あらすじ
大東(たいとう)国が覇権を握り、その下に6州が割拠する時代。江湖には隠泉水榭(いんせんすいしゃ)の榭主・黒豊息(こくほうしょく)と天霜門(てんそうもん)の女侠・白風夕(はくほうせき)という無敵の強者がいた。2人はこの10年武勇を競い合い、“白風夕の居る所、黒豊息あり”と揶揄されるほどの腐れ縁のライバル同士であった。ある日、大東国が皇権の象徴として持つ令牌・玄極令(げんきょくれい)が行方不明となり、それを発端に6州による天下をめぐる覇権争いが勃発。民と正義を重んじる黒豊息と白風夕は、乱世を治めるべくともに協力し合い襲い来る強敵に立ち向かう。実はそれぞれ高貴な身分を隠しながらも、生死をかけた戦いの中で互いへの気持ちに気づき、次第に惹かれ合っていく2人だが…!?
第1話
皇室と6つの州の7つの勢力に分かれている大東(たいとう)国は、権力の象徴である令牌(れいはい)・玄極令(げんきょくれい)を使い、皇帝が6州をまとめていた。ある日、玄極令が突如として皇帝のもとから消えてしまい、これを手に入れた冀(き)州の将軍・燕瀛洲(えんえいしゅう)は、各州の勢力から追われるように。一方、江湖(こうこ)には、長年優劣を競い合っている2人の強者(つわもの)、隠泉水榭(いんせんすいしゃ)の榭主・黒豊息(こくほうしょく)と天霜門(てんそうもん)の女侠(じょきょう)・白風夕(はくほうせき)がいた。白風夕は山の中で大勢の追っ手に囲まれている燕瀛洲を間一髪のところで救うが…。
第2話 腐れ縁の2人
白風夕は生前に燕瀛洲と交わした約束を必ず果たすと墓前に誓い、黒豊息には宣(せん)山での一部始終を知っていると告げる。燕瀛洲を救う機会があったにもかかわらず、見殺しにしたと黒豊息を非難するが、黒豊息は冷静な返答をしつつも、体内の毒を取り除くために再び韓(かん)家に解毒薬の佛心丹(ふっしんたん)を分けてもらうほうがいいと白風夕に助言をする。ちょうどその頃、韓家が一族皆殺しの目に遭い、当主の還暦祝いを邪魔した白風夕に疑惑の目が向けられていた。
第3話 天下一の若君
祁(き)家に協力を求めるはずが、その子息・祁雲(きうん)を怒らせてしまった黒豊息。白風夕は黒豊息の真意が分からず戸惑う。祁雲から事の一部始終を聞いた祁家の当主・祁延年(きえんねん)は、すぐさま祁雲を連れて黒豊息を訪ね、息子の非礼を謝罪する。そして財産の半分を差し出すことを条件に、宿敵の尚(しょう)家から塩の専売許可証を奪取してほしいと懇願。断魂門(だんこんもん)と尚家の関係を疑う黒豊息は白風夕を伴って、当主の尚也(しょうや)が毎月3日に現れるという妓楼(ぎろう)へ向かうが…。
第4話 和議申し入れ
白風夕に身分を見破られた冀州の世子・皇朝(こうちょう)は腑(ふ)に落ちないものの、白風夕と韓樸(かんぼく)に食事をふるまう。その頃、玉無縁(ぎょくむえん)は商(しょう)州軍の総帥・范士季(はんしき)に面会し、5州に商州攻撃の口実を与えぬよう撤兵を説得。ところが、和議を受け入れて都に上奏文を送った范将軍が敵前逃亡の罪に問われ、洛(らく)城も再び商州軍に包囲される。事情を察知した玉無縁は洛城と存亡をともにすることを覚悟して指揮を執ることに。危機一髪のところ、黒豊息が突如、商州軍に現れ…。
第5話 王家の宿命
雍(よう)州王は第二王子・豊蘭息(ほうらんしょく)の病状を確かめるため、第三王子・豊莒(ほうきょ)とともに温泉宮を訪ねる。太医は豊蘭息の脈を取り、過労による持病の再発と診断。不審に思った雍州王に問いただされた豊蘭息は、無断外出した罪を認めて理由を自白する。その頃、断魂門は他の門派を次々と襲撃。天霜門は筆頭門派として皆の恨みを晴らそうと、その行方を追う。そんな中、雍州では恒例の秋の狩りの日を迎える。吏(り)部尚書(しょうしょ)の鳳棲梧(ほうせいご)は、狩りに興じる3人の王子に目を向けるが…。
第6話
雍州王宮で行われた秋の狩り。鳳棲梧は数匹の狼に囲まれるが、危ないところを豊蘭息に救われた。病弱なはずの豊蘭息の見事な武芸に鳳棲梧は疑問を抱き、密かに隠泉水榭に文(ふみ)を送り、豊蘭息の正体を探る。豊蘭息の侍従・任穿雨(じんせんう)は豊蘭息が病弱なふりをすることに疑問を持ち、侍女・環娘(かんじょう)に理由を尋ねる。また江湖では断魂門による襲撃が続いていた。冀州の馬(ば)家が次の標的だと気づいた白風夕は、天霜門の仲間たちとともに馬家へ向かい…。
第7話 競い合い
初めて顔を合わせた白風夕と玉無縁。玉無縁は白風夕の正直でおおらかな人柄に感服し、白風夕も玉無縁の気概に一目置く。意気投合した2人に、黒豊息は心中穏やかではない。翌日、白風夕は玉無縁を天支(てんし)山に誘うが、2人の仲を心配する黒豊息がこっそりあとを追う。そんな中、雍州王の命で息子3人がそれぞれ吏部、工(こう)部、戸(こ)部に配属される。鳳棲梧は豊蘭息を訪ねて跡目争いに油断は禁物と進言。豊莒は王命と偽り、工部の帳簿検査を行うが…。
第8話 手作りの麺
河川改修に赴く途中、豊莒の配下に謀られた豊蘭息。荒れ狂う廉(れん)江の中に放り出されるが、偶然、水路を使っていた白風夕ら一行に助けられる。体が冷え切って寒いと訴える黒豊息を、白風夕がひと晩中抱きしめて温める。雍州の王宮では、豊蘭息が行方不明になり、第一王子・豊萇(ほうちょう)に疑いの目が向けられていた。豊蘭息の乗る船に穴をあけたのが、豊萇の配下だったのだ。潔白を訴える豊萇に対し、雍州王は7日以内に豊蘭息を見つけ出すように命じる。
第9話 花の海
船旅の途中、白風夕の師妹(しまい)・白琅華(はくろうか)が体調を崩してしまう。黒豊息は、医者と住まいを手配するから雍州へ寄っていくようにと白風夕に勧め、天霜門の一行は雍州で下船する。一方、雍州王は豊莒の上奏により、豊蘭息の無事を祈って祈祷(きとう)を行うことを決める。だがその祈祷の最中、豊蘭息の亡骸(なきがら)が見つかったとの知らせが入る。運ばれて来た亡骸を見て雍州王は肩を落とすが、そこに雍州都督(ととく)の任如松(じんじょしょう)が現れ「二殿下が屋敷へ戻った」と報告する。
第10話 意中の人
雍州王は豊蘭息に王妃・百里(ひゃくり)氏を乗せた馬車の御者を命じ、仲睦まじい親子の姿を天下に知らしめようとする。すると鳳棲梧は百里氏の護衛にあたる孫明揚(そんめいよう)らの職務怠慢を訴え、豊蘭息に助け船を出す。王宮に戻るなり、雍州王は兄の殺害を企てる息子の豊莒を戒めるよう、百里氏を厳しく諭す。その頃、宗主の代理を任された白風夕は弟子を養うため、黒豊息に言われたとおり如玉軒(じょぎょくけん)を訪ねて金を工面するが、偶然にも発作を起こして苦しむ豊萇を目撃し…。
第11話 再び奪われた
如玉軒を訪ねた際に、持病の発作を起こした豊萇を助けた白風夕。しかし、病を患っているという噂(うわさ)が流れることを恐れる豊萇に、口封じのため命を狙われてしまう。そんな中、1人で夜道を歩いていると、白風夕の前に大勢の刺客が現れるが、ちょうど黒豊息が現れ助けに入る。その頃、雍州王は帝都で開かれる六合(りくごう)宴に、雍州を代表して誰を遣わすべきか悩んでいた。王宰相(おうさいしょう)は百里氏の指示により、豊莒がふさわしいと提言して…。
第12話 不祥事
会試(かいし)の日、貢生(こうせい)・徐雨新(じょうしん)が不正を働いたため、大勢の人が拘束されてしまう。鳳棲梧はその名簿に弟の鳳世英(ほうせいえい)も含まれると知り、豊蘭息の屋敷に駆けつける。天霜門では、宗主の娘・白琅華が父と連絡が取れないことに苛立(いらだ)ち、白風夕に詰め寄る。白風夕は黒豊息に捜索を依頼したことを明かし、自らも宗主の座を狙わないと明言。一方、朝議で怒り心頭の雍州王を前に大臣たちが謝罪に終始する中、鳳棲梧は事件の調査を豊蘭息に任せるべきだと進言し…。
第13話 若君の正体
会試で行われた不正を調べることになった豊蘭息は、集まった証拠を基に朝議で梁国公(りょう)を断罪するが、百里氏の息が掛かった王宰相により一蹴されてしまう。そして証拠もなく朝臣を陥れた罪で禁足を命じられる。雍州王は豊蘭息の代わりに刑(けい)部尚書の張仲革(ちょうちゅうかく)に取り調べを任せるが、拷問を受けていた貢生の1人、宋思翰(そうしかん)がお題を漏洩(ろうえい)させたのは大学士・裴有説(はいゆうせつ)であると証言する。一方、天霜門の弟子・顧宇(こう)は賭博場に出入りし、借金を作っていた。
第14話 新たな試練
天霜門も巻き込まれた科挙の不正騒動。百里氏の関与を暴こうとする豊蘭息だったが、雍州王の命令により調べを中止せざるを得なくなる。納得がいかず心が晴れない豊蘭息だったが、白風夕に手作りの料理をふるまい、白風夕の明るさに心を慰められるのだった。そんな中、黒豊息の正体を知った白風夕は、気持ちを切り替えて霧(む)山へ出発する。霧山には太陰(たいいん)老人の秘技を手に入れようと多くの江湖の者たちが集まっていたが、誰も試練を突破できずにいた。
第15話 軍馬の怪
霧(む)山の谷底に落ちた修久容(しゅうきゅうよう)と白琅華(はくろうか)は、偶然にも天霜門(てんそうもん)の宗主・白建徳(はくけんとく)と再会を果たす。一方、百里(ひゃくり)氏に婚姻を命じられやけ酒に浸る豊萇(ほうちょう)は、助けを申し出た豊蘭息(ほうらんしょく)に対して、自分を権力争いの駒としか見ていないと一蹴する。その頃、豊蘭息の侍従・任穿雲(じんせんうん)と任穿雨(じんせんう)が東の辺境で買い集めた1000頭の軍馬が都に届けられる。豊蘭息が雍(よう)州王に軍馬調達の報告をしていると、兵(へい)部侍郎(じろう)の王明海(おうめいかい)が謁見に訪れ、豊蘭息が軍馬の密売に関与していたと弾劾する。
第16話 技を継ぐ者
太陰(たいいん)老人の課した試練に挑んだ黒豊息(こくほうしょく)と白風夕(はくほうせき)。黒豊息の目の前に現れたのは、母の死に対して自責の念にかられる己の姿だった。さらに三千の煩悩を捨てねばならなくなった黒豊息だが、どうしても捨てられない想いが残される。太陰老人と対面した2人は、“蘭因璧月(らんいんへきげつ)”の技を伝授され、社稷堪輿図(しゃしょくかんよず)と蘭因の花を手に入れる。一方、2人が秘技を伝授されたのではないかと疑う玉無縁(ぎょくむえん)は、ある行動に出る。玉無縁には知られざるもう1つの顔があり…。
第17話 偽れぬ想い
亡き母の誕辰(たんしん)の祭礼を利用して百里氏を牽制することにした豊蘭息。1人亡き母の位牌(いはい)に向かって胸の内を語り、白風夕に対する偽ることのできぬ想いを再認識する。一方、百里氏から望まぬ婚姻を押しつけられている豊萇は気分が晴れぬまま町へ出掛けるが、そこで偶然白風夕と出くわす。白風夕から「人生には妥協できないこともある」と言われた豊萇は、戚(せき)国公の娘との縁談を断る決心をする。そして前王妃を供養する祭礼の日を迎える。
第18話 梅の
戚国公の娘・戚澄(せきちょう)との婚姻が決まった豊萇は、雍州王から永信(えいしん)君に封じられる。それを知った豊莒(ほうきょ)は叔父の百里景(ひゃくりけい)と結託し、2人の兄を同時に陥れようと企む。百里景は梅の宴(うたげ)を催し、豊蘭息を招くよう豊萇に迫る。豊蘭息の身を案じて足止めしようと苦心する豊萇。片や豊蘭息は、不本意ながらも苦境に立たされた兄を守るため、宴への出席を決める。宴会の日、名門の子弟らで賑わう梅園で戚澄が何者かによって殺害され、豊蘭息に疑惑の目が向けられる。
第19話 兄と弟
戚澄を殺害し、兄・豊萇を突き落とした疑惑をかけられた豊蘭息。禁足となった豊蘭息のもとを訪ねた白風夕は、「本心を打ち明けねば気持ちは通じない」と伝える。豊蘭息は昏睡(こんすい)状態となった兄を見舞い、語り掛けながら薬を飲ませようとするが、そこには毒が盛られていた。目覚めた豊萇は百里氏に操られる日々を終わらせるため、脚は治らず記憶も失ったと偽り、豊蘭息を冷たく扱う。それは弟を守るための兄の思いやりでもあった。
第20話 それぞれの年越し
自分が雍州に滞在中という話をわざと広めさせた玉無縁。その噂(うわさ)を耳にして、さっそく豊莒が玉無縁の屋敷を訪ねて来る。突然やって来た豊莒を疲れているからと追い返した玉無縁だったが、それには理由があった。そして迎えた大みそかの夜。6州の王室ではそれぞれ宴が開かれ、豊蘭息ら3兄弟は雍州王に祝いの品を献上する。その頃、白風夕たち天霜門一同も雍州で年越しをし、祝賀の花火が上がる中、各々が新しい年を迎えるのだった。
第21話 祭りの夜
互いを認め合い、意気投合した白風夕と鳳棲梧(ほうせいご)。仲よく遊びに出る2人のあとを豊蘭息は密かにつけていく。そこで開かれていたのは仮面の男女が手を取り合って踊る鵲橋(かささぎばし)の舞だった。楽しげに舞う白風夕の姿を見た豊蘭息は、自ら仮面をつけて白風夕に踊りを申し込む。翌日、国庫から銀葉(ぎんよう)を盗んだのは都に滞在する劇団であることを探り当てた白風夕と豊蘭息は、名前を偽って劇団に潜入。白風夕は銀葉の行方を捜すが、危うく見つかりそうになり…。
第22話 告白の好機
雍州の都に初雪が降る。豊蘭息は大東(たいとう)各州の物語に詳しい鐘離(しょうり)の知恵を借りて、白風夕に想いを伝えるべく着々と準備を進めるが、肝心の相手は槐樹院(かいじゅいん)から姿を消している。その頃、白風夕は鳳棲梧と火鍋に舌鼓を打ち、明日は乗馬や妓楼(ぎろう)を体験しようと盛り上がっていた。それを知らない豊蘭息は、屋敷を飾りつけ、花火を用意させるなど告白の準備に余念がない。ところが約束の時刻になっても白風夕が一向に現れないため、鐘離に行き先を調べさせると…。
第23話 灯籠流し
環娘(かんじょう)から「白風夕を豊蘭息に近づかせるべきではない」と進言された任如松(じんじょしょう)は、白建徳に白風夕を説得するよう頼むため、槐樹院を訪れていた。江湖(こうこ)を生きる者と王族とでは進む道が違うと言う任如松に対し、白建徳は本人同士に任せるべきだと答える。その後、槐樹院に戻った白風夕は、韓樸(かんぼく)たちから任如松が来ていたことを聞かされる。一方、まだ何も知らない豊蘭息は「上元(じょうげん)節の夜に川辺で会いたい」と鐘離に白風夕への伝言を頼むのだった。
第24話 悪徳役人
豊蘭息の率いる軍は良(りょう)城に向かっていた。そんな時、烏(からす)の群れに出くわした兵士たちは不吉だと恐れおののく。しかし、白風夕の機転によって士気は上がり、軍は‟墨羽騎(ぼくうき)”と名付けられた。長年良城を支配する節度使(せつどし)の于鳴(うめい)は、豊蘭息の動きを警戒していた。于鳴は民を虐げ、私腹を肥やしていたのだ。良城へ到着した豊蘭息は、数多くの策略を巡らす。また、苦難にあえぐ民の姿を目にした白風夕も、于鳴に対して怒りを抱くようになる。
第25話 陰の立て役者
皇朝(こうちょう)たちと対等に渡り合うため、仏舎利(ぶっしゃり)を献上して大東皇帝から“大東天女”の封号を得た幽(ゆう)州公主・華純然(かじゅんぜん)。実は幼い頃、風惜雲(ほうせきうん)、豊蘭息、皇朝、華純然の4人は、大東の八荒(はっこう)塔の前で会ったことがあった。初代青(せい)州王の冠を欲しがり駄々をこねる華純然に、皇朝は皇后の冠である“鳳冠(ほうかん)”の方が似合うと言ってなだめる。華純然はそんな昔の出来事を思い出しながら、誰が自分に鳳冠をかぶせてくれるのかと思案するのだった。
第26話 天下太平の志
青州の世子・風写月(ほうしゃげつ)は、豊蘭息の気持ちを確かめるべく探りを入れるが、風写月の挙動に不満を抱いた豊蘭息は、白風夕こそ大切な人だと告げる。一方、昏睡から目覚めた冀(き)州王は、老臣らが陰謀を企てたことを知り、息子・皇朝との溝が埋まる。治水工事のための人足(にんそく)が足りないことに悩む豊蘭息に、白風夕は民心を取り戻すことを優先するよう提案。その頃、如玉軒(じょぎょくけん)について調べさせた雍州王は、店主を捕らえて隠泉水榭(いんせんすいしゃ)の榭主を暴くよう命じて…。
第27話
良城で民の診察に奮闘した豊蘭息と白風夕は、充実感の中でついに心を通わせる。そこへ雍州の都で如玉軒の者たちが消えたとの知らせが入り、2人は雍州へ向かう。一方、大東天女となり名を上げた華純然は、幽州への帰路で刺客に襲われる。窮地に陥った華純然を救ったのは、公主の婿選びに参加するため幽州へ向かう途中の皇朝と玉無縁であった。豊蘭息は、如玉軒の店員を拉致した者の真の狙いが隠泉水榭であることに気がつき、ある策に出る。
第28話 迫られた決断
雍州王は黒豊息を誘い出すため、「3日のうちに現れねば如玉軒の者たちを処刑する」という話を豊莒に命じて広めさせる。その知らせを聞いた豊蘭息はどう動くべきか思案し、豊莒を屋敷に招く。一方、豊蘭息の窮地を知り如玉軒の者たちを救おうとする天霜門だったが、待ち伏せしていた禁軍に捕まってしまう。如玉軒だけでなく天霜門まで人質に取られた豊蘭息は、身動きできない状況に追い込まれ、自分こそ黒豊息であると自ら雍州王に告げ…。
第29話 王宮の客人
幽(ゆう)州公主・華純然(かじゅんぜん)の婿選びに向かった豊蘭息(ほうらんしょく)と白風夕(はくほうせき)は、武芸の勝負が行われることを知る。内力(ないりょく)を廃された豊蘭息が勝つには華純然の手助けが必要だと考えた2人は、‟黒豊 白夕(こくほう はくせき)”として彼女のもとを訪れ、信頼を得ることに。白風夕は生来のおおらかな気性を発揮し華純然の友人となるが、彼女は計り知れない知謀と野心の持ち主だった。幽州王は婿候補となるのは豊蘭息と皇朝(こうちょう)であると断言。しかし華純然は、黒豊息(こくほうしょく)との婚姻を望んでいて…。
第30話 婿選び
黒豊息は断魂門(だんこんもん)の襲撃に遭うが、白風夕に助けられる。敵の中に蘭因璧月(らんいんへきげつ)を使う者を見た2人は、その人物が以前鳳棲梧(ほうせいご)を襲った犯人ではないかと疑う。そして迎えた婿選びの日、名門の若君たちが一堂に会する場で、華純然は黒豊息の正体を知ってしまう。そこで父の幽州王に謁見し、未完の対局で豊蘭息の勢いを止めようと提案。そんな中、豊蘭息は白風夕の協力を得て武芸勝負に見事合格するが、幽州王は娘婿には皇朝がふさわしいと考え…。
第31話 愛の口づけ
幽州では華純然の婿選びが進んでいた。幽州王は集まった者たちに「天下で最も大事なものは何か」と問い掛ける。豊蘭息、皇朝ら若君たちはそれぞれに考えを述べる。そして次に出されたお題は、天下の行く末を占えると言われる“蒼茫(そうぼう)の残局”であった。一方雍(よう)州では、豊莒(ほうきょ)が陰謀を巡らし、天霜門(てんそうもん)の者たちをわざと脱獄させて禁軍に引き渡そうとする。豊莒の罠(わな)に掛かり脱獄する白建徳(はくけんとく)たちだったが、そこへ配下を連れた豊萇(ほうちょう)が姿を現し…。
第32話 花の力
玉無縁(ぎょくむえん)が偽の玄極令(げんきょくれい)に関わっていると疑う白建徳は、手掛かりとなる玉佩(ぎょくはい)を見せ探りを入れる。その夜、白建徳は白風夕に宗主の座を退くことを告げ、幸せを願うと話す。翌朝、各門派の英雄たちが集うが、肝心の白建徳は姿を見せない。様子を窺いに行った娘の白琅華(はくろうか)が見たのは、皺(しわ)だらけになった父の死体であった。白琅華は白風夕の仕業だと断定し刃を向ける。一方、華純然と皇朝の婚姻で力を得た幽州王は、青(せい)州を攻めることを決めて…。
第33話 母の死の真相
幽州と冀(き)州が婚姻関係を結んだことで、雍州王はどう動くべきか考えあぐねていたが、2人の宰相(さいしょう)に意見を聞き、青州との境に兵を送ることにする。一方、謎の毒“牽機(けんき)”が亡くなった母の死に関係しているのではないかと考えた豊蘭息は、白風夕とともに隠れ市を訪れていた。白風夕の人脈を使って牽機を売っているという医聖(いせい)に接近を試みる。また、玉無縁は蘭因璧月では血呪(けつじゅ)を完全に抑え切れず、玄極令を手に入れるべくついに動き出す。
第34話 謀反
雍州王の誕辰(たんしん)を間近に控えたある日。密かに雍州の都に戻った豊莒は百里(ひゃくり)氏と密謀(みつぼう)し、王の軍が青州に向かって南下している隙に挙兵することを決断する。だが、母の死因を調べていた豊蘭息がこの動きを察知する。誕辰の祝宴が執り行われる中、永平(えいへい)侯の軍旗の下に3万の反乱軍が都に攻め入ったとの急報が入る。一刻を争う中で豊莒は雍州王から兵符を譲り受け、さらに世子の冊封(さくほう)も受けるが、突然、雍州を離れていたはずの豊蘭息が王宮に現れ…。
第35話 君を娶る
雍州の世子となった豊蘭息は、母の霊前で白風夕を娶(めと)ることを誓う。そんな時、白風夕は父である青州王が重い病であるとの知らせを受ける。1人で雍州を離れることを決意する白風夕に、豊蘭息は「何があろうと一緒に立ち向かう」と告げ、ともに青州へ向かう。幽州軍が青州に迫る中、青州世子の風写月(ほうしゃげつ)は妹・風惜雲(ほうせきうん)に政(まつりごと)を託し、自ら出陣することを決めていた。一方、幽州軍営では皇朝と玉無縁がそれぞれの思惑のもと、策を巡らしていた。
第36話 青州の女王
妹の風惜雲に政を託し戦場で戦っていた風写月は、玉無縁が差し向けた断魂門の毒矢で命を落とし、病に伏せっていた青州王も亡くなってしまう。立て続けに肉親を失い悲しみに暮れる風惜雲を、豊蘭息はそばで支える。そして風惜雲は、亡き父と兄の遺志を継ぐべく、青州で2人目となる女王として即位することを決意する。一方、幽州王は戦で大勝したことを喜びながらも、皇朝がなかなか冀州の争天騎(そうてんき)を使わないことに少しずつ疑念を抱き始め…。
第37話 援軍の行方
師父(しふ)の白建徳を殺したのは玉無縁かもしれないと知った風惜雲と豊蘭息は、玉無縁と玄極令に何らかの関わりがあるのではないかと調べを進める。一方、風惜雲率いる青州軍に連敗を喫し、怒りに打ち震える幽州王は自ら戦場に赴くことを決断。皇朝も駙馬(ふば)でありながらそれを止めようとしない。しかし、幽州の金衣騎(きんいき)は風惜雲が操る天下に名高い血鳳陣(けつほうじん)を前に惨敗。無為な犠牲を増やしたくない風惜雲は、自ら幽州王に向けて弓をつがえるが…。
第38話 連理の枝
青州軍と冀幽連合軍が激戦を繰り広げる中、豊蘭息は戦場から風惜雲を救い出すが、蘭因璧月の技を身につけた玉無縁こそ雍州の乱と断魂門の黒幕だと気づく。玉無縁は皇朝にひとまず撤退を進言。折しも幽州から和議の申し入れがあり、風惜雲がこれを受け入れ、青州は危機を脱する。雍州王は豊蘭息と風惜雲の婚姻を認め、さらに豊蘭息に王位を継がせることを決意。1年後、雍州の使臣が青州を訪れ、風惜雲が雍州に輿(こし)入れすることになる。
第39話 再びの決戦
無回谷(むかいこく)の戦いのあと、玉無縁は行方をくらましていたが、実は大東(たいとう)国皇帝・景炎(けいえん)帝を補佐していた。景炎帝は玉無縁を信用していたが、大東国将軍・東殊放(とうしゅほう)は警戒する。そこで東殊放の信用を得るために玉無縁は、立て直した距虚(きょきょ)軍を神軍だと言って紹介する。東殊放は距虚軍の威力を目の当たりにし驚く。一方、豊蘭息と皇朝を激突させ漁夫の利を狙い、後顧の憂いとなる皇朝を始末しようとする玉無縁の計画を、皇朝の妹・皇雨(こうう)が偶然耳にしてしまい…。
第40話 天下を得る者
東殊放率いる距虚軍の攻撃から風惜雲を守り、韓樸(かんぼく)は命を落とす。韓樸のためにも天下太平を実現すると誓った風惜雲は、玉無縁が用意した大砲を破壊すべく、命懸けの策に出る。瀕死(ひんし)となった風惜雲を抱いて豊蘭息が向かったのは天機(てんき)老人のもとであった。天機老人は風惜雲を救うため、豊蘭息にある決断を迫る。一方、皇朝は大東国の城門で距虚軍と対峙。真の黒幕が玉無縁であり、これまでの玉無縁の言葉はすべて偽りであったことを知って…。