『W -君と僕の世界-』は、主人公たちが漫画の世界と現実世界とを行き来するというラブ・ファンタジードラマ。
誰しも、漫画に入り込むと、ヒロインに自分を置き換えて、主人公男子とのやり取りを妄想した経験があるはず。
ああ、私も漫画のヒロインになって素敵な男性主人公から愛されたい~と心で思いながら、フランス革命に身を投じたり、古代エジプトにタイムスリップしたり、演劇の天才少女となって数々の試練に立ち向かっていく~という疑似体験をしてきた人は多かろう。で、『W -君と僕の世界-』はまさしくその乙女の願望をドラマにしたようなお話だからたまらない!
漫画の世界のスーパーかっこいい男、カン・チョルが漫画の中で命の危機に陥り、強く感情移入したヨンジュがいつの間にか漫画の世界にひきずりこまれて、カンチョルを助けてしまったところから、ヨンジュも漫画の登場人物に加わってしまい、現実世界と漫画の世界を行き来するようになっていく。
脚本を手がけているのは、タイムスリップを使った『イニョン王妃の男』や『ナイン~9回の時間旅行~』など、空間を超越したファンタジーの名手として有名なソン・ジェジョン脚本家。今回は「現実」と「マンガ」という2つの空間を行き来するという、今までにありそうでなかった設定だ。
漫画の世界に住むカン・チョルと現実世界に生きるヨンジュ。その設定を生かした面白さが随所に描かれている。例えば漫画を読んでいるからカンチョルのすべてに詳しいヨンジュ。カンチョルにしてみれば初対面なはずなのに、ヨンジュがやたら自分のことに詳しいんで不思議になったり(笑)、たいていの漫画は、主人公が動揺したりショックを受けたところで「続く…」になるから、漫画の中から抜け出して現実世界に戻りたいヨンジュはカンチョルを動揺させるべく奇襲キスをしたり、カンチョルの前で下着姿になってみたりとあの手この手を試してみたり。演じるハン・ヒョジュが感情表現豊かで愛らしいのでこの辺のコメディエンヌエピソードがかわいくて爆笑だ。また、現実世界でヨンジュの父の作家がコンピューター上でマンガを描くと、マンガの中の世界が変わっていき、あるはずのないものが突然主人公の前に出てきたり、逆に有ったはずのものが消されたりして、それがうまくストーリーに絡んでくる。
そうこうしながら次第に二つの世界が交錯し、最初の規則的な設定とは違ういろいろな変数が出てきて、いったいどこに行きつくのか、先の予測が全く読めない面白さになっていくのだ。
こうしたストーリーの斬新さもさることながら、このドラマはイ・ジョンソクの魅力が満載。そもそも、カンチョルはヨンジュの理想の男性として生み出されたキャラクターだけに、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、資産8000億ウォンの金持ち…とすべてが完璧!それをイ・ジョンソクが見事に体現していて、まさに少女漫画の世界から抜け出してきたようなスーパーヒーローっぷりを見せている。長い手足の常人離れしたプロポーション。白い肌に赤い唇。口の端をほんの少し上げた微笑みだけで女心を射抜く威力を持った花をしょった青年。男ながらも麗しいクールビューティーぶりなのだ。加えて乙女たちが大好きな究極の生意気ツンデレキャラで、ストン、ストンと投げ出すような話し方もツボ。別れ際にヨンジュが結婚していないことを確かめて「よかった」とサラリと言ってニヤリとする薄いほほ笑みとか、キスした感じをヨンジュに聞かれて「ノーコメント」と言ったときの表情や言い方にキュ~ン。メモを口にくわえる仕草も何気ないけどセクシー。とまあ、こんな具合にこのドラマの彼を見ていると、スターというものは、なんてことのない動きやしぐさで人を惹きつけることのできる存在なのだとつくづく実感してしまう。
そんなに魅力いっぱいの彼が、苦悩し傷つきながらも、愛した女性を守りたいという思いで2つの世界を行き来していく姿に胸がキュンキュンするドラマになっているのだから見逃せない!そしてこのドラマを見た後は、また自分の好きだった漫画を読んでヒロインになりきる妄想が進みそうで、それがまた楽しくもある(笑)。
韓流ナビゲーター 田代親世