秋家の二男の側室の娘・秋嫣(しゅうえん)は会ったこともない将軍・賀永忠(がえいちゅう)の息子に嫁ぐことに。だが、婚礼の最中に新郎は血を吐いて絶命し、寡婦となった彼女は殉死を求められる。それに納得できず、自ら生き延びるために策を練り奮闘を始めた秋嫣。彼女はひょんなことから冷徹な検校史・梁翊(りょうよく)とともに新郎の死の真相を解明することになり、彼が6年前に幼い自分を助けて扇子を贈ってくれた恩人だったことに気づく。だが、梁翊は秋嫣の妹で正室の娘・秋珉(しゅうみん)を扇子を贈った娘だと誤解し、自分の親友で貴公子と名高い英国公(えいこくこう)の息子・秦暄(しんけん)と親しくなっていく秋嫣を玉の輿を狙うずる賢い女性だと警戒して…。
第1話 寡婦(かふ)になった花嫁
秋嫣(しゅうえん)は婚礼の日を迎えていた。花婿の顔は見たこともないが、両親の言いつけどおり嫁ぐつもりだ。しかし婚礼の席で、突然、花婿が吐血して倒れ、帰らぬ人となった。秋嫣の両親は娘を実家へ連れ帰ろうとするが、花婿の父・賀永忠(がえいちゅう)はそれを許さない。実は、婚礼の前に行った占いで、秋家側に偽りがあったのだ。「息子の死は、秋嫣の凶運が原因だ」と主張する賀永忠は、秋嫣に殉死することを要求する。驚いた秋嫣は、自分の生きる道を求めて…。
第2話 貞女の反逆
秋嫣が用意した郭貴妃(かくきひ)への贈り物は、石にすり替えられていた。秋嫣は窮地に陥るが、とっさの機転でうまく切り抜ける。しかし、後日、郭貴妃からもたらされたのは、「妻として亡き夫への貞節を守るように」という言葉だった。落胆する秋嫣。実は、梁翊(りょうよく)が裏で宮女になる道を阻んでいたのだった。それに気づいた秋嫣は梁翊を呼び止め、「なぜ妻は夫が死んだら出家しなくてはならないのか」と男女の不平等に対する怒りをぶつける。
第3話 思いがけない真相
秋嫣は秦暄(しんけん)の協力を得て、密かに賀灃(がふう)の死因を調べる。梁翊は秋嫣が真相を探っていることに気づき、彼女を問い詰める。秋嫣は秘密を守ることを条件に、明らかになった事実を梁翊に教える。実は、賀灃は毒物で死んでいたのだ。しかも、秋嫣との結婚前に、愛し合った女子がいたらしい。梁翊の助言を得て、秋嫣はさらに賀灃の死の真相を探る。その結果、賀灃の侍女・月盈(げつえい)が殉死しようとしていることを知り、秋嫣は月盈に会おうとするが…。
第4話 恩人の名前
賀灃が愛した侍女は自害したのではなかった。秋嫣は2つの毒の存在を知り、ついに賀灃の死の真相を突き止める。さまざまな愛情の渦に飲み込まれ、愛し合う夫婦が犠牲となったのだった。七夕を明日に控え、めでたく殉死と出家を免れた秋嫣はにぎやかな夜の街を楽しむことに。思わず漏れた笑みで、梁翊の視線を釘付けにする。最後に残った孔明灯に願いを書き入れる2人。孔明灯に梁翊が書いた文字を見た秋嫣はあることに気づき…。
第5話 扇の持ち主
梁翊は秦(しん)府にて懐かしい物を見つける。かつて少女を助けた時に渡した扇だ。持ち主は秋珉(しゅうみん)と聞き、矢も盾もたまらず会いに行くが、意に染まぬ相手に嫁がせては助けたかいがないと思い、縁談を申し込むのは先延ばしにすると決める。一方、婚約を取り消されたのはよいものの、もはや老人の後妻に納まるしか道がない秋嫣は一か八かの賭けに出る。捶丸(すいがん)大会に参加するため、借りを返してもらうべく梁翊を頼る。駆け引きが繰り広げられる勝負の行方は…?
第6話 愛なき接近
捶丸大会の最後の試合は、男女2人が組になって戦うことになった。秋珉に接近しようと画策していた梁翊だが、それを察した秋嫣が妨害する。その結果、「梁翊・秋嫣の組」と「秦暄・秋珉の組」が戦うことに。秋嫣が秦暄に接近するのを阻もうとする梁翊と、梁翊が秋珉に接近するのを阻もうとする秋嫣。反発し合う2人が組んで戦う捶丸大会が始まる。一方、途中で棄権することになった秋玫(しゅうばい)と秋瓔(しゅうよう)は、秋嫣に対する恨みを募らせる。
第7話 新たなる危機
芝居小屋で秦暄と密会していた秋嫣だが、偶然居合わせた梁翊に見つかってしまい、梁翊母子との同席を余儀なくされる。秋嫣が屋敷を抜け出したことを知った寇姨娘(こういじょう)たちは、秋嫣と秦暄が芝居小屋から帰る道で待ち伏せをしていた。梁翊の助けを得て、寇姨娘たちから逃げる秋嫣と秦暄。そして、秋嫣はある行動に出て…。一方、秋家が朝廷に寄付した銀票(ぎんぴょう)には、偽銀票が交ざっていた。内々に梁翊からその事実を知らされた秋宜(しゅうぎ)は、衝撃を受ける。
第8話 期限は3日
偽銀票を秋(しゅう)府に持ち込んだのは誰なのか。意に染まぬ婚姻から逃れるため、3日以内に真相を解明することになった秋嫣。秦暄という相棒を得て、共に手がかりを追う。まず始めに偽銀票が出回る賭場に狙いをつけ、そこから少しずつ真相に近づいていく。しかし、せっかく捕らえた彫り師は口封じに殺されてしまい、なぜか牢とは名ばかりの檻に入れられる始末。刻一刻と期限が迫る中、秋嫣は劈柴処(へきさいしょ)の捜査に加わるべく知恵を絞り、梁翊と向き合う。
第9話 地下迷宮の道
変装して妓楼に潜入する秋嫣と梁翊。秋嫣にとっては目にするものすべてが珍しく、こうした場に慣れていないせいで何度もぼろを出しかける。どうにか目当ての妓女との対面にこぎつけ、陶朱公(とうしゅこう)と呼ばれる店主の存在を知る。その後、偽銀票の取引現場を目撃し、陶朱公が妓楼を隠れ蓑にして偽銀票を流通させていることに感づく。そして2人が妓楼の地下に広がる迷宮へと足を踏み入れると、真っ暗な道の先に驚くべき光景が待ち受けていた。
第10話 偽銀票(ぎんぴょう)絵師の正体
禁苑の地下にある煉丹(れんたん)室に閉じ込められた梁翊と秋嫣、そして国師(こくし)。1つしかない出口は外から鍵がかけられており、どう考えても脱出は不可能だが、秋嫣ははさみで石の壁を削って外に出る穴を開けようとしている。梁翊はそんな秋嫣を無駄な抵抗だと笑うが、冤罪をかけられた女子の無実の罪を筆で晴らしたいという秋嫣の志を聞くうちにある策を思いつく。それは煉丹の材料で火薬を作り、壁を爆破して湖の底から逃げるという危険な策だった。
第11話 女の秘密
偽銀票の事件は総章衙門(そうしょうがもん)に引き継がれることとなり、梁翊と確執のある元閬(げんろう)が証拠を押さえにやって来た。再会したそばから火花を散らす2人。秋府が用意した銀票を偽物とすり替えた者は誰なのか。怪しい動きをする米氏(べいし)を追う中で、隠された大きな秘密を知ってしまい、封建社会に生きる女の苦しみを改めて実感する秋嫣。ついに期限を迎えても、疑いの目が向かう先は次々と移り変わっていく。一族の前で推理を披露する秋嫣はある答えを導き…。
第12話 揺れる心
秋嫣の活躍により、偽銀票を秋家に持ち込んだ者は徐氏(じょし)だということが判明した。なぜ徐氏がそのようなことをしたのかを尋ねる秋嫣。実は、かつて徐氏には徐松(じょしょう)という息子がいたが、災難があり死亡し、徐氏はその原因が秋宜にあると恨んでいたのだった。偽銀票の騒動は無事に解決し、秋嫣は街に本を買いに出かける。そして書店で秦暄に会い、変わらぬ愛を告げられる。その想いを受け入れつつも、その夜、秋嫣の心に浮かぶのは梁翊の姿だった。
第13話 痛恨の朴念仁
なぜ梁翊(りょうよく)が取り柄もない秋珉(しゅうみん)を気に入ったのか、秋宜(しゅうぎ)は疑問に思っていた。真意を尋ねる秋宜に、梁翊はある思惑を明かす。一方、総章衙門(そうしょうがもん)では元閬(げんろう)が、梁翊が秋家の娘を娶ることの裏にある思惑を推量していた。梁翊が秋家と手を組んで邪魔者を排斥し、朝廷を自在に動かすための布石だと考える、元閬は秋家に目を付ける。そんな中、劈柴処(へきさいしょ)で宋錦(そうきん)が手枷の合鍵を見つけ出す。梁翊が秋嫣(しゅうえん)に鍵を届けに行くと、鍵を渡そうとした梁翊に秋嫣はある秘密を明かす。
第14話 疫病の真実
疫病にかかった嫡母の韓氏(かんし)を助けるべく、希少な生薬を探す秋嫣。差し押さえられた薬を融通してもらおうと総章衙門を訪れるが、梁翊に恨みを持つ元閬から卑劣な交換条件を提示される。梁翊が自尊心を飲み込み、秋嫣のために鞭で打たれたおかげで秋嫣は薬を手に入れることができたが、屋敷に戻ると葬儀の準備が進んでいた。郊外で炎に包まれる棺を目にし、その場に崩れ落ちる秋嫣。その後、韓氏が大量に吐血していたと聞き、死因に疑いを持つ。
第15話 裁きの場
韓氏を治療した医者から、祖母による毒殺だと聞かされた秋嫣は怒り心頭。家族と真っ向から対立し、梁翊と秦暄(しんけん)と共に屋敷を飛び出す。その後、劈柴処へ身を寄せると、訴状を書き始める。愛よりも孝行を選んだ秋嫣に、梁翊は父親を殺され無力な己に絶望した6年前の日々を語る。思いを分かち合った2人は、片や公務を処理し、片や訴状の草案を練って一夜を過ごす。そしてついに、毒殺に使われた紅花(こうか)の入手経路を突き止め、秋嫣は裁きの場に臨む。
第16話 突然の転落
「韓氏は寺の僧侶と恋仲だった」と柳姨娘(りゅういじょう)から告げられた秋嫣。驚きつつも、証拠となる物を見つけた秋嫣は、秋宜が韓氏の不貞を疑い、毒を飲ませたのだと確信する。この悲しい事実を認めるよう、秋嫣は秋宜を問い詰める。一方、梁翊への復讐に燃える元閬の謀略は着々と進んでいた。秋宜が罪に問われ、秋家を捜査するようにという皇帝の命令が下ったのだ。突然、没落の憂き目に遭う秋家の人々と秋嫣の先行きを、梁翊は案じるが…。
第17話 断ち切る想い
教坊司(きょうぼうし)に送られた秋家の女たちは下働きをさせられることになったが、秋嫣と秋珉、柳姨娘は秦暄が女将に銀子を渡して世話を頼んだことで、いくらか厚遇されていた。秋珉を悲しませないため、女将から薬を手に入れた秋嫣が体調を崩した祖母を見舞うと、祖母は韓氏の死の真相を語り、先祖伝来の扳指(はんし)を手渡して秋家と一族の女たちを秋嫣に託す。その後、梁翊から秋宜が横領の罪に問われていると聞いた秋嫣は、ある覚悟をして秦暄を呼び出す。
第18話 不器用な優しさ
梁翊は師小小(ししょうしょう)を訪ね、優しい笑みを浮かべて頬紅を贈る。しかし、本当に気にかけているのは痩せ細った秋嫣だった。わざと料理に文句をつけては味見という名目で食べさせようと精を出す。そこに秋荻(しゅうてき)の訪れが告げられた。彼は元閬に都合のよい証言をする代わりに、妓女遊びを楽しんでいたのだ。悔し涙を光らせる秋嫣に、梁翊は「君の敵は私の敵」と告げるのだった。秋嫣を請け出すため東奔西走する梁翊の前に、またもや元閬が立ちはだかる。
第19話 再びの凋落(ちょうらく)
酔った秋嫣の言葉から秦暄との別れは家族を守るためだったと知った梁翊は、女将に100両を渡して秋嫣を一月借り切り、その間、他の客の相手をさせるなと命じる。酔って梁翊の腕に抱かれる秋嫣を見た秋珉は、秋嫣が秦暄と別れたのはより力を持つ梁翊に乗り換えるためだと誤解し、不信感を募らせる。師小小が工部の林昌之(りんしょうし)の相手をしていることを知った秋嫣は、部屋に押しかけ林昌之から事情を聞き出そうとするが、そこへ梁翊がやって来て…。
第20話 大いなる賭け
秋瓔(しゅうよう)に接近した元閬は、梁翊の手引きで秋嫣たちが教坊司から逃亡しようとしていることを知る。逃亡決行の日、元閬は教坊司の馬車を待ち伏せ、中を改める。しかし、馬車から降りて来たのは師小小だった。はかられたことに気づいた元閬は、急いで秋嫣たちを追う。一方、秋嫣たちは舟に乗り、川を下って逃走していた。しかし、その舟が沈没し、秋家の女たちが川に流されたという知らせが総章衙門に入る。舟には秋嫣らしき女の骸があり…。
第21話 一夜明けて
秋珉は潜伏先の広済(こうさい)院から逃げ出し、秦暄と一夜を過ごす。朝を迎えると、捜しに来ていた秋嫣の手を拒み、「秋嫣を死んだことにして秦暄の愛を得た」と白状し、過去と決別するのだった。そんな中、梁(りょう)府に元閬の遣わした祝いの使者が現れ、蘇意婉(そいえん)と名乗る秋嫣が側室に迎えられたことを都中に喧伝した。皇帝の耳にも入り、後戻りできなくなってしまう。広済院に戻れなくなった秋嫣は、やむなく側室のふりをすることになり、梁翊の母親と対峙する。
第22話 寝室での攻防
雷雨の音で目が覚めた秋嫣は、もらった酒を飲もうと起き出す。梁翊はそれを止め、子供の頃に隠しておいた酒を取り出した。2人は酒を酌み交わし、どしゃぶりの雨を見ながら語り合う。秋嫣を本物の蘇意婉に仕立てるべく、梁翊が師として招いた琴の名手は師小小。秋嫣は教えを受けるうちに、その秘めた想いに気づく。一方、秋珉は積年の恋心を秦暄に打ち明けるが、受け入れてもらえない。秦暄は秋嫣への想いを捨て切れず、苦しみの渦中にいた。
第23話 すれ違った運命
蘇意婉が秋嫣にそっくりであることは、町中の噂になっている。梁翊は元閬の策を逆手に取り、2人が別人であることを証明するために蘇意婉の披露目の宴を催した。宴に招かれた客たちは秋嫣と瓜二つの蘇意婉を目にして驚くが、蘇意婉が秋嫣だと確信する元閬は芝居の一座にいたなら歌を聞かせろと化けの皮を剥がそうとする。この事態を想定して稽古していたため、見事な歌に一同は納得しかけたが、簡単に引き下がる元閬ではなかった。
第24話 大切なもの
流刑地への途上で秋宜が熱病にかかり、一刻も早い解決が求められていた。そのため、梁翊は父の敵の息子に会い、一族の復興に手を貸すことになった。父の墓前で肩を落とし痛飲すると、「秋嫣が大切なあまり親不孝者になった」と告げる。秋嫣は「大朔(だいさく)奇案録」の作者が梁翊であることを知ったが、見つけた手稿を握り潰されてしまう。そこで、書かれないままでいた終幕を芝居にし、聞き出した梁翊の悩みに対して誰もが完璧ではないと慰めるのだった。
第25話 深まる絆
秋家を再興するため、秋嫣(しゅうえん)と梁翊(りょうよく)が考えた計画は、玄女(げんにょ)を装った秋玫(しゅうばい)が皇帝に謁見するというものだった。もし嘘だと見破られれば大罪となり、皆の命はない。その恐怖で、柳姨娘(りゅういじょう)たちは実行を断念しようとする。しかし、秋嫣は「秋家再興のためには女であろうと役目を果たすべきだ」と皆を説得する。その言葉に励まされ、計画は実行に移されるが…。一方、元閬(げんろう)は、皇帝に宝珠が献上されたこと自体が梁翊の計画ではないかと疑っていた。
第26話 命を救う から騒ぎ
梁翊は秋嫣を喜ばせようと街に連れ出し、ある場所へ案内する。そこには秋嫣の愛読書「魯(ろ)公案」の作者がいた。無理やり連れて来られてご機嫌斜めの魯先生だったが、自分の作品に対する秋嫣の情熱や深い洞察を知ると意気投合し、最新作を手渡すと同時に「自分でも書いてみればいい」と勧める。だが秋嫣と梁翊がしばし幸せな時を過ごす一方で、元閬が師小小(ししょうしょう)の元を訪れ、梁翊と夫婦にさせることを条件に味方に引き込もうと説得を始めていた。
第27話 あの夜の真実
玄女の生まれ変わりを装うことに成功した秋珉(しゅうみん)。生娘でなかった事実が皇帝の逆鱗に触れるものの、梁翊による事前の策によって事なきを得た。さらに秦暄(しんけん)との婚姻を賜ることになり、喜びもひとしお。着々と婚姻の話が進められ、秦暄は自分の気持ちと裏腹な状況に沈鬱な表情を隠せないでいた。そして秋珉に薬を盛られたことを知り、完全に心が離れる。一方、秋嫣は妹を陵辱した男に復讐すべく、鞭を片手に1人で教坊司(きょうぼうし)へと乗り込む。
第28話 初めて祝われる日
祖母と父の墓を前にして泣き崩れる秋珉。そこに柳姨娘が現れ、「これからは自分が面倒を見るし、喪が明けたら秦暄に嫁げばいい」と慰める。その様子を見ていた秋嫣は、ほっと胸をなで下ろす。帰り道、逆恨みされた梁翊が毒矢を受けてしまう。秋嫣は慌てて毒を吸い出し、必死に屋敷へ連れ帰ると、「ずっとそばにいる」と声をかけるのだった。その後、梁翊に請われるがまま手取り足取り面倒を見ていたが、いつまでも治らない傷に疑問を抱くようになる。
第29話 旅立ちの日
秋嫣の旅立ちを前に梁翊は荒れていた。残り少ない時を共に過ごして離れ難くなることを恐れ、劈柴処(へきさいしょ)で過ごしていた梁翊だが、見かねた宋錦(そうきん)に「貴重な時を無駄にするな」と諭されて思い直す。しかし、走って戻った屋敷に秋嫣の姿はなく、朝早く屋敷を出たきりだという秋嫣を町中捜し回るが、どこにもいない。すでに別れも告げずに旅立ってしまったのかと肩を落とす梁翊。夕暮れ時、秋嫣を見送るはずだった北門に佇む梁翊の姿があった。
第30話 追う者から追われる者へ
詹太医(せんたいい)が死ぬ直前、宮中で賄いを担当する丁(てい)氏が詹太医の屋敷を訪れていたことが分かり、梁翊と宋錦は丁氏の家を訪れる。ところが、そこで見つけたのは、すでに事切れた丁氏の骸だった。しかも、骸には劈柴処の矢が刺さっている。そこへ元閬が配下たちと踏み込んで来て、「梁翊が丁氏を殺した」と決めつけ、梁翊と宋錦を捕縛しようとする。2人は必死の逃走を試みるが…。一方、旅に出た秋嫣は大朔(だいさく)と北涼(ほくりょう)の国境の街を訪れていた。
第31話 運命を共にできずとも
父の死の真相を探るため、黙々と墓を掘る梁翊。そこに現れたのは秦暄に託したはずの秋嫣だった。「手枷をはめられた時から運命を共にしている」と言われ、梁翊はその気持ちに報いる決意をする。棺を開けると、梁翊の父も丁氏と同じく安霊(あんれい)花の毒で殺されたことが判明。秋嫣は北涼の商人の娘がはめる指輪を例に出し、郭貴妃(かくきひ)に疑いの目を向ける。その結果、郭貴妃の隠された素性が明らかになる。そんな2人を師小小が訪ねて来て…。
第32話 幾重もの罠(わな)
梁翊は秦喧に連行される体で総章衙門(そうしょうがもん)に姿を現した。大朔の危機である現状を明かし、元閬に協力を要請するためだ。私怨から頑なな態度を崩さない元閬を「国を守るために今だけ手を組もう」となんとか説得し、総章衙門内部にいる間者を暴こうとする。しかし間者はこちらの動きを先読みして先手を打ち、なかなか尻尾をつかませない。間者が書いた北涼文の密書を模写させることで、ついに見つけ出した間者は意外な人物だった。
第33話 間者と捨て駒
ついに延命長寿の丹薬が完成した。1粒ずつ分け合う皇帝と国師(こくし)だったが、駆けつけた梁翊たちから毒だと告げられる。皇帝は半分を吐き出すが、国師はその場で息絶えた。毒が体に染み込んでいると劉全(りゅうぜん)に言われ、ますます丹薬を吐き出したくなる皇帝。慌てて催吐湯(さいととう)を飲み干すと、吐いたのは血であった。あれよあれよという間に皇帝は崩御してしまう。そばにいた郭貴妃は茫然自失。一方、秋嫣は間者の正体について推測を述べる。
第34話 長き旅路の果てに(最終話)
共に力を合わせて北涼の陰謀を暴いた梁翊と元閬。もはや恨みは消えていた。元閬は「梁翊が復職することを新皇帝が望んでいる」と梁翊に伝える。だが、梁翊は官を辞す決心でいた。これからは秋嫣と共に諸国を旅して、公案小説を書こうと考えていたのだ。新たな旅立ちを前に喜ぶ秋嫣。秋家の人々も笑顔で送り出してくれる。すべては円満に解決したかに見えた。だが、先代の衛遠(えいえん)侯の死について、秋嫣は驚くべき真相に気づいていた。