あらすじ
空桑(くうそう)、泉先(せんせん)、滄流(そうりゅう)の3つの国が覇権を争う雲荒(うんこう)と呼ばれる世界では、空桑が泉先を征服し、碧落海(へきらくかい)に住んでいた鮫人(こうじん)は流浪の民となる。それから7千年後。空桑で虐げられる仲間を救おうとした鮫人の蘇摹(そぼ)は、青王の企みによって、空桑の太子・真嵐(しんらん)に嫁ぐため鏡塔で儀礼を学んでいた白瓔(はくえい)の前に現れる。彼女の命を狙うよう脅されていた蘇摹だったが逆に命を助け、2人は次第に惹かれあっていく。しかし、太子妃にならなければいけない運命だった白瓔は蘇摹の前で鏡塔から身を投げ、さらにそれが原因で空桑は滄流に征服されてしまう。それから100年後、海皇となる運命を背負い故郷の碧落海を取り戻し泉先の民を救う旅をしていた蘇摹の前に、死んだと思っていた白瓔が現れて…。
第1話 泉先の風雲児 現れる
7千年前、空桑(くうそう)に滅ぼされ、故郷の碧落(へきらく)海を追われた泉先(せんせん)の鮫人(こうじん)。今、鮫人の男、蘇摹(そぼ)は難民とともに雲荒(うんこう)を目指していた。難民の少女、那笙(なしょう)がその未来を占うと、意外な結果が出て、蘇摹の脳裏に100年前の悲しい記憶が蘇る。100年前、人身売買されていた鮫人を助けるために、蘇摹は星瀚雲庭(せいかんうんてい)という店に忍び込み、そこで白瓔(はくえい)という空桑の郡主と出会う。さらに空桑の王子、真嵐(しんらん)が現れることにより、3人の運命は絡み合って動き出す。
第2話 雪桜花が咲く頃を夢見て
真嵐が空桑の太子として認められ、白瓔は太子妃に立てられた。蘇摹は如意(にょい)から、あなたは海皇だと打ち明けられる。三人三様の思いを抱えながら、彼らは自分の運命を受け入れるしかなかった。蘇摹は鏡(きょう)湖の結界を破り、鮫人たちを鏡湖に逃がすが、青王に捕まってしまう。青王は鮫人を人質に取り、蘇摹を鏡塔の太子妃殿に送り込んで、ある計画を実行させようとしていた。敵国の滄流(そうりゅう)が攻めてきたことを知り、真嵐と白瓔は国を守りたいと焦るが…。
第3話 雪桜花が咲く頃を夢見て
青王は、蘇摹を鏡塔に送り込むばかりか、白麟(はくりん)にも酒を持たせて白瓔に会いに行かせた。白瓔は、鏡塔にいる蘇摹にとまどいつつも、その目を気にかけて医者に診せる。蘇摹の目は遂に治り、2人は互いを気遣いながら心を通わせていく。ある夜、酒に酔った白瓔は、蘇摹に心の内をぶちまける。一方、青王は滄流五師の1人、師彭(しほう)に通じていて何か企んでいた。西京(せいきょう)将軍から兵糧が補給されないと聞いた真嵐は、殿中で青王を問い詰めるが…。
第4話 禁断の技 血契(けっけい)
目が治った蘇摹は、危害を加えろと命じられた相手が白瓔だと知る。蘇摹は白瓔の暗殺を拒否し、他の手段で鮫人を助け出そうと思案していた。蔵書閣で蘇摹と再会した真嵐は、鮫人に興味を抱き、大司命に泉先の歴史を尋ねる。そこへ西京将軍から曄(よう)城の窮状を報告され、青王への怒りをつのらせる。太子の自覚が芽生えた真嵐に、空桑王は安堵を覚えるのだった。蘇摹は鏡塔を下り、人質の仲間を救い出すため、青王に「血契」という禁断の技を使う。
第5話 悲しき選択と結末
勝手に鏡塔を去った蘇摹と、許可なく鏡塔を抜け出した白瓔は、花神節(かしんせつ)の祭りで出くわす。すぐに追手が来て、2人は捕らえられてしまう。白瓔の封印が解かれていることに大司命は驚く。誰かを心から愛すると、封印は自然と解かれるのだ。白瓔には后土(こうど)の力を継承できず、空桑を守れなくなった。責任を感じた白瓔は、鏡塔から身投げする。その後、曄城が滄流軍に破られ、真嵐の皇天(こうてん)と帝王の力までも封印されてしまい、民は無色(むしき)城に隠れるが…。
第6話 指輪に選ばれし主(あるじ)
鷙者(ししゃ)の命を受け、聖女羽燭(うしょく)は滄流五師に異変を告げる。五師は天闕(てんけつ)を越える者を不吉として抹殺を指示する。その頃、天闕をさまよう那笙は足を滑らせて洞窟に落ちる。そこで不思議な指輪を見つけた那笙が思わず手を伸ばすと、指輪は自然に那笙の手にはまる。驚いた那笙の前に、真嵐が姿を現す。一方、空桑を救う者を捜して天闕山に入った白瓔は、多数の滄流兵に囲まれる。彼女の危機を救ったのは、放浪の末に雲荒に帰ってきた蘇摹であった。
第7話 太子 真嵐(しんらん)の目覚め
天廟(てんびょう)に隠れていた白瓔を蘇摹と那笙が見つける。那笙の皇天と白瓔の后土の力で、真嵐は遂に実体化した。蘇摹に助太刀するため戦場に駆けつけた白瓔は、光剣を使う羽幻(うげん)を見かけ、同門ではないかと不安を覚える。白瓔は蘇摹に別れを切り出した。100年前の過ちを償いたい、2人の出会いは間違いだったと話す白瓔に、蘇摹は傷つきながらも去った。苦しい心中を隠し、蘇摹は泉先を第一に考えようと決心する。そんな中、泉先では瀟(しょう)が行方不明に…。
第8話 桃源に集う者たち
桃源郡にやってきた那笙は、あやうく人買いに売られそうになる。そこへ蘇摹が現れ、那笙を救う。蘇摹は如意が経営する賭場を訪れ、この100年間の鮫人の状況を知る。一方、羽幻の命を狙った瀟は、炎汐(えんせき)をおびき寄せるおとりに使われる。炎汐はなんとか逃走するが、手傷を負う。瀟は南昭(なんしょう)に殺されそうになるが、羽幻が自分の部下にすると言って連れ去る。毒矢に貫かれた炎汐だったが、瀕死の彼を救ったのは那笙が持つ雪罌子(せつおうし)であった。
第9話 愛と執着と妄執
西京と汀(てい)は桃源郡に着き、如意の営む賭場で酒を買う。蘇摹を見かけた西京は怒りに震え決闘をしかけるが、如意に止められる。深手の炎汐の手当てをするため蘇摹も西京の相手をしない。短時間で炎汐を治してしまう蘇摹の不思議な術に、如意は驚くと同時に不安を覚えた。賭場で門前払いされる那笙を見かけ、白瓔も蘇摹を捜すため、一緒に中に入る。だが、最初に再会したのは西京だった。酒におぼれる西京を見て、白瓔は国の大事を説くが…。
第10話 秘密兵器・風隼(ふうしゅん)
賭場の隠し部屋に潜む蘇摹と白瓔。羽幻が発見する寸前、高舜昭(こうしゅんしょう)総督が駆けつけ、滄流兵は引き上げる。業を煮やした羽幻は、自らが率いて古代兵器・風隼(ふうしゅん)の部隊を発進させることを決意する。風隼は鮫人の法力で操縦する飛行機械で、羽幻に救われた瀟が滄流軍の一員として出撃することになる。一方、真嵐は西京将軍と再会、皆で賭場から脱出しようとする。だが、滄流兵の追撃に阻まれ、乱闘のさなか、日光に当たった白瓔は倒れてしまう。
第11話 桃源郡の死闘
蘇摹は倒れた白瓔を回復させようと法力を分け与えるが、白瓔は剣聖門の秘訣“寂(せき)”を使ってさらに深い眠りについてしまう。このままでは精神まで壊れると案じた蘇摹は、雪桜花の香り袋で意識を取り戻させる。一方、街では滄流の羽幻率いる風隼の軍勢が、那笙の持つ皇天を求めて押し寄せていた。桃源郡の街は破壊され、那笙と炎汐は追い詰められる。蘇摹は如意から村への避難を勧められるが、海皇として泉先の民を救うため、軍勢に立ち向かう。
第12話 再起する将軍
高舜昭の機転で桃源郡を脱出した一行は、泉先の結界が張られた桃源村に落ち着く。汀の葬送を行ったその夜、西京は蘇摹に、鮫人が碧落海に帰れるよう尽力することを誓う。真嵐もまた、立ち直った西京の姿に心を強くする。一方、海皇帰還を聞いて桃源村に駆けつけた泉先軍の戦士、寧涼(ねいりょう)らは、空桑人が村にいることを知り、蘇摹が昔の過ちを繰り返すのではと不安を抱く。その頃、滄流に捕らわれた瀟は、羽幻の裏切りを証言せよと迫られていた。
第13話 駆け引きと猜疑(さいぎ)心
炎汐の傷を手当てしようとする那笙に、寧涼は敵意を抱き、追い払おうとする。炎汐が味方だと説明しても、ますます不信をつのらせ、那笙に惚れているのではないかと疑う。そんな中、真嵐は蘇摹に手を結ぼうと持ちかける。泉先と空桑が故郷に帰るには、互いが協力するのが一番だと説得するが、蘇摹は空桑の裏切りを恐れて返事を保留にした。一方、滄流では風隼の大群が桃源郡を壊滅させたことの責任を負って羽幻が投獄されてしまい…。
第14話 空桑と泉先の同盟
空桑との協力をためらう蘇摹を説得するため、白瓔は蘇摹の部屋へ。蘇摹は白瓔が自分を気遣ってくれることを知り、空桑に協力することを決意する。それは、一時的な協力ではなく、滄流を打倒するための軍事同盟であった。そこへ、飛廉(ひれん)率いる風隼部隊が空襲を仕掛けてくる。泉先の結界を難なく破り、投降を迫る飛廉。鮫人が逃走するための水路も羽幻の法術により封鎖されていた。絶体絶命の中、真嵐は蘇摹の法力を借りて遂に脱出路を開く。
第15話 皇天の力と六合の封印
溟火(めいか)から、鬼神淵(きしんえん)の結界を破るには皇天の力が必要だと聞いた蘇摹は、そこに空桑の帝王の力が働いていることに気づく。一方、羽燭は鷙者が空桑の戦歌を口ずさむことを不思議に思い、真嵐と師彭は羽幻が空桑の法術を使えることに不審を抱く。空桑と同盟を結ぶことに、泉先の長老や戦士たちは不安を感じ、再び裏切られることを恐れていた。そこへ滄流が同盟を結びたいと、蘇摹を宴に招く知らせが。泉先の長老たちの胸は、ざわつき始める。
第16話 策謀の行方
師彭に招かれて滄流の軍営を訪れた蘇摹と炎汐。蘇摹には間者である湘(しょう)と接触する狙いがあった。蘇摹は師彭に、皇天と后土を一緒に引き渡すと約束をして帰ろうとする。だが、それを怪しんだ羽幻は、鮫人を閉じ込める金色陣網(こんじきじんもう)を発動し、蘇摹を捕らえようとする。それは、古代空桑の王族のみに伝わる秘術であった。危機一髪、蘇摹を救うべく白瓔が滄流軍営に躍り込む。談判が決裂した滄流は、人質を盾に那笙を渡すよう迫ってくる。
第17話 大切な仲間の死
滄流の殺戮を恐れる泉先の長老たちは、那笙を引き渡したいが、炎汐に反対される。炎汐に会いたくて仕方ない那笙は、鏡湖へ向かう途中で虞(ぐ)長老と出くわす。虞長老は那笙を昏倒させ、師彭との待ち合わせ場所へ向かう。だが、来ていたのは羽幻で、泉先の一行は滄流軍に包囲されてしまう。危機一髪のところで、空桑の六王が助勢に現れたが、今度は六王が滄流の法術に体の自由を奪われてしまう。この時、黒い影のような龍が空を駆け抜け…。
第18話 傷ついた者たち
裂の術の反動で昏睡状態に陥った蘇摹は、溟火の法力でようやく回復する。虞長老と寒洲(かんしゅう)の死を己の過ちと感じる寧涼は、那笙を命懸けで守ると誓う。霊識の損傷から回復した白瓔は、真嵐とともに泉先本営を訪れるが、蘇摹は彼らを避ける態度をとる。一方、滄流では、風隼庫焼失と軍営の損害の責を負って、師彭の兵権が剥奪される。鷙者の治療によって血契で受けた傷から立ち直った羽幻だが、そのために、師彭に忠誠を疑われることになる。
第19話 泡の中の告白
深海の鬼神淵に行くため、那笙は気泡を身に纏う潜水術を身につけ、白瓔に披露する。音を遮断する泡に包まれた白瓔は、蘇摹が訪ねて来たのに気づかないまま胸の内を吐露してしまう。それを聞いた蘇摹は、陽光に弱い白瓔を守るための避光珠(ひこうじゅ)を作る決意を固める。避光珠は自らの霊識を移して作る危険な玉だった。そんな時、無色城の水鏡に不気味な男の目が映し出される。鏡塔の天廟にある水鏡から、真嵐たちをのぞき見る男の正体とは…。
第20話 花神節の夜 100年ぶりの朝日
水鏡の男を探るため、真嵐と西京は共に鏡塔へ。真嵐が天廟で男と会っている間に、西京が蔵書閣に忍び込んで玄黄経(げんこうけい)の下巻を探す手はずだ。那笙のほうは、鏡城で花神節が行われると知って、炎汐と白瓔を誘って遊びに行く。那笙たちと別れた白瓔は、蘇摹が来ることを期待している自分に気づく。炎汐のはからいで花神節に訪れた蘇摹は白瓔と再会し、日の出を見ようと提案する。日光に弱い白瓔は断ろうとするが、蘇摹には考えがあるようで…。
第21話 太子の決意
真嵐と蘇摹は、あらためて九屹(きゅうきつ)山の地理を確認し、出発の日取りを決める。九屹を前にした一行は、二手に分かれることにし、辟水珠(へきすいじゅ)のある左峰には皇天を持つ那笙と真嵐、西京が、闢天(へきてん)剣の眠る右峰には蘇摹と白瓔が向かうこととなる。蘇摹たちは途中、酒楼に立ち寄る。そこは鮫人の天香(てんこう)夫人が営む秘密連絡所であった。その頃、左峰に向かっていた真嵐は、西京に白瓔への思慕を告白し、同時に、空桑の太子として恋よりも民を選ぶ決意を述べる。
第22話 死が支配する森
那笙は法術に失敗して爆発を起こし、死んだふりをして炎汐を心配させる。たちの悪い冗談に本気で怒る炎汐だが、互いの想いを確かめ合うことになった。天香夫人のふるまう酒に酔った白瓔は、蘇摹に「いつか私が消えても悲しまないで」と吐露する。酒楼で休んだ2人は九屹山・右峰の迷霧(めいむ)の森へと足を踏み入れる。その場所は全てが命を持たない死の森だった。一方、鏡塔では黒衣の老人が羽幻に力を与え、海皇抹殺を命じていた。
第23話 魔物の正体
白薇(はくび)の衣冠塚(いかんちょう)を訪ねた真嵐たち。そこに残された遺品から真嵐は、琅玕(ろうかん)と白薇、海皇純煌(じゅんこう)の過去を読み取る。ついで、棺に残された鳳冠を調べるが、辟水珠は何者かに持ち去られていた。真嵐一行は、塚を守る侍女の離珠(りじゅ)に九屹王宮への案内を頼む。だが、王宮に先に着いたのは鷙者の命を受けた羽幻であった。羽幻は九屹の兵に、侵入者を殺すよう命ずる。その頃、右峰へ向かった蘇摹と白瓔は、迷霧の森の中で植物を操る莵蘿(とら)に襲われていた。
第24話 姉妹の再会
真嵐たちは離珠の案内で九屹王宮にたどり着く。九屹王青駿(せいしゅん)は、青氏一族が青辰(せいしん)が犯した罪に苦しめられていることを語る。真嵐は太子の身分を明かし、星尊(せいそん)王の墓へ案内してもらえることに。一方、迷霧の森で白麟と再会した蘇摹と白瓔。白麟は、姉が自分よりも蘇摹を思いやる姿を目の当たりにする。羽幻の応援に九屹に来た飛廉は天香酒楼を訪れる。蘇摹たちの邪魔をさせたくない天香と炎汐は、飛廉が持っている師朗(しろう)の令牌を奪おうと画策する。
第25話 闢天(へきてん)剣の記憶と殺意
先王谷にたどり着いた蘇摹と白瓔を、羽幻が待ち受けていた。羽幻は霊識を使って発動する火陣を繰り出す。蘇摹は燃え盛る炎にさいなまれるが、白瓔だけが白麟に助けられる。蘇摹を憎む白麟は、羽幻と通じていたのだ。心を痛めた白瓔は、白麟を人間に戻すことを約束する。莵蘿の長に助けられ、身の上を聞かされた蘇摹は、哀れな莵蘿たちを必ず碧落海に帰すと誓い、墜泪(ついるい)碑へ歩を進める。だが、そこには仕掛けが施されていて…。
第26話 友の屍を越えて
真嵐たちは、星尊王陵墓への入り口にある生死(せいし)亭にたどり着く。生死亭の外は弱水とその蒸気の霧に満たされていた。一方、蘇摹と白瓔が地下道を抜けた先にも、うり二つの生死亭があった。2つの生死亭では仕掛けが発動し、互いに向けて矢が放たれる。危うく同士討ちを回避した真嵐と蘇摹。闢天剣の力で霧は晴れたが、先へは進めない。2つの生死亭は、一方の死により、一方の活路が開く残酷な罠だった。追い詰められた蘇摹は最後の決断を下す。
第27話 生きていたあの男
生死亭を抜けた真嵐一行。那笙が途中でさらわれ、真嵐たちが追いかけると星尊王の棺にたどり着く。那笙が気絶している間に皇天を使われ、棺は開かれた後だった。生死亭で犠牲になったかに思われた蘇摹や白瓔も合流する。そこで一行は、死んだはずの青辰の声を聞く。青辰は陵墓のからくりを起動させ、一行を生き埋めにしようと企む。道案内をしてくれていた離珠も、実は利用されていただけで脱出する方法を知らず、一行は危機に陥る。
第28話 民の目覚めと六王の命
逃走する青辰と羽幻を追う蘇摹は、闢天剣の力で彼らを圧倒する。青辰の持つ六合の封印を蘇摹が破壊すると、皇天の力と反応し、九屹山を覆う結界が消える。真嵐の力も復活し、迫っていた青氏の兵たちも真嵐を太子と認める。追い詰められた青辰は、蘇摹に無色城が開城すれば、その代償に白瓔ら六王は灰と化すことを告げる。己が利用されたと思った蘇摹は、青辰を殺し姿を消す。空桑が復活すれば六王が死ぬことは、真嵐にも初耳であった。
第29話 それぞれの別れ
白瓔が灰と化すと聞いて消沈した真嵐だが、西京の強い励ましで太子の使命を全うしようと再び意を強くする。炎汐は飛廉を人質に取るが、命を取らなかった代わりに那笙だけは殺すなと約束させる。隙を突いて逃げ出した飛廉だが、約束どおり那笙たちを逃がそうとして南昭に疑いをかけられる。白瓔は蘇摹の前に姿を見せるも、いずれ来る消滅の苦しみを案じて別れを告げる。単独行動となった白瓔は、羽幻の罠にかかり鏡塔に送られてしまう。
第30話 避光珠に込められた想い
鏡塔に入った白瓔は、初めて鷙者と対峙する。一方、昏睡状態の蘇摹の霊識は、避光珠の中で目覚める。白瓔と蘇摹は鷙者の正体を探ろうとし、鷙者は白瓔に、避光珠は蘇摹が霊識を半分注ぎ込んで作ったものだと明かす。さらに、自分と白薇の出会いと別れを話し、鷙者こそが星尊王・琅玕だと白瓔は確信する。7千年間の苦しみを訴える琅玕を見て、心を惑わされそうになった白瓔だが、駆けつけた蘇摹に助けられ、共に泉先の本営に戻る。
第31話 深海の試練
倒れた真嵐を救うため、那笙は鬼神淵の底に眠る封印を解くことを決意する。炎汐と2人で海に潜った那笙。そこには貝の化け物、蜃(しん)が待ち構えていた。機転を利かせて蜃の口をふさぎ、六合の封印を手に入れた2人。皇天の力で封印を解くと、昏睡する真嵐に帝王の力が戻り、息を吹き返す。だが蜃の攻撃により、那笙は辟水珠を失ってしまう。溺れる那笙を救うため、炎汐は彼女に口づけを。その時、炎汐の体には大きな変化が起きようとしていた。
第32話 7千年前の因縁と恨み
鷙者の正体は星尊王で間違いないと確信した蘇摹と真嵐は、次の計画を進めようとしていた。蘇摹は白瓔に、真嵐と共に鷙者の狙いを調べるよう頼み、自分は龍神の封印を解くために困龍淵(こんりゅうえん)へ赴こうとしていた。しかし、白瓔が気づき、蘇摹の後を追って、2人は困龍淵へ向かう。真嵐は、白薇の肖像画に残された遺言らしき言葉から、琅玕と白薇の関係に疑問を持つ。後世に伝わった歴史とは異なる複雑な因縁が、琅玕と白薇、純煌にはあったようだ。
第33話 過去を呼ぶ霧
羽幻は鷙者に託された猛毒を川に流す。瀟が流した音珠(おんじゅ)は届かず、川に入った泉先の戦士は次々に倒れていく。毒消しを手に入れるため、滄流軍営に向かった炎汐と那笙の前に瀟が現れる。彼らは命を懸けた芝居を打ち、羽幻から薬を盗もうとする。手を貸したのは、卑怯な手を憎む飛廉であった。一方、龍神を解放するため、結界を破って困龍淵に入った蘇摹と白瓔は、怪しい霧の中で幻を見る。それは7千年前の白薇と純煌、琅玕の運命であった。
第34話 すれ違う心
内通を疑われた飛廉を助けるために、非道な毒を使って泉先を罠にかけた羽幻だったが、その残虐さに飛廉の心は離れていく。羽幻は1人、困龍淵へ向かう。一方、困龍淵で7千年前の幻を見ている蘇摹と白瓔。船が難破して鮫人に助けられた白薇は、純煌に手厚く保護され親交を深めていく。白薇に恋心を抱く純煌は辟水珠を贈る。その様子は蘇摹が白瓔に避光珠を贈った時と酷似しており、自分たちの運命を暗示しているかのようだった。
第35話 魔に みいられた心
雅燃(がねん)は琅玕の毒殺を図るが失敗。白薇が、琅玕が飲むはずだった毒酒を口にして意識不明になる。純煌への憎しみと嫉妬をつのらせ、泉先を滅ぼしたかった琅玕は、これを口実に遂に軍を率いて碧落海に侵攻する。骨が入れ替わる時期にある龍神の庇護がない泉先は、ひとたまりもなく倒された。琅玕が純煌にとどめを刺そうとした時、病身の白薇が駆けつける。説得に耳を貸さず、琅玕が純煌に剣を突き出した時、白薇が純煌の前に飛び出し…。
第36話 よみがえった龍神
闢天剣と后土の指輪の力で困龍淵の封印は解かれ、遂に泉先の龍神が解放される。宙を舞う龍神に飛び乗り、龍神の力を自らの体に取り込もうとする蘇摹。だがかつて修練した鏡裂の術が、龍神の力を阻む。その間に、白瓔に忍び寄った蘇諾(そだく)が闢天剣で彼女を襲う。瀕死の白瓔は、“寂”の訣により五韻六覚を閉じ昏睡する。蘇摹は、五韻六覚を強引に開き法力を流し込む。その頃、傷ついた蘇諾は、負傷兵と共に泉先本営に運ばれていた。
第37話 忘れ去られた愛の記憶
炎汐を救出するため、真嵐と西京は桃源郡へ赴き、共に戦ってほしいと高舜昭を説得する。高舜昭は承諾し、桃源郡は滄流に反旗を翻す。滄流の目が桃源郡に向いている隙に、寧涼と湘は炎汐を救出するが、寧涼が命を落としてしまう。泉先の本営では、白瓔が意識を取り戻したが、蘇摹との記憶をほぼ失っていた。蘇摹は動揺するが、焦らず受け入れようとする。白瓔を諦めていた真嵐も、好機があるならと心が揺れてしまう。
第38話 兄弟の悲しき絆
蘇摹は、自分との記憶を失った白瓔を守るため、身を引く決意をする。その頃、長老たちは、龍神を解放しても一向に動かない蘇摹に、疑念を抱き始めていた。やがて蘇諾が氷室に仕掛けた毒が、着実に蘇摹をむしばんでいく。死んだはずの弟、蘇諾の突然の出現に蘇摹は驚愕するが、蘇諾は兄の持つものを全て奪うべく、攻撃を仕掛けてきた。毒の影響で裂の術を封じられた蘇摹はあえなく蘇諾に倒される。蘇諾は蘇摹に化け、泉先支配に踏み出す。
第39話 古(いにしえ)の法術
飛廉にかくまわれた羽幻だが、師彭に感づかれ姿をくらます。一方、白瓔の消滅を阻止したい蘇摹は、生死を逆転させる法術を思い出す。幼い頃朱顔(しゅがん)から聞いたその法術は術者の命と引換えにする危険な術で、法術が記された手記も破られていた。そんな時、白麟が水辺の隠れ家を訪れる。白瓔の消滅を阻止する方法について何か知っているようで、蘇摹に取り引きを持ちかける。しかし、白麟が服用している薬には秘密があり…。
第40話 花神節の夜 白麟(はくりん)の祈り
白麟は弱水が飲めなくなり、生きた動物の摂取も拒んできたため、命が尽きようとしていた。最後まで人間であろうとした姿に、蘇摹は心を打たれる。白麟も蘇摹に心を開き、遂に星魂海誓(せいこんかいせい)の術を教える。白麟の死期が近いことが白瓔にも知られ、共に誕生日を過ごせるよう皆で花神節を行おうと蘇摹は提案する。花神節の夜、白麟は、白瓔と蘇摹の永遠の幸せを祈りながら逝った。大切な人を失う痛みを感じた白瓔は、思い切って蘇摹を呼び出す。
第41話 暴君の罠
羽幻の光剣による無色城結界への攻撃を退けた真嵐だったが、水鏡の支配を鷙者に奪われる。鷙者は、水鏡を通じ、真嵐の玄黄経に運命を変える法、六星逆転陣(りくせいぎゃくてんじん)の情報を与える。六王の命を救う方法を見いだした真嵐は、蘇摹に伝えに行くも、蘇摹が玄黄経から鷙者の気を感じ取り、六星逆転陣は法力を奪う罠だったと判明する。その罠を逆手に取ることを思いついた2人は、六王に知らせず、あえて六星逆転陣を実行する。その作戦とは…。
第42話 滄流の新たな支配者
滄流に操られている炎汐は、皇天の主である那笙の身柄を師彭に差し出す。牢へ連行されるその時、皇天の力で炎汐は我に返るが、抵抗むなしく囚われてしまう。一方、羽幻は鷙者と取り引きをし、五師の上に立たせることを条件に那笙を連れてくることを約束する。羽幻にまんまと那笙を奪われた師彭は、羽幻を殺すよう命じる。那笙と炎汐が鷙者の手に落ちたと知った蘇摹たちは、鏡塔へ踏み込むことを決意する。龍神の力で強化した闢天剣を携えて。
第43話 最後の決戦(最終話)
鷙者の力を得た羽幻は、真嵐と白瓔をあっけなく退ける。羽幻と合体した鷙者と、龍神の力全てを使い激闘を繰り広げる蘇摹。真嵐と白瓔は、皇天・后土の力を発動。これを龍神の力に加え、ようやく鷙者の封印に成功する。彼らが運命を変えたため、六王消滅の危機もなくなる。真嵐が無色城を開くと、空桑の10万の民も復活する。また、蘇摹も泉先の封印を解き、鮫人を故郷・碧落海へと導く。だが、法力を使い果たした蘇摹に死が迫っていた。