あらすじ
「符(ふ)家の娘を娶れば帝王となる」そんな歌が流行する霊陽(れいよう)の都で、皇帝は流行り歌に乗じて皇位を狙う者を打倒しようと考えていた。養子でありながらも次期皇帝として期待される薛栄(せつえい)は、符家の聡明な長女・玉盞(ぎょくさん)とともにこの任務を託されるが、実は任務完遂後に玉盞を殺して武術に長けた次女・金盞(きんさん)を娶るよう密命を帯びていた。だが、玉盞の知略によって何度も危機を救われた彼は、心が揺らぎ始める。一方、自身の息子を皇帝にしたい長公主は、薛栄の手柄となる打倒計画を阻むべく、玉盞をさらうよう江湖の賊・江紹(こうしょう)に依頼。ところが江紹は、金盞を玉盞と間違えてさらってしまい…?
第1話 謎の
霊陽(れいよう)国の都では「符(ふ)家の娘を娶れば帝王となる」という謡諺(ようげん)が流行し、その噂は都を遠く離れた国境にまで届いていた。都の符家には聡明な符玉盞(ふぎょくさん)と腕自慢の符金盞(ふきんさん)の姉妹がいる。謡諺を聞いた彭沢(ほうたく)国の成(せい)王は使臣を通して符家に縁談を持ちかける。その頃、兵力で彭沢国に及ばない霊陽国は、奪われた三甲(さんこう)城を奪回できずにいた。成王の野心を知った霊陽国の皇帝・薛巍(せつぎ)は符家の娘の輿(こし)入れを利用して成王を暗殺し、成王が守る晋(しん)城を手に入れようと考える。
第2話 狙われた花嫁
姉の玉盞のふりをして婚礼の馬車に乗り込んだ金盞だが、彭沢国に向かう途中で何者かにさらわれてしまう。金盞の暴挙を知った玉盞が婚礼の隊列に追いついたときには、すでに金盞はさらわれていたため、妹を心配しつつも玉盞は輿に乗り、一行は晋城を目指す。ところが、行く手には刺客が潜伏していて晋王・薛栄(せつえい)は怪我を負ってしまう。刺客の狙いは薛栄のようだ。皇帝の密命を帯びた輿入れだが、背後にはそれを阻止しようとする思惑が動いていた。
第3話 皇帝の落とし
金盞は足を滑らせて山から転げ落ちるが、江紹(こうしょう)が身を挺して守ったおかげで事なきを得る。恩義を感じた金盞は気絶した江紹を見守り、さらには江紹が目覚めると成王暗殺の任務を依頼する。2人は使用人に扮して成王府に潜り込み、成王の暗殺を謀ろうとしたところ、驚くべき事実を知るのだった。その頃、薛巍のもとに木牌が届く。それは落とし胤(だね)の証しにと江(こう)氏に渡していた物だった。薛巍は20年が経ち消息を得たことに感動を隠せず…。
第4話 内通者の証し
彭沢国の成王の要求で婚礼が早まったが、霊陽国の大軍はまだ晋城に到着していない。玉盞は時間を稼ぐため、あえて水風呂に入って体調を崩す。そんな中迎えた婚礼の日。玉盞は薬入りの菓子を食べさせられたが、吐き出したのち、成王に簪(かんざし)を突き刺して眠らせた。成王を使って、己の命を狙う薛栄と交渉するためである。一方、薛巍は成王に情報を漏らした者がいると知って激怒。内通者を捜し出そうとしたところ、思わぬ事態が起こるが…。
第5話 姉妹の作戦
寿安(じゅあん)公主はお忍びで街に出ていたときに負傷するが、知性あふれる刑部侍郎の張永曜(ちょうえいよう)に救われて好意を抱く。その頃、薛巍は永曜や薛栄の上奏を受け、吉語銭の再調査を決定。再調査を翌日に控える中、金盞が父親・符言信(ふげんしん)の吉語銭を無くしてしまう。実は内通者をおびき出すため、玉盞が考えついた計略だった。玉盞の思惑どおり、内通者は福慶(ふっけい)長公主こそ黒幕だと暴露し、符家に助けを求める。玉盞はさらに策を講じ、福慶長公主を追い詰め…。
第6話 女将軍に憧れて
女将軍に憧れる金盞は、軍への入隊を許してもらおうと父親にごまをするが、一蹴されたため、ふてくされて家出する。言信に見つかりそうになるも、江紹の口添えでまんまと衛所に潜り込むことに成功。早く手柄を立てたい金盞は、江紹から彭沢国の斥候が侵入したことを聞き、2人だけで捕まえようと強引に話を進める。しかし玉盞の計略によって、屋敷に連れ戻されてしまい、江紹は斥候3人を相手に孤軍奮闘。命の危機にさらされるのだった。
第7話 替え玉の婚礼
薛巍は病を理由に拝謁を禁じ、息子の薛栄でさえ会えなくなってしまった。不審に思った玉盞らは婚礼の翌日に皇帝に拝謁する慣例を利用して薛巍の安否を確かめようと考える。玉盞と金盞が花嫁衣装を選んでいると、突然、衣装の影から刺客が現れる。玉盞が目的だと気づいた金盞は江紹に姉を託して2人を逃がすも、刺客らと戦う中で川に転落。すると玉盞を追っていた刺客は急に殺意を潜め、玉盞を生きたままいずこへかと連れ去る。
第8話 偽の
李方(りほう)は土壇場での寝返りを福慶長公主になじられたが、先帝の死を目撃した2人の太監(たいかん)を盾に身を守る。しかし甥(おい)の命を脅かされ、真相を公表できない。予期せぬ事態により、薛栄に嫁げなかった玉盞は想いを断ち切るため、婚約の証しの巾着を薛栄に返すことに。一方、薛栄は李方の証言を得ても、聖旨(せいし)と玉璽(ぎょくじ)がないため即位できずにいた。それを知った金盞は、福慶長公主の屋敷から奪った玉(ぎょく)を思い出す。それこそ偽の玉璽の材料だった。
第9話 金獅子の鍵
鍵のない金獅子を開けて玉璽の行方を探るため、玉盞の指示を受けた金盞は江紹とともに、仕掛けの匠と名高い魯(ろ)先生を訪ねるが、彼は話も聞かずに2人を追い返す。今度は薛栄自ら金獅子を持参して訪問したが、仕掛けが精巧すぎて無理に開けば中に納められた物が駄目になる可能性があるという。意気消沈する薛栄に名案を思いついたと言う玉盞。しかし、刺客とともに魯先生のもとを襲撃した月瑩(げつえい)によって金獅子まで福慶長公主に奪われてしまう。
第10話 灯籠祭の夜
予期せぬ事態により、皇后になってしまった金盞。婚礼翌日から皇宮を出ようとするが、皇后は毎日、公務を行うのが掟(おきて)だと宋(そう)尚宮に言われて阻まれる。すると金盞は宮中で女子の部隊を作ろうと、宮女たちに武術の指導を始めた。金盞に手を焼いた薛栄は江紹の手を借りて、金盞をおとなしくさせることに。金盞は灯籠祭の夜、江紹から手作りの櫛(くし)をもらい、2人は愛を深め合う。一方、薛栄もある方法で玉盞に愛を伝えるのだった。
第11話
江紹を追って定(てい)州を訪れた金盞は、江紹の屋敷が博打(ばくち)のかたに取られていることを知って賭場へ捜しにやってくる。博打で負けた借金を払えず、胴元に脅される江紹を見て何とか救い出そうとする金盞だが、江紹が賭場で負け続けたのには訳があった。一方、先帝の恩人である金(きん)夫人に会うため趙(ちょう)州へやってきた薛栄は、曹翰(そうかん)や侍衛らに金盞を捜させ、玉盞と2人だけで金府を訪れる。しかし、招き入れられた屋敷の中は何か様子がおかしく…。
第12話 願いをかなえる神木
金府を後にした薛栄と玉盞の前に再び陳(ちん)氏が現れる。成王の亡骸(なきがら)の在りかを涙ながらに尋ねる陳氏に、埋葬した場所を教える薛栄。陳氏は気弱な様子で油断させ、毒薬を浴びせかけ、薛栄は目に入った毒薬で失明の危機に陥ってしまう。一方、父親の行方を尋ねて趙州に向かう江紹と金盞は趙県に立ち寄る。早く父親が見つかるようにと神木に願いを掛ける金盞に心癒やされる江紹。しかし、2人が泊まる客桟(きゃくさん)には意外な客が宿を取っていた。
第13話 愛ゆえの決断
薛栄は玉盞に愛を告白し、実母からもらった玉佩(ぎょくはい)を渡すも拒まれてしまう。傷心のあまり玉佩を投げ捨てたところ、玉盞が必死に捜したため、薛栄は思わず玉盞を抱き締める。一方、江紹は路銀を稼ぐために、ある物を運ぶ仕事を引き受けたが、それが盗品だったことから、金盞とともに役人に捕縛される。そのとき、金盞の行方を追う曹翰がやってきた。すでに江紹との駆け落ちを決意していた金盞だが、曹翰からある話を聞かされ、その心が揺らぐ。
第14話 過去の真相を尋ねて
金盞は江紹と別れて薛栄のもとへ戻るもふさぎ込み、玉盞と薛栄の仲がうまくいくことを望む。玉盞が井戸に落とされたことで薛栄は“井”の文字にさえ過敏になり、不安で眠ることもできずにいた。愛を貫こうとした金盞や自分を失うことを恐れる薛栄の姿を見て、玉盞は薛栄の愛を受け入れる決心をする。一方、江紹はかつての隣人から母親の死に関わる重大な話を聞かされる。真相を確かめるため、母親の最期を目撃したという知人を求め都へ戻る。
第15話 望まぬ婚約
永曜(えいよう)は“独幽(どくゆう)”という琴(きん)を贈って玉盞(ぎょくさん)に愛を告げたが拒まれ、意気消沈する。永曜に想いを寄せる寿安(じゅあん)公主は、その様子を見て悲しみを隠せない。その頃、玉盞と永曜の婚約を知った薛栄(せつえい)は、すべて言信(げんしん)の策だと考えて憤る。さらに寿安公主の傷心の理由が永曜だったことから、薛栄は永曜に多くの役目を与えて、玉盞に会えないようにするのだった。一方、江紹(こうしょう)は母親の死の真相を探っていたが、関係者が次々に殺され、手掛かりが途絶えてしまう。
第16話 遺詔の行方
先帝の実子・江紹の存在を知った福慶(ふっけい)大長公主は李方(りほう)の屋敷を訪れ、江紹の存在を公にすると脅す。江紹の存在を認める遺詔を先帝から預かっていた李方は、遺詔が福慶大長公主の手に渡らぬよう魏浜(ぎひん)に託したが、魏浜の動きはすでに福慶大長公主の配下につかまれていた。追われていると察した魏浜は街で会った江紹に楽譜と偽り、春華(しゅんか)通り丙号に届けてくれと頼む。快く引き受けた江紹は無事に春華通り丙号に遺詔を届けるが、その遺詔を受け取った者は…。
第17話 親子の再会
薛栄は罹災(りさい)民の慰問と知府(ちふ)の怠慢の実態を確かめるため滎(けい)州に行幸することに。金盞(きんさん)と玉盞もこれに同行したが、その途中、薛栄の実の母親の危篤を知らせる文が実家の柴(さい)家から届く。母親の死に目に会いたいと願う薛栄。しかし薛家の養子になった際、柴家と一切の関係を断つと誓約させられた身には朝廷の監視の目が光っている。もし柴家への訪問が明るみに出れば、皇帝といえども弾劾は免れない。玉盞は悔いのないよう会いに行くことを勧めるが…。
第18話 恩師に返す
わだかまりが解けた金盞と江紹は二度と離れないと誓い合う。滎州では知府の呉陽(ごよう)が川堤の修繕費を着服し、汚職が露見せぬよう被害状況を偽っていたことが明らかになった。民をないがしろにして私腹を肥やしたことに激高する薛栄は呉陽を厳しく詮議するよう申しつける。しかし、詮議の中で呉陽は汚職は恩師である言信の指示だったと証言した。父親が不正をするはずがないと信じる玉盞は永曜の力を借りて、証言が偽りである証拠を捜し始める。
第19話 奇妙な同居
玉盞は永曜とともに、父親の汚職の証拠となる手紙を偽造した王大千(おうたいせん)を捕らえる。しかし、衙門(がもん)に護送する途中で賊に襲われ、王大千に逃げられてしまう。途方に暮れる玉盞だったが、呉陽の帳簿が見つかったことから、形勢は一気に逆転する。一方、薛栄から柴蓁蓁(さいしんしん)を託された江紹は親身になって世話をしていたが、その結果、蓁蓁から好意を抱かれ、金盞との恋を邪魔される。さらには、蓁蓁に泣きつかれ、同居するはめになってしまい…。
第20話 皇宮の火事
江紹に嫁ぐと言い張る蓁蓁を止められず、激怒する金盞。望まぬ相手と結ばれる苦しみがふと口をつく。薛栄は朝臣たちと廃后について話し合おうとするが、結局は反対されてしまう。福慶大長公主は薛栄の想い人が玉盞だと確信し、皇帝と符(ふ)家姉妹の艶聞を都中に広める。噂を鎮静化するため、瞬く間に玉盞と永曜の縁談がまとまり、結納の品も届けられる。一方、蓁蓁が縫う花嫁衣装を目にした金盞はいよいよ追い詰められ、宮殿に火を放ち…。
第21話 絡まった糸がほどける時
金盞の死を悲しむ人々。妹が薛栄に殺されたと信じる玉盞は彼を冷たくあしらい、永曜の琴に慰められる。その頃、曹翰(そうかん)に殺されかけた金盞は再び都に戻るが、見張りを前に符府には帰れずにいた。江府を訪ねた金盞は幽霊に扮して蓁蓁をからかうが、逃げ出す際に簪(かんざし)を落とす。それを拾った江紹は、金盞が生きていると確信。晴れて金盞と再会を果たすと、蓁蓁は妹みたいなものだと告げ、2人で都を離れて放浪の旅に出ようと誘うのだった。
第22話 都を離れて
金盞は江紹と都を出ることにした。別れ際にも顔を合わせてくれない父親・言信に心を痛めながらも、江紹と2人、訪ねたい場所でやりたいことをする旅路を楽しむ。金盞を送り出した玉盞は竹林に呼び出され、薛栄から求婚を受ける。ひたむきな薛栄に対し、自分の想いが純粋なものである自信が持てない玉盞は、許婚(いいなずけ)がいることを理由に求婚を拒絶する。それでも諦めきれない薛栄は街に永曜を呼び出し、玉盞との婚約を解消しろと要求する。
第23話 愛を乞う
天香琴苑(てんこうきんえん)で玉盞との逢瀬をお膳立てした永曜だが、寿安公主ばかりか薛栄までやってきて思うようなときを過ごせない。玉盞のために準備した琴を演奏するが、曲名を聞いた薛栄は演奏を止めてしまう。一方、旅路の金盞と江紹は偶然出会った老人から、海の向こうには1日中、日の沈まない土地があると聞く。興味を持った金盞は、次の目的地は海の向こうだと心を躍らせる。しかし、突然、朱小北(しゅしょうほく)が届けに来た福慶大長公主からの文には意外な内容が…。
第24話 ゆがめられた遺言
福慶大長公主の愛息・懐瑾(かいきん)が刑(けい)部に引っ立てられた。懐瑾自ら先帝を殺(あや)めたことを認めたと耳にした月瑩(げつえい)は、ひそかに慕う懐瑾を救うため先帝の死の真相を聞かせてほしいと福慶大長公主に懇願。福慶大長公主がその一部始終を語り終えた瞬間、部屋の隅に隠れていた薛栄と永曜が現れて、福慶大長公主は先帝を見殺しにした罪で投獄される。終生幽閉となった福慶大長公主は、先帝の実子・江紹を皇帝に擁立するという願いを懐瑾に託そうとするが、なんと月瑩は…。
第25話 旅路の終わりの家
江紹から手作りの贈り物を渡され求婚を受けた金盞は、喜んでこれを承諾。さっそく花嫁衣装を買うために蓁蓁と街に出ると、顔を隠していたものの、通りかかった懐瑾に気づかれてしまう。慌てて金盞を連れ去ろうとする蓁蓁をよそに、金盞は懐瑾に今の住まいの場所を明かしてしまうのだった。一方、薛栄への想いを断ち切ろうと思い出の短冊も焼き捨てた玉盞。寿安公主から永曜の心を弄ぶなと非難されると、ある決心を胸に永曜のもとに向かう。
第26話 通い合う想い
符府へ帰った金盞は折檻(せっかん)を受けたばかりか江紹とも引き離されるはめになった。だが2人の未来を示すことで父親から婚姻の許しを得ることに成功し、婚礼の準備を進める。金盞と江紹の逢瀬を盗み見た玉盞は、薛栄しか愛せないことを悟り、想いを伝える口づけを贈るのだった。一方、玉盞に別れを告げられた永曜は酒で憂さを晴らしていた。泥酔したあまり、寿安公主を玉盞と間違えて純潔を奪ってしまう。永曜はけじめをつけて寿安公主との婚姻を申し出る。
第27話
大雨に打たれる荒れ寺で、怪我を負った薛栄を抱き締めながら、玉盞はずっと追い求めていた純粋な愛を手に入れたことを知る。永曜との婚約が白紙に戻り、さらに噂が消えたおかげで、薛栄との仲を阻むものはなくなった。晴れて入内する日を迎え、玉盞は皇后としての一歩を踏み出すのだった。その頃、江紹は懐瑾の仕掛けた罠(わな)にかかり、母親殺しの黒幕を言信だと思い込んでいた。金盞との婚礼が刻々と迫る中、ついに夜襲をかけるが…。
第28話 名前のない
婚礼を終えたら江紹とともに都を離れる予定の金盞だが、言信が刺客に襲われたことは気掛かりだった。江紹を婿として受け入れた言信は、金盞の思い出の品を江紹に渡し、娘を託す。しかし、婚礼を前に江紹の表情は暗い。一方、薛栄は重陽(ちょうよう)節を前に蓁蓁を宮中に呼び寄せて、ともに両親の供養をしたいと願っていた。しかし父親の死は薛栄のせいだと考える蓁蓁の心はかたくなだ。心を開かない蓁蓁に玉盞は、薛栄が名前のない位牌(いはい)に祈る姿を見せる。
第29話 敵になった花婿
婚礼の日、一晩中待ち続けてもついに江紹(こうしょう)は現れなかった。懐瑾(かいきん)は捨てられた悲しみに泣き崩れる金盞(きんさん)を慰め、優しく肩を抱き寄せる。傷心の金盞に追い打ちをかけるように、さらに悲しい知らせが届いた。言信(げんしん)が廟(びょう)へ祈祷に向かう途中、刺客に殺され、しかも刺客の雇い主は江紹だという。かつて2人で埋めた酒は掘り出され、代わりに別れを告げる文が埋められていた。茫然と街をさすらう金盞。しかし、言信の死には明かされぬ秘密があった。
第30話
和親のため、南鄺(なんこう)から霊陽(れいよう)国皇帝の薛栄(せつえい)に嫁いだ趙婉児(ちょうえんじ)。ひそかに亡き夫の位牌(いはい)を持っていたため、死罪に処されそうになるが、婉児の深い愛に感動した玉盞(ぎょくさん)によって救われる。しかし実は、何もかも婉児の作戦であった。かつて家族を皆殺しにされた婉児は復讐を誓っていたのである。一方、江紹は言信を目の前にし、金盞への愛と母親の敵(かたき)への憎しみの間で苦しんでいた。すると言信から、ある者の陰謀で己は陥れられたと聞かされて…。
第31話
江紹の死が信じられない金盞は、自分が幸せにすると言う懐瑾の告白を拒絶し、手渡された金の簪(かんざし)も受け取ろうとはしない。江紹が見つかるまで鹿(ろく)城を離れないと言い張る金盞。しかし懐瑾は酒に酔い潰れた金盞を馬車に乗せ、鹿城を後にする。一方、蓁蓁(しんしん)は江紹が婚礼を反故(ほご)にしたのは金盞への想いが消えたからではないかと期待していた。無事に都へ戻った江紹に自分に機会をくれという蓁蓁だが、江紹は今も金盞を想っていると告げる。
第32話
思い出の砂盤の前で金盞は江紹と再会。父親の敵とばかりに江紹の首を絞めるが言信の無事を聞かされ符(ふ)府へ飛んでいく。父親の無事を確かめた金盞は改めて江紹と想いを確かめ合うのだった。その頃、婉児は寿安(じゅあん)公主と結託し、玉盞を毒殺せんと動きだしていた。愛する妻が猛毒に侵されていることを知り、悲嘆に暮れる薛栄。太医(たいい)さえも原因となる毒を特定できず、毒をもって毒を制す案にかけるしかない。だが、毒入りの薬に玉盞は…。
第33話 薬草を求めて
玉盞に毒を盛った者を調べる密命を受けた永曜(えいよう)は、心ここにあらずといった様子で朝餉(あさげ)の席に着き、そそくさと刑部へ向かう。その後ろ姿を見送る寿安公主の表情は硬く沈んでいた。一方、一時は抑えていた体内の毒素が暴れだし、玉盞の命は風前の灯火となる。命の期限は7日。薛栄の頼みを受け、江紹は解毒薬となる薬草が自生する彭沢(ほうたく)国へ向かうことに。ひょんなことから金盞も同行し先を急ぐが、薬草を台なしにしようと月瑩(げつえい)が2人に迫っていた。
第34話 あでやかな花のごとく
玉盞の命が長くないことを自ら確かめた婉児は、思わず笑みを漏らす。その様子をいぶかしんだ蓁蓁は、婉児が怪しいと玉盞に忠告する。一方、江紹と金盞は玉盞の命の綱である薬草を都へ運ぼうとしていた。しかし、あるいざこざに巻き込まれ、薬草が水浸しになってしまう。沁(しん)州へ買いに戻る時間はないため、2人はやむなく都へ。その間にも、玉盞の容体は悪化の一途をたどっていた。死を覚悟した玉盞は、ある思いを薛栄に告げる。
第35話
玉盞は太医に婉児の丸香(がんこう)を調べさせ、毒に侵された原因は婉児の香と寿安公主の青梅のせいだったと知る。婉児に問いただそうとしたとき、毒の件で話があると永曜がやってきた。永曜は人払いさせると、いきなり玉盞に斬りかかるが、幸い取り押さえられ玉盞は無事だった。玉盞への恨みから暗殺を考えたという永曜。一方、玉盞の毒殺に失敗した寿安公主は自らの手で玉盞を殺そうと宮中に出かけ、永曜が皇后を暗殺しようとしたことを知る。
第36話
皇子の身分を証明する木牌(もくはい)を江紹に返すべきか否か、事の重大さと友情との狭間で薛栄は苦しんでいた。江紹が先帝の実子だと知った曹翰(そうかん)は、実子の存在が薛栄の地位を脅かし得ると思い、大事にならぬうちに手を打たねばと考える。一方、皇位に興味がない江紹は薛栄の皇位を守るためにも、すぐに金盞と都を離れようとするが、そのやさきに皇帝から曹府で会いたいとの知らせが届く。木牌の件での相談だと思い、曹府を訪ねる江紹だが…。
第37話 裏切りに返す義
無謀な真似はよせと江紹にくぎを刺された金盞と蓁蓁だったが薛栄が木牌を返すとは思えず、やはり木牌を盗み出すことにする。友情を信じて木牌を江紹に返すと決めた薛栄だったが、臣下の報告で2人が木牌を盗み出そうとしていることを知る。江紹の指示だと誤解して絶望するが、あえて手を打とうとはしなかった。木牌を盗み出し、禁軍に追われる金盞の居場所を知った薛栄は裏切られても、自分は義を尽くすと言い放って金盞を見逃す。
第38話 再び暴れだした毒
鄭綏(ていすい)は、江紹への譲位を薛栄に迫って命を絶った。薛栄は、江紹がけしかけたと思い込み、江紹の釈明を聞こうとしない。鄭綏の行いを知った李方(りほう)は直ちに江紹を訪ね、江紹への皇位継承こそ先帝の願いだと告げる。その頃、解毒できたはずの玉盞が血を吐いた。余命幾ばくもないと知った玉盞は、薛栄に頼んで金盞を皇宮から出してもらう。一方、公主府では物取りが入ったことから、突如として先帝の遺詔が見つかる。その内容とは…。
第39話 暗雲漂う皇宮
懐瑾の奸計により、言信は兵符を返上して帰郷することに。玉盞は残り少ない時間で薛栄と一緒に何をしたいのかを書き連ねてゆく。そんな中、薛栄と江紹の誤解が解けていない状況を憂い、金盞と示し合わせて2人を会わせる。だが竹林から出てきた2人の様子に玉盞と金盞は戸惑いを隠せないのだった。その後、三甲(さんこう)城を奪還するために出征した薛栄が失踪。知らせを受けた玉盞はひどく動揺する。皇帝の消えた都では、江紹が虎視眈々と玉座を狙う。
第40話(最終話) それぞれの旅立ち
即位の儀にて、玉座に座る江紹の前に亡くなったはずの薛栄が本物の遺詔を持って現れた。懐瑾とともに逆賊と成り果てた江紹は薛栄の剣で左胸を刺され、あえなく倒れ込む。その身にすがりつく金盞だったが、死を覚悟した懐瑾に捕らわれてしまう。しかし懐瑾は金盞を道連れにできず、自ら命を絶つ。秦(しん)王の乱は鎮まり、平穏が戻ったある日、都を発つ金盞の隣に江紹の姿があった。すべては民の安寧を守ろうと薛栄と江紹が立てた計画であった。