『雲が描いた月明り』は、朝鮮時代、男装して宮中にあがったヒロインと世子が織りなすファンタジー・ラブロマンスドラマ。

 激しい権力争いの中で敵の目を欺くため、ダメ王子を装っている聡明な世子と、幼いころからある事情で男として育てられ、借金のカタに内官として宮中に上がることになったヒロインが恋に落ちていく物語だ。

 男装女子もので麗しい男子たちの切ないブロマンスにも萌えられるという点では『トキメキ☆成均館スキャンダル』路線で、同じくキュートなコミカルさがあるし、大人たちの権力争いに翻弄されてしまう若き世子の初恋という点では『太陽を抱く月』の切なき風雅さが感じられる。という具合に、本作品は、人気ドラマの良きテイストをあわせもつ、胸キュンが散りばめられたキラキラ系時代劇だ。

 とにかく少女漫画テイストが満載!ヒロインであるラオンがいつも何かをやらかし苦境に立たされるので、そのたびに世子やユンソンが助けるという構図で王子度が高まってとっても好ましい。ピンチのヒロインをさっと助けるという定番シーンはやっぱり良いものだ!果ては世子は廃位の危険を冒してまでヒロインを救うし、ユンソンも命がけで彼女を守る。いい男たちにいつも守られる展開は、それこそファンタジーだ。

 加えて、傘の陰から徐々に顔が見える描写とか、雨の中を二人で走るとか、池でおぼれたヒロインを世子が思わず飛び込んで助けるとか、馬上でバッグハグ状態になるとか、演出がいちいち少女漫画のキラキラ感を増幅している。で、登場するいい男たちの魅力ときたら…。

 パク・ボゴムが、毛並みの良いコリー犬のようなノーブルさで、厳しい眼差しをしたかと思えばそれをユーモアで隠し、愚かさを装った次の瞬間にふっと真剣になるという緩急が魅力的。ヒロインに対してイタズラを仕掛けたり、軽い嫉妬をしたり、こっそりときめいたりと、表向きとは違う顔を見せてくれるところも甘い魅力につながっている。特にいたずらを思いついた時や何かを企んで面白がっている時の瞳や、「めっ」と顔だけで可愛く怒る表情が何気にツボ!

 柔らかな微笑みを浮かべながら厳しい言葉を突きつけるデキる男度の高さも証明し、気品が保たれたキュっときれいに上がる口角も美しい。

 そんな世子とヒロインの関係は中盤からラブラブになっていくが、キム・ユジョンのすがるような潤んだ瞳で見つめられたらそりゃもうたまらないわという感じである。しかも彼女の内官の男装が可愛いお稚児さんのようで、‘さわやかな隠微さ’が醸し出され、彼らのファンタジー・ラブは見てはいけないものをこっそり見ているドキドキ感がある。

 そしてもう一人のいい男、「世子にとって最も信頼できる友人になりたかったのに、いつの間にか疎まれるようになった…」とつぶやくユンソンも切ない。世子がなごみ系男子だとしたらジニョン演じるユンソンは切れ者クール男子。妖しく寂しげな眼差しと薄い唇に儚げな感じが漂っていて、その苦悩ぶりは艶っぽい美貌とともに大いに萌える。

 また、硬派な魅力が光る、世子の護衛武士役のクァク・ドンヨンも、愁いを帯びた男らしさがあって、自らの使命と世子との友情との間で葛藤する姿が切ない。

 世子と彼らとの友情や絆、そして葛藤といったブロマンスもそこここに出てきて魅惑的なのだ。

 世子と内官が二人きりになっていちゃつくとか、いろいろ本来はあり得ないんだろうなと突っ込みどころもあるが、これはもう宮中を舞台にしたおとぎ話なのだと思ってこの世界観に思いっきり浸るべし。

韓流ナビゲーター 田代親世