な出会いを果たす。実は蓮衣客は、信(しん)王の嫡子である陳煜(ちんいく)だった。陳煜は父が捜している異母妹が不棄ではないかと疑うが…。
第2話 私を都に連れてって
病に倒れた九おじさんはすでに手の施しようがない状態だった。花不棄は霊薬・回春丹(かいしゅんたん)に一縷(いちる)の望みをかけて薬霊荘(やくれいそう)に向かうが、2粒しかない回春丹は、すでに街で出会った道楽息子・陳煜の手に渡っていた。決して回春丹を譲ろうとしない陳煜に途方に暮れる不棄。しかし蓮衣客が届けてくれた回春丹でひとまずおじさんは回復する。体が動くようになったおじさんは上京を急ぐが、都への道のりは遠い。不棄はあの手この手で陳煜に都までの同行を迫るが…。
第3話 墓前の決意
九おじさんは花不棄をかばい、刺客の刃に倒れた。不棄も死を覚悟するが、間一髪で蓮衣客に助けられる。そして、追っ手から身を隠すために小芝居を打って薬霊荘に潜り込む。泥を落とした不棄の顔を見て、荘主の林満堂(りんまんどう)はその出自に気づく。そんなことなど知る由もない不棄は、妾にされるのではと震え上がる。脱走を試みた夜、薬霊荘に刺客が侵入。不棄を案じる蓮衣客も現れ、屋敷の中は騒然となる。その巻き添えを食い、阿黄まで殺されてしまい…。
第4話 放浪の身から令嬢へ
賊が侵入したどさくさに紛れて薬霊荘を抜け出した花不棄。ところが賊を捜索する家職や護衛に見つかったため、偶然その場に居合わせた莫若菲(ばくじゃくひ)とその従者に賊の濡れ衣を着せて自分は姿をくらます。しかし、莫若菲は無実の罪を晴らすために不棄を捜し当て、一緒に薬霊荘に戻って誤解を解けと迫る。薬霊荘に連れ戻された不棄は、林満堂から驚くべき秘密を明かされる。不棄に対する林満堂の待遇が急に変わったのは、側室にするためではなかったのだ。
第5話 商人の目算
訳も分からず薬霊荘の令嬢になってしまった花不棄。信王の命を受け、信王と薛菲(せつひ)の間に生まれた娘を捜しに西州府(せいしゅうふ)へやってきた莫若菲は、林満堂に取り引きを持ちかける。明月山荘(めいげつさんそう)の支配から逃れたい林満堂は不棄を莫若菲に託す。不棄は九おじさんの墓前に参り、莫若菲と都へ向かうことに。だが道中、一行は明月山荘の刺客に襲われる。間一髪のところで蓮衣客が現れ不棄を救出するが、不棄はおじさんの形見の鉢がないことに気づき…。
第6話 信王の思惑
負傷した莫若菲を連れ、莫(ばく)府に到着した花不棄。莫若菲の母である莫(ばく)夫人は、不棄を見て驚愕する。その頃信(しん)王府では、信王が娘を捜していると聞きつけた者たちが我こそはと名乗りを上げていた。陳煜は莫府にいる不棄を訪ね、本物の娘であれば殺すと脅しをかける。一方、信王は阿福(あふく)と莫府から送られてきた不棄の血を調べる。実は信王は碧羅天(へきらてん)の地図と聖女を捜していたのだ。不棄を聖女・薛菲の血を継ぐ娘と踏んだ信王は、不棄を王府へ迎えるべく…。
第7話 来たれ! 平穏な日々
しびれを切らした信王が、とうとう莫府を訪れた。母親とは似ても似つかぬ性格の花不棄だが、その姿に薛菲の面影を重ねるのだった。しかし感動の対面を阻むがごとく陳煜が現れる。陳煜は腹違いの妹の存在を拒むあまり、冷たい湖水に不棄を容赦なく突き落とす。結局、不棄は王府に迎え入れられず、代わりに莫府の令嬢として莫府に住むことになる。しかし莫夫人は、かつて夫の心を奪った薛菲を心の底から憎んでおり、娘の不棄を亡き者にしようと…。
第8話 屋敷に潜む脅威
莫府で暮らし始めた花不棄は、毎日運ばれる汁物に莫(ばく)じいが毒を入れていることに気づく。莫若菲は優しいが、莫府も不棄にとって安全な場所ではないようだ。一方、天門関での暗殺に失敗した柳明月(りゅうめいげつ)は今度こそ不棄と莫若菲を殺すため、柳青妍(りゅうせいけん)を莫府に送り込む。それと同時に、薬霊荘には柳青蕪(りゅうせいぶ)を遣わし、明月山荘を裏切った林満堂を殺させる。柳青蕪が林玉泉(りんぎょくせん)と林丹沙(りんたんさ)に刃を向けた時、蕭九鳳(しょうきゅうほう)が現れ、命と引き換えに莫府に潜入し不棄を守れと兄妹に言い渡す。
第9話 冷徹な世子
大晦日にまたも何者かに命を狙われた花不棄。陳煜は父の信王に代わって莫府へ見舞いに行くが、不棄と口論になり、形見の鉢を取り上げてしまう。その頃、飛雲堡(ひうんほう)の後継者であり莫若菲の従弟でもある雲琅(うんろう)が莫府を訪れていた。そこへ不棄が失踪したとの報告が入り、莫府は大騒ぎに。不棄は気絶したところを発見されるが、雲琅は不棄の顔を見て、驚きを隠せない。一方、信王府に戻った陳煜は皇帝に官庫の管理を引き継ぎたいと申し出るのだった。
第10話 王府の敷居
病床の信王から花不棄の件を強く訴えられた陳煜は、ついに不棄を迎えることに同意する。その頃、不棄は莫府で雲琅と再会。大喧嘩になるが1人になった隙に莫府から抜け出し、九おじさんが言い残した興源(きょうげん)質店へ向かう。しかし興源質店には“赤(せき)殿”はおらず、不棄は番頭から追い返されてしまう。鉢を取り返しに信王府へ向かった不棄は、莫若菲に見つかり莫府へと連れ戻されるが、そこへ甘(かん)妃の迎えが到着。いよいよ不棄は信王府に入ることになり…。
第11話 ありし日の舞
とうとう信王府に入った花不棄は、形見の鉢を陳煜から取り返す。そしてやってきた灯籠祭りの夜、意匠を凝らした灯籠が人々の目を楽しませる。皇帝と信王はそろって明月山荘の優勢を予想するが、莫若菲を勝たせたい不棄は面白くない。不棄は明月山荘の船に乗り込んで邪魔をするが、そのうち、明月山荘の舞い手が天門関で襲ってきた賊の首領に似ていることに気づく。また不棄は知らなかったが、その舞は母である薛菲が独自に振り付けたものだった。
第12話 胸の痣
薬霊荘を逃げ出した林兄妹が莫府に救いを求めてやってきた。快く屋敷に置いてやる莫若菲だが、2人は明月山荘の内偵ではないかと疑念を抱く。一方、信王府では倒れた信王に舞を見せるため、灯籠祭りの明月山荘の舞姫・柳青蕪を陳煜が連れ帰る。柳青蕪が天門関の刺客だと考える花不棄は、あえて柳青蕪に喧嘩を売って刺客と同じ痣(あざ)が胸にあるのを確かめる。刺客であることは確かめたものの、武術の腕が立つ柳青蕪に蹴られた不棄は倒れてしまい…。
第13話 灯籠に込めた誠意
信王の治療を申し出た柳明月は数カ月の延命処置を施す代わりに、官銀流通権を自分たちと手を組む朱(しゅ)府へ与えて欲しいと信王に持ちかける。さらに、薛菲の骸(むくろ)を見せると言って信王の心を掴むと、自分と薛菲が異母姉妹であることを明かした。一方、花不棄は陳煜に頼み込み、久々に莫府へと里帰り。さっそく莫若菲に歓迎されるが、不棄は彼のそばにいる新たな侍女・青児の存在に疑念を抱く。その頃、不棄に謝れずにいた雲琅は彼女を喜ばせようと…。
第14話 九おじさんの秘密
信王府の従者をまいて逃げ出した花不棄は、興源質店を訪れ番頭に鉢を見せるが、番頭は何の反応もしなかった。失望した不棄は質店をあとにするが、追いかけてきた番頭がある詩の一句をつぶやく。それは九おじさんの自作の詩だった。番頭である朱福(しゅふく)の話から、九おじさんが江南(こうなん)朱府の跡取りであることを知った不棄は朱府へ行く約束をして別れる。しかし突然、柳青蕪の襲撃を受けてしまう。そこへ蓮衣客が現れて不棄を助けるが、背中に矢傷を負い…。
第15話 最後を告げる夜
一向に回復しない花不棄を案じ、陳煜は蓮衣客として莫府を訪れる。不棄の想いを知った今、もはや会い続けるのは難しい。身を切る思いで別れを告げ、涙に暮れる不棄を置いて去るのだった。それでも、不棄のために咳に効くという薬・蛇胆(じゃたん)を集めさせていた。それに気づいた雲琅は、不棄への恋心をはっきりとは自覚しないものの、自ら山に入って蛇を捕まえ始める。一方、碧羅天の宝を欲する信王は、柳明月との会話に一筋の光明を見出していた。
第16話 蓮衣客の正体
信王は莫若菲に、官銀流通権は明月山荘に渡すと明かす。がく然とする莫若菲だが、信王にはある考えがあった。一方、まだ病が治らず床にふせっている花不棄。夜更けに目覚めると、兎の灯籠に火が灯っていた。蓮衣客がきたことを悟った不棄は庭に出て「姿を見せるまで待つ」と呼びかける。現れた蓮衣客の手を握り、想いを伝える不棄。しかし蓮衣客は、その手をそっと振りほどいた。この時、不棄は蓮衣客の右手に見覚えのある傷があることに気づく。
第17話 積年の恨み
莫若菲が毒に倒れたと知らせを受けた花不棄。林玉泉は余命3日と告げるが、実は莫若菲は毒に侵されておらず、信王からの指示で芝居をしていた。だが事情を知らない莫夫人は積年の恨みを爆発させ、不棄が信王ではなく自分の夫・莫白行(ばくはくこう)の隠し子であることを彼女に告げ、無理やり毒を飲ませる。不棄は陳煜と兄妹ではないことを知り、幸せをかみしめながら意識を失う。そんな瀕死の不棄を見つけた雲琅の前に小蝦(しょうか)が現れる。小蝦は不棄に仮死薬を飲ませて…。
第18話 胸に秘めた想い
莫夫人と莫じいに毒を盛られたことを周囲に黙ったまま、仮死状態に陥ってしまった花不棄。蓮衣客に贈られた兎の灯籠を握りしめていたことで、下手人は蓮衣客ではないかというあらぬ疑いを招くことになる。不棄が死んでいないことを知っている雲琅は、無事に都から逃してやるために寝ずの番をして不棄に付き添っていた。一方、不棄が死んだと誤解したままの陳煜は、友人の元崇(げんすう)の屋敷で酒をあおり、つらい胸の内を吐露するのだった。
第19話 神医現る
花不棄は仮死状態で蘇州府(そしゅうふ)へと運ばれ、見送る雲琅は再会を願って言づけを託す。葬儀の参列を禁じられた陳煜は、墓地を捜して山中を駆け回る。悲しみに暮れる中、不棄が兎の灯籠に書き残した彼女の生まれ月を見て、不棄が実の妹でないことに気づく。さらに棺を開けると骸がなく、不棄の生存に希望を抱く。しかし不棄の体を侵す毒は抜けず、どんな医者も匙を投げるありさまだった。そんな時、蘇州府にふらりと神医が現れる。その名を東方炻(とうほうせき)と言った。
第20話 朱家の孫娘
蘇州府の大商家・朱府で新たな人生を歩み始める花不棄。祖父である朱八華(しゅはっか)から、九おじさんは実の伯父・朱九華(しゅきゅうか)であり、不棄の母・薛菲はおじさんの妹だと告げられる。また薛菲が生まれる前、いずれ朱家に娘が生まれたら嫁がせると正体不明の男に約束させられたこと、しかし薛菲が誕生したことを隠し約束を反故にしていたことなどを聞かされる。九おじさんが苦労して自分を守り続けてくれたことを知り感謝する不棄だが、新たな謎を抱えることに…。
第21話 大商家は借金だらけ
朱八華から多額の借金があることを聞いた花不棄は、明月山荘に復讐するため朱府に残ることを決意する。頼もしい不棄の姿に沸き立つ朱寿(しゅじゅ)たち。不棄は朱府の孫娘の存在をよく思わぬ者たちをあぶり出すため、小蝦を孫娘に、自分は侍女に扮して蘇州府を散策する。一方、信王の病状はますます悪化していった。陳煜は若い神医がいることを聞きつけ、元崇と蘇州府の靖(せい)王世子(せいし)を頼る。時を同じくして侍女に扮した不棄も靖王府が営む店を訪れる。
第22話 恋に落ちた若様
花不棄たちを助けようと、元崇は勇ましくゴロツキに向かっていったが、あえなく返り討ちにあってしまう。仕方なく加勢した小蝦に元崇はひと目惚れ。小蝦が朱府の孫娘だと誤解した元崇は、靖王世子に頼んでともに朱府を訪れる。不棄の機転で元崇たちとの面会は免れたものの、見舞いに訪れた大おばたちを追い返すわけにもいかず、不棄はさらなる策を弄することに。何とか難を逃れた不棄だったが、何者かの密告により靖王側妃の九おばが戻ってきて…。
第23話 花不棄の商才
小蝦にひと目惚れをした元崇は、恋しさ募って朱府に忍び込んでくるものの、冷たく追い払われてしまう。そんな中、朱府の借金を減らそうと知恵を絞る花不棄。贅沢ばかりする祖父を脅しつつ、策を講じる。貧乏人への貸し付けを始めたり、おばたちに渡る銀子を見直して出資を仰いだり、着々と家計を立て直してゆく。ところがある日、朱府の花火を買った客が負傷し、東方炻が患者を連れて店に現れる。手際よく事をおさめた不棄に、東方炻は興味を惹かれ…。
第24話 碧羅天への道
陳煜は信王に、花不棄は信王と血のつながりは無く、実は今も生きていると告げる。驚いた信王は、陳煜に不棄は碧羅天の聖女だと明かすが、聖女を利用して天下を取れと言う父に陳煜は反感と怒りを覚える。そんな中、信王に碧羅天への案内を命じられた柳明月は、一行がたどり着けないように策を講じる。しかし自分の命を狙う柳青蕪の存在には気づいていなかった。一方、蕭九鳳を尾行した阿福は、ついに碧羅天の入り口の間近までくるが…。
第25話 都からの追放
蕭九鳳から碧羅天への地図の半分を奪った阿福は、その地図を皇帝に渡す。そして人質として監禁されている妹・張(ちょう)妃に、彼女も碧羅天への同行が許されたことを伝える。その頃、信王はもう虫の息だった。看取りにきた皇帝に対し、陳煜に封地を与えて欲しいと訴え息絶える。皇帝は陳煜を東平(とうへい)郡の郡王(ぐんおう)に封じると、密かに明月山荘と碧羅天との関わりを調査する任務を与える。一方、陳煜の東平郡行きを知った花不棄は、東平郡の特産品に目を付け…。
第26話 朱府の新当主
朱府の孫娘をお披露目する宴に変装して潜り込んだ陳煜。孫娘の朱珠(しゅしゅ)が花不棄であることを確認すると、不棄を二度と危険な目に遭わせないと心に誓う。そんなことなど知る由もない不棄は、陳煜が会いにきてくれないのは、自分たちが兄妹ではないと知らないからだと考える。不棄はそれに気づかせようと、小蝦に会うために朱府に忍び込んだ元崇を捕らえ、蓮衣客にあることを伝えてくれるよう頼む。そんな中、東方炻が不棄を連れ去り…。
第27話 神医の敵は義侠
花不棄の想いを知り、蓮衣客に敵意を向ける東方炻。屋敷に戻された不棄は陳煜に身を隠させようと、あえて蓮衣客の首に賞金を懸ける。しかし、そのことに怒った元崇が蓮衣客に扮して街を練り歩き、人々の注目を浴びる。蘇州府を訪れていた雲琅が噂を聞きつけ、偽者の蓮衣客と決闘を果たすが、陳煜が裏で助けたため敗れてしまう。その手並みに気づいた東方炻は、好敵手を得たとほくそ笑む。そして朱府との縁談がまとまるよう、強引に事を推し進め…。
第28話 待ち人 来たる
ついに陳煜は花不棄の前に姿を現した。2人はつかの間の逢瀬で想いを確かめ合い、陳煜は今回の封爵(ほうしゃく)で明月山荘を調査する任務を帯びていることを明かす。そして、任務を終えたら蘇州府で一緒に暮らすと約束して旅立っていく。陳煜は不在が露見せぬよう急いで韓業(かんぎょう)らに合流すると、柳青蕪がずっと謁見(えっけん)を願い出ていると聞かされる。部屋に呼び入れると、柳青蕪は陳煜にある策を持ちかけた。芝居で油断させて柳明月を暗殺するというその策とは…。
第29話 郡王着任
任地の東平郡に到着した陳煜。着任するや柳明月が送り込んだ家職を即座に斬り殺し、柳青蕪との親密さを演出して柳明月が主と接触するよう仕向ける。その意図を読み取った柳明月は、陳煜を西の洞窟におびき寄せるが、柳青蕪が身を挺して陳煜を助ける。再三の失態を蕭九鳳に知られることを恐れた柳明月は、明月山荘には戻らず姿を消すのだった。一方、蓮衣客の行方を追う東方炻は、元崇と白漸飛(はくざんひ)が蓮衣客につながる鍵と踏み一計を案じる。
第30話 正面対決
本物の蓮衣客をおびき出すおとりとして、東方炻に捕まった元崇たちだったが、小蝦の機転でうまく逃げ出すことに成功する。東方炻は、蓮衣客は朱府にいるという小蝦の言葉を真に受け、嫉妬にかられて朱府に忍び込む。しかし、庭の仕掛けで負傷して気を失ったところを花不棄に拘束されてしまう。だが不棄が目を離した隙にあっさりと枷(かせ)を解いた東方炻は、その夜、報復のため不棄の寝室を襲う。ところが、それも見越していた不棄は捕吏(ほり)たちを呼んで…。
第31話 知恵比べ
ついに花不棄と再会した雲琅は、涙ながらに去る林丹沙に離れがたい想いを抱きつつも、朱府へと向かう。雲琅は不棄から、彼女に毒を盛ったのが莫夫人と聞かされ、気が動転。一方、東方炻を訴えた不棄は、彼に店を閉めると言わせたまでは良かったが、閉店のために在庫の処分市を開かれてしまう。大安売りで客を奪われ、処分市がいつまで続くかも分からない朱府は、借金返済のめどが立たず頭を悩ませる。そこに東方炻がもうけ話を持って現れるが…。
第32話 友のために
東方炻の屋敷を訪れた花不棄は、隠し部屋に捕らわれた雲琅と林丹沙を目にする。東方炻の前に跪き、涙ながらに2人の命乞いをする不棄。しかし、その涙にほだされた東方炻が2人を解放すると、不棄はたちまち態度を一変させて悪態をつき始めた。そんな不棄を東方炻はますます好ましく思う。朱府に戻る途中、街を散策する不棄に狙いを定める黒雁(こくがん)。暗器が放たれ不棄は重傷を負うが、黒雁の暗器は命中してはいない。暗器を放ったのは何者なのか?
第33話 痣の秘密
東方炻に捕らわれるも解放された雲琅は、林丹沙と莫府へと戻ってくるが、莫夫人が花不棄を毒殺しようとしたことで莫若菲を責める。そして改めて林玉泉に林丹沙を娶りたいと告げるのだった。その頃、金鍼が体内に残っている芝居をしていた柳青蕪は、密かに陳煜が護衛する中、柳明月の潜む巣窟へと出向く。一方、西楚州(せいそしゅう)を目指す花不棄と朱寿は、賭博道具を高額で売りつけ賭場をあとにするが、東方炻の追っ手はすぐそこまで迫っていた…。
第34話 砂漠の2人
東方炻の追跡を振り切って登州へたどり着いた花不棄と朱寿は、砂漠の宿でひと晩を過ごすことに。だがその夜、東方炻が追ってきたため、宿の女将に頼んで秘密の抜け道から逃がしてもらう。しかし、東方炻は女将を脅して2人の行き先を聞き出す。不棄と朱寿がたどり着いたのは、盗賊の営む宿だった。囮となった朱寿のおかげで何とか逃げ出せた不棄は、朱寿が追いつくのを砂漠で待っていた。するとそこに東方炻が現れ、行動をともにすることになるが…。
第35話 恋の鞘当て
東方炻と砂漠をさまよう花不棄。果物のなる木を見つけて喜び合った直後、思いがけず陳煜と再会する。盗賊を捜しに砂漠を訪れた陳煜が折よく通りかかったのだ。不棄と陳煜は初対面を装うものの、親しげにほほ笑みを交わす。東方炻は仲のよい2人に、いらだちを募らせる。図らずも砂漠で恋の鞘当てが勃発するのだった。湖に行き着くと、不棄は水浴びを口実に2人を下がらせ、東方炻の水筒にしびれ薬を入れる。そこへ陳煜を捜す柳青蕪も参入し…。
第36話 名前で呼び合う仲
柳青蕪と陳煜はいつのまにか名前で呼び合う仲になっていた。しかも、陳煜はただの友人だと言いつつも負傷している柳青蕪に常に気を配っている。いったんは陳煜の言葉を信じることにした花不棄だが、重傷の柳青蕪に一晩付き添う陳煜が誘惑されやしないかと気が気ではない。朝になっても部屋から出てこない2人にイライラしながら様子を見に行くと、なんと陳煜は柳青蕪と同じ寝台で眠っていた。傷ついた不棄は思わず砂漠へ飛び出していくが…。
第37話 100万両の人質
盗賊に捕らわれた花不棄は、オリジナルの賭博を盗賊の頭領に教えることで監禁を解かれるが、盗賊たちと賭けに興じているところを柳明月に目撃される。しかし機転を利かせて顔を汚した不棄は、正体を見破られることなく難を逃れる。一方、盗賊の根城に侵入した陳煜はようやく不棄を見つけ、ともに根城からの脱出を図るのだった。その頃、東方炻は柳明月に命じて不棄と陳煜を捜索させるが、一向に見つからないため自ら根城に火を放ち…。
第38話 救出の委任状
陳煜を盗賊の根城に残したまま、東方炻に救い出された花不棄は、西楚州の城門で小六(しょうりく)と韓業に再会する。韓業は不棄に渡された盗賊の見張りの配置図を手に、関(かん)将軍とともに陳煜を救出するべく盗賊の根城に向かう。一方、不棄が無事であることを知らない朱寿は、東方炻に100万両で不棄の救出を依頼し、その手付金を稼ぐために賭場へとやってくる。しかし、すべては東方炻のたくらみによるものだった。すると、そこに陳煜と不棄が現れ…。
第39話 火花散る郡王府
機転を利かせた花不棄は東方炻との賭けに勝ち、100万両の支払いは帳消しとなった。浮かれ気分で東平郡王(とうへいぐんおう)府にやってくる不棄だったが、そこには柳青蕪の姿が。明月山荘が東方炻の部下に滅ぼされ、命からがら逃げてきたのだ。哀れを装う柳青蕪に我慢がならない不棄は、陳煜との密会を知って怒り心頭。街に出て物乞いを始め、そこへ現れた東方炻から愛を告げられてもどこ吹く風。陳煜はどうにか不棄を郡王府に連れ帰ると、阿福を案じて小丘林(しょうきゅうりん)へ向かう。
第40話 無念の死
小丘林で深手を負った阿福は聖珠(せいじゅ)と地図を陳煜に託して息を引き取った。一方、陳煜の安否を気遣う花不棄のもとに祖父の危篤の知らせが。柳青蕪の侍女・萍児(へいじ)が雇った刺客が待つとも知らず、急ぎ蘇州府に向かう不棄と朱寿。東方炻の登場と駆けつけた陳煜によって不棄はからくも郡王府に戻ることができた。郡王としての行動に矛盾が露呈した陳煜は、当分身を隠す必要があると不棄に話す。しかし、その矢先に謀反の罪で都へ護送されることに…。
第41話 皇帝の特使
謀反の罪に問われ西楚州の牢へ護送された陳煜。事情がつかめない東方炻たちは皇帝の出方をうかがうが、実は花不棄と生きるために陳煜が考えた策だった。その陳煜の前に皇帝の特使として白漸飛が現れ、蓮衣客だったことを不問に付す代わりに、逆賊である東方炻と朱府の関係を調査するよう命じる。一方、陳煜と朱寿が捕らわれたことを知った不棄は杜(と)知府に助けを求めに行くが、白漸飛から保釈金を払い朱府の商いに関与させるよう条件を突きつけられ…。
第42話 碧羅天の聖女
捕らわれているはずの陳煜の情報を、小蝦とともに牢の前で探っていた花不棄だったが、柳青蕪の罠にはめられ妓楼に売り飛ばされそうになる。袖に仕込んでいた弩(ど)で柳青蕪を撃ち、逃げ出した不棄。逃げる最中、狼狽のあまり落馬しそうになったところをある男に助けられるが、自分が人を殺したことへの衝撃で気を失い、東方炻の客桟(きゃくさん)へ運ばれる。店へ戻った不棄はお礼を言うためその男を呼ぶが、手に傷があることに気づく。そしてその夜…。
第43話 誠王の末裔
逆賊を討つため、護送車を襲わせる策を講じた陳煜。しかし十分な兵力が集まらず失敗に終わり、火矢を射られて崖下に姿を消す。そんな中、陳煜を案じる花不棄の前に東方炻が現れ、黒焦げの骸(むくろ)を運びこませる。その手には陳煜と同じ傷痕があった。悲しみに暮れる不棄を連れ去ろうとする東方炻だが、碧羅天の宝を得るには聖女を生け贄にすると知り、彼女を残して去るのだった。失意の中、朱府へ戻る不棄。その道中、ある人物に護衛を殺され…。
第44話 つかの間の蜜月
飛雲堡の馬疫は皇帝に軍馬を納めさせぬための蕭九鳳の策略だった。蕭九鳳は軍馬が納められなければ飛雲堡は取り潰されると脅し、うまみを提示して味方に付けようとする。やむを得ず、飛雲堡は朝廷に背いて誠(せい)王の孫の擁立に力を貸すことに。一方、山中に身を潜めた陳煜と花不棄は、朱八華の到着を待ちながら、ひとときの穏やかな時間を過ごしていた。しかし幸せな日々もつかの間、白漸飛が朱八華を都に連れ去ったという知らせが入り…。
第45話 皇帝の刃
朱八華を救おうとして囚われてしまった陳煜は、皇帝から碧羅天の地図と聖珠を渡すよう迫られ短刀で胸を刺される。一命を取り留めた陳煜は、元崇に薬酒を届けさせ、白漸飛に注意するよう伝えるのだった。一方、皇帝の妃となった柳青蕪は、皇宮に監禁されている陳煜に密かに会いに行く。そして花不棄が陳煜にかくまわれていると踏み、皇帝にある策を献上する。その頃、陳煜の身を案じる不棄は隠れ家を抜け出して都へと向かうが…。
第46話 莫府の悲劇
莫若菲に助けられた花不棄は、陳煜と朱八華の助命を皇帝に嘆願するため、莫家の馬車で都入りすることに。その道中、東方炻が謀反を起こしたという情報を耳にした不棄たちは、警戒しながらも莫府に到着。しかし、飛雲堡と姻戚関係にある莫府には、皇帝から取り潰しの命が下されていた。官兵の襲撃に隠し部屋へと逃げ込む不棄たちだったが、莫夫人と剣声(けんせい)が相次いで命を落とす。何とか逃げ出した不棄と莫若菲が、追っ手を逃れるために取った作戦は…。
第47話 報われない愛のために
逆賊の軍営に囚われている花不棄は、陳煜たちを救おうと逃亡を試みる。しかし取り押さえられた拍子に負傷してしまい、手当てをしに来た林丹沙と再会。雲琅の心がいまだ不棄にあると知り、深く悲しむ林丹沙だったが、愛する人のため不棄の逃亡を手助けする。ところがそこに蕭九鳳が現れ、聖珠と地図の在りかを白状しない不棄に毒薬を飲ませる。東方炻は毒消しを求めて祖父と対立する。一方、皇宮では柳青蕪も愛のために決意を固め…。
第48話 誰がために膝を折る
賊軍との決戦を前に陳煜は逃亡した。皇帝は見せしめとして朱八華の亡骸を城壁にさらすと、今度は偽者の花不棄で東方炻をおびき出し、賊軍を一網打尽にしようともくろむ。小蝦は偽者だと気づかず不棄の救出を試みるも、矢を受けて重傷を負う。一方、東方炻と対峙した陳煜は、東方炻を前に勝算がないと見た配下らに投降を進言される。陳煜は断固として拒絶するが、不棄と元崇が軍営にいることをほのめかされ投降を決意。不棄との再会を許されるが…。
第49話 秘策
東方炻に降(くだ)った陳煜は花不棄に罵倒されるが、この投降は叛徒(はんと)たちの内情を探るために陳煜が皇帝に進言した一計だった。陳煜を完全に信用していない東方炻は、難所である徐州(じょしゅう)を守る陳煜の叔父・常寛(じょうかん)に、投降の説得をするよう陳煜に命じる。一方、柳青蕪は皇帝の指示どおり、陳煜と連携して叛徒の裏をかくべく徐州へ向かっていた。その柳青蕪のもとへ東方炻の命を帯びた柳青妍が訪れる。だが柳青妍は任務を遂行せず、柳明月の真の姿を告げ…。
第50話 胸に秘めた想い
陳煜と常寛の策略にはまり、感染症で多くの戦力を失った東方炻は、常寛の挙兵により徐州を追われることとなる。花不棄を連れて逃げる東方炻は、その夜、つらい胸の内を彼女に打ち明けるが、翌朝、病に倒れてしまう。置いて逃げるわけにもいかず、看病する不棄。一方、蕭九鳳は、ついに碧羅天の地図と聖珠を手に入れる。回復した東方炻は、不棄たちとともに廃墟の村にたどり着くが、莫若菲は東方炻への不満を募らせていくのだった。
第51話(最終話) 予言の行方
賊軍は大敗を喫した。東方炻は追い詰められた蕭九鳳によって花不棄が天に捧げられるのを阻止すべく、孫の嫁には手をかけないだろうと密かに婚儀を挙げようとする。最初は拒んだ不棄だったが、陳煜の真意を知り、戦を終わらせるために求婚を受ける。しかし婚儀のさなか蕭九鳳が現れ、その場は激しい斬り合いで血に染まる。蕭九鳳は不棄を連れ去り、碧羅天の地を目指す。不棄を取り戻すため、陳煜と東方炻も後を追って伝説の地に向かい…。