宇宙からやってきた異星人がトップ女優と恋に落ちるロマンティックでファンタジックなラブストーリー。
最初設定を聞いた時、とうとう宇宙人まで出てきたか!と思ったが、そんな異色の題材でありながら、荒唐無稽と思わせることもなく、視聴者をすっとドラマの世界に引きこんでしまうなんて、企画力、制作力、演技力と、韓国はどれだけエンタメ力が高いんだと思わせられた、極上のおとぎ話である。
朝鮮時代に地球に降り立って以来、地球人に成りすまして400年以上生きてきた宇宙人が、あと3カ月で元の星に帰れるという時に国民的人気のトップ女優と出会ってなんだかんだ言い合ううちに恋に落ちていく物語。期間限定の恋愛がどうなっていくのかという切なさに加えて、途中から彼女の身近にサイコな殺人者がいることがわかってきて、ミステリアスな緊張感も加わっていく。危機に陥るヒロインを、人間とは比べものにならないほどのスーパーな視力、聴力、移動速度といった能力を持つミンジュンが守っていくのが女子目線として魅力だ。
このドラマ、主人公たちの設定自体も面白いが、主演の2人がほんとうにすばらしい。キム・スヒョンは異星人ということで、無機質なサイボーグっぽいムードを醸し出すと同時に、400年も生きてきて、達観して浮世離れした感じが、まるで高尚な両班(※1)のよう。目元のアップが何度も出てくるが、かすかな眼差しの変化で微妙な心情を表現。ヒロインに向けるちょっとあきれた顔や彼女が気になってしかたがない顔、密かに嬉しい顔など、普段は無機質な彼の見せる、ふとした表情の変化にもう何度も持っていかれます!『太陽を抱く月』の彼もすごくよかったけれど、今回はもうちょっとシックな中に、端正で知的なカリスマを感じさせる人物だ。そんな彼が恋に落ちて戸惑って泣いたりグダグダになってしまう姿も切なくてかわいい。
そしてなんといってもチョン・ジヒョンのチャーミングな魅力が光る!ラブコメはやはりヒロインが良くなくてはどうにも入り込めない。ここでの彼女は子役時代から人気者という設定で、傍若無人で言いたい放題の少々はすっぱな女性だが、本当にかわいい! コメディエンヌぶりを存分に発揮していて、率直ながら、強がったりいじらしかったりと恋に落ちずにはいられないキュートさを見せている。振られて泥酔してしまう壊れた姿もすごく笑えるし、女性でもそのキュートさにメロメロになってしまう。
とまぁとにかく、笑えるのに哀しくて爆笑と泣きが交互に訪れる主人公ふたりのやりとりを見ているだけで幸せな気持ちになるのだ。
終盤に「愛というものはあまのじゃくゆえ、愛を信じぬ人にはいっそう抗いがたい方法で訪れるものなのです」という予言めいたセリフが出て来るが、その通りに、自分ではどうにもコントロールできない愛というものが起こす奇跡の一つ一つが愛おしく思えてくる。
最後にヒロインが悟る境地がちょっぴり切なさを伴っていて、でも激しく同意できる感情で、このラストあればこそ、終わった後もしばらく、ふんわりと包み込まれたような幸せな後味が残る作品になっている。
(※1 両班・・・朝鮮王朝時代の官僚や貴族階級)
韓流ナビゲーター 田代親世