あらすじ
都一番の美男子と評判の寧鈺軒(ねいぎょくけん)は、毒婦と呼ばれる聶桑楡(じょうそうゆ)にひとめ惚(ぼ)れされ渋々結婚。夫婦とは名ばかりだったが、第二夫人を迎えた夫を許せない聶桑楡は騒ぎを起こして逃走、断崖から身を投げる。幸いにも一命を取り留めるが、目覚めた聶桑楡は記憶を失ったうえに明るく無邪気な性格に一変! 以前の自分が皆から嫌われていたことを知った彼女は離婚を決意するが所持金がなく、まずはお金を稼ごうと策を練る。そんな妻の豹変ぶりを不審に思いながらも、前向きに周囲の人々と接する姿に惹(ひ)かれていく寧鈺軒――。互いの気持ちが逆転した2人の結婚生活を待ち受ける運命とは!?
第1話 奥様の大変身
陌玉(ばくぎょく)侯・寧鈺軒(ねいぎょくけん)の妻・聶桑楡(じょうそうゆ)は追っ手から逃れるため森を走り続けていたが、崖の手前まで追い詰められる。追っ手は夫である寧鈺軒。第二夫人を迎える婚礼の場で、聶桑楡は第二夫人・温婉(おんえん)を刺したのだった。覚悟を決めた聶桑楡は4年の結婚生活を振り返りながら崖から飛び降りる。寧(ねい)府にて聶桑楡が目覚めると見知らぬ娘がいてお付きの侍女だと言う。聶桑楡は自分の立場も夫が誰かも分からず、何が起きたのかもすっかり忘れていた。
第2話 過去との決別
湯船に入ったままぐったりしている寧鈺軒を聶桑楡は慌てて引き上げ寝台に寝かせた。やがて寝息が聞こえ始めると、眠ったままの寧鈺軒に厨房(ちゅうぼう)の火事は自分の仕業ではないと訴える。翌朝、屋敷中の者が広間に集められた。皆の前で火事の件を釈明するよう寧鈺軒に求められた聶桑楡は、人々の間を歩き回るとある証拠を示し、自分を厨房に閉じ込め火をつけた犯人を見事に当てる。だがその事態を招いたのは、かつての自分の非情な行いだった。
第3話 離縁状
500両を手にするため、あの手この手で寧鈺軒を魁星楼(かいせいろう)に誘い出す聶桑楡。真意をはかりかねた寧鈺軒は脅迫に屈したと見せかけ、宴席に現れる。すると突然、黒装束の一団が現れ、襲いかかる。刺客の襲撃を読み切っていた寧鈺軒は、武装部隊で対抗。賊の頭・阿狼(あろう)は聶桑楡を盾にして投降を迫るが、寧鈺軒は動じることなく矢を放つ。阿狼はとっさに身を挺して聶桑楡をかばう。その様子から、聶桑楡が阿狼と通じていると疑う寧鈺軒は…。
第4話 脱出大作戦
聶桑楡が寧府を出ていくつもりだと知り、寧鈺軒は今いる妻が本当に聶桑楡なのかと疑念を深める。一方、出ていくと誓った聶桑楡は半夏(はんげ)の傷痕を治すために調合した痕消し膏(こう)でひと儲(もう)けすることを思いつき千怜雪(せんれいせつ)に協力を求める。初めは渋る千怜雪だが聶桑楡が本気で寧鈺軒と別れるつもりだと知ると、寧府の使用人たちに痕消し膏を売る役目を担う。ところが順調に売れていた矢先に、痕消し膏の材料である薔薇(ばら)園の薔薇が一夜にして散ってしまう。
第5話 4年越しの初夜
一命を取り留めた寧鈺軒は、負傷したことを隠すために回復するまで思過(しか)閣に留(とど)まると決め、夜は聶桑楡と同じ部屋で別々の寝台を使うことに。寧鈺軒は、昨夜聶桑楡が適切に傷を手当てし止血薬を処方したことを思い返し、その能力に疑問を抱きながら眠りにつく。明け方、聶桑楡は寧鈺軒が悪夢にうなされる声で目を覚ます。あまりの苦しみように思わず駆け寄り無理やり起こすが、2人が同じ寝台にいる様子を見た鬼白(きはく)に誤解されてしまう。
第6話 蟹の宴
寧鈺軒と共に戦勝の宴(うたげ)に招かれ、初めての皇宮に好奇心が隠せない聶桑楡は、美容の話で盛り上がる女性たちに近づき、自分の痕消し膏を売り込もうとする。凌剣星(りょうけんせい)は海坊(かいほう)から取り寄せた蟹(かに)を得意満面で皇帝に献上し、宴の参加者に振る舞うが、聶桑楡が凌剣星の料理にケチをつけたことで険悪な空気に。聶桑楡が話す蟹料理に興味を引かれた皇帝に促され、なぜ作れるのか分からないまま“漬け蟹”を完成させる聶桑楡。一同は生の蟹に戸惑うが…。
第7話 家族との再会
聶桑楡は自ら100両を投じて二品誥命(こうめい)夫人冊封の祝宴を開くが、一向に客が訪れずやきもきする。そこへ見るからに大物そうな一家が訪れ喜ぶが、自分の両親と妹の聶青雲(じょうせいうん)だと苜蓿(もくしゅく)に教えられる。西北土産を見た聶桑楡は父・聶向遠(じょうきょうえん)に商いの話を持ちかけ、更に寧鈺軒と離縁するつもりだと打ち明ける。祝宴では寧鈺軒に費用の折半を持ちかけるもののすげなく断られ、やけ酒で酔った聶桑楡は寧鈺軒を「私の想い人」と呼び、甘い香りがすると言いだす。
第8話 夫救出作戦
寧鈺軒が手を回したため一晩で多くの腐れ文士ののどが潰れた。そのことでかえって悪評が広まってしまうと聶桑楡が頭を抱えていると、以前街で出会った袁朗(えんろう)が現れ、気晴らしに郊外へ連れ出す。袁朗は素朴な小麦粉焼きを振る舞い、離れ離れになった親族を捜し出したが相手に気づいてもらえないと自身の生い立ちを語る。その夜、寧府に戻った聶桑楡と寧鈺軒が話をしていると大理寺(だいりじ)の者が押し入り、流民を虐殺した容疑で寧鈺軒は連行されてしまう。
第9話 手料理に秘めた悪意
牢獄を出た寧鈺軒は無事に寧府に戻って来た。海坊へ赴任するにあたり、凌剣星の恨みを買った聶桑楡を都に残していけば問題が起こるに違いないと考えた寧鈺軒は同行させようとするが、都で店を開くつもりの聶桑楡は拒絶する。だが同行をねだる温婉が「海坊には美味が多く、各地から商人が集まる」と語るのを聞くと、にわかに興味を示して一緒に行くことに。出発の前日、温婉に酔い止めの練り香を贈った聶桑楡に温婉は手料理を食べさせるが…。
第10話 梅の痣
駅站(えきたん)の貴賓室で眠ろうとする聶桑楡を自分の薪小屋に連れていく寧鈺軒。一夜を共にするのかと緊張する聶桑楡だったが、実は刺客の目くらましだった。寧鈺軒の読み通り刺客集団が現れ迎え撃つが聶桑楡を盾に取られてしまう。幼少時に父を亡くした記憶が蘇り、聶桑楡のために剣を置く寧鈺軒だったが、どうにか命は取り留め2人で川へ逃れる。そこで寧鈺軒は聶桑楡の肩にあるはずの梅の痣(あざ)がないことに気づき、妻とは別人であることを確信する。
第11話 海坊の洗礼
海坊の街を歩く聶桑楡と寧鈺軒。食事に入った店が料理に法外な値段をつけていたために聶桑楡は怒って店を飛び出すが、1人になったところを見計らって怪しい者たちが動き出す。路地に追い詰められた聶桑楡は逃げ出そうとしたところを何者かに殴られ気を失ってしまう。聶桑楡が屋敷に戻っていないことを知った寧鈺軒は県衙(けんが)の家職・陸徳奎(りくとくけい)を問い詰め、賭場に乗り込んでいく。一方、朝廷では凌剣星を新たな同平章事(どうへいしょうじ)にという提案がなされていた。
第12話 富商の質素な宴
顧客の開拓を目当てに寧鈺軒が招かれた誕辰(たんしん)の宴に同行する聶桑楡。宴の主役たる王錦堯(おうきんぎょう)は海坊で一番の富商だが、宴席の料理は質素なものばかりで、「稼ぎは民のために使う」と海坊一の善人を自称する。だが飾り気のない衣を着た娘の袖口からは金をはめ込んだ腕輪がのぞいていた。宴に出席したことで聶桑楡のもとには名門の令嬢からの招待状が舞い込むように。寧鈺軒は、招待に応じてそれぞれの屋敷の事情を探るよう聶桑楡に頼むが…。
第13話 不正を暴く
寧鈺軒は聶桑楡を喜ばせようと県衙の庭を花でいっぱいにし、聶桑楡の大好きな肉料理も用意したが、聶桑楡は自分の化粧品店・皓雪堂(こうせつどう)の開店準備に追われ慌ただしく立ち去ってしまう。だが皓雪堂は開店したものの客が来ない。店の様子が気になった寧鈺軒が公務の途中で立ち寄ると、聶桑楡から店の経営状況が苦しいことを訴えられ、その話の中で本来は2両の船舶税が20両も徴収されていることに気づく。それを聞いた聶桑楡は港へ向かい…。
第14話 帰海号襲撃
水宴居(すいえんきょ)に潜んでいた鬼白は水娘子(すいじょうし)を守るために特殊な毒鏢(どくひょう)を身に受け傷を負ったが、水娘子の適切な看病のおかげで意識を取り戻す。飛海鏢(ひかいひょう)という毒鏢が海賊の使用する武器だと知った鬼白は水娘子の制止も聞かず寧鈺軒のもとへ。報告を受けた寧鈺軒は、主(あるじ)が不在のまま港に停泊している帰海(きかい)号が狙われていると察し精鋭を向かわせる。同じ頃、帰海号襲撃の知らせを受けた袁朗もまた蛟龍幇(こうりゅうほう)に紛れて帰海号へ乗り込み、海賊の襲撃から船を守っていた。
第15話 初めての料理
海坊(かいほう)にやって来た温婉(おんえん)は女主人気取りで使用人たちに采配を振るい始め、聶桑楡(じょうそうゆ)の寝具を新調するという口実で寧鈺軒(ねいぎょくけん)を街へ誘い出す。2人が生地を選んでいるところを目撃した聶桑楡は、気持ちがもやもやして食欲もうせてしまう。聶桑楡がやきもちをやいていると伝え聞いた寧鈺軒は、聶桑楡のために自ら腕を振るって麺を作る。初めての麺料理の出来は今ひとつだったが、聶桑楡にはこのうえないごちそうだった。これを知った温婉は恨みを募らせ…。
第16話 消し得ぬ毒婦の称号
蓮香(れんこう)の暴露で水宴居(すいえんきょ)での宴(うたげ)は台なしとなった。記憶にない過去の罪に苦しむ聶桑楡の姿を見て、ついに寧鈺軒は聶桑楡が季曼(きまん)であることを明かす。悪事は自分の仕業ではなかったと知り罪の意識からは解放されたものの、真相を知りつつ今まで黙っていた寧鈺軒に不信感を募らせる季曼。しかし悲劇はこれだけでは終わらなかった。蓮香が何者かに殺され、その場に季曼が身に着けていた玉佩(ぎょくはい)が落ちていたことから、季曼は殺人の容疑で投獄されてしまう。
第17話 命を懸けて守る
牢に入っている季曼は自分を陥れた人物について寧鈺軒と話しているうちに、牢に入れられたことでむしろ安全なのだと気づき寧鈺軒に感謝する。同じ頃、自分の代わりに飲めない酒を飲んで酔い潰れた鬼白(きはく)を介抱していた水娘子(すいじょうし)は、蓮香が殺された日に部屋に残っていたにおいを思い出す。水娘子から話を聞いた寧鈺軒は、蓮香を殺したのは蛟龍幇(こうりゅうほう)の者である可能性が高いと気づき…。鬼白は危険な役目を引き受けた水娘子に命を懸けて守ると誓う。
第18話 私たちの夢
寧鈺軒のひと声で帰海(きかい)号は修繕することになり乗組員は下船を強いられた。船を修繕している間、寧鈺軒は季曼が県衙(けんが)へ戻ることを期待するが、季曼は県衙へは戻らず苜蓿(もくしゅく)と桑葚(そうしん)を連れて皓雪堂(こうせつどう)で夜を明かすことにする。食べ物を差し入れたり何かと気遣う寧鈺軒だったが、季曼のつれない態度にやむなく引き下がる。翌日、季曼は水宴居の水娘子を訪ね、自分が帰海一刀(きかいいっとう)の娘だと正体を明かしたうえで、皓雪堂の番頭になってほしいと水娘子に申し入れる。
第19話 灯籠祭りの恋のさや当て
上巳(じょうし)節の試し売りは大盛況で、たちまち商品は売り切れた。店の再開に希望が見えて上機嫌の季曼と街を歩く袁朗(えんろう)は、この機会に自分の気持ちを伝えようとするが、季曼の反応を見て冗談だと取り繕う。2人きりの時間を過ごして関係を発展させたい袁朗だが、偶然にも寧鈺軒と出くわし3人で祭り見物をするはめに。季曼にいいところを見せようと袁朗と寧鈺軒が輪投げで火花を散らしていると苜蓿が現れ、皓雪堂の倉庫が火事だという知らせが…。
第20話 忠誠の証し
季曼は安く原料を仕入れるために自分で船を出し、病に苦しむ民のために原料以外の薬材も仕入れて安価で売り始めた。これを知った王錦堯(おうきんぎょう)は「相場を乱した」と県衙へ乗り込んで来るが、海上貿易組合のあこぎなやり口を知っている寧鈺軒は取り合わず、逆に組合を非難する。そこで王錦堯は袁朗を呼び出し、海賊の仕業と見せかけて季曼の船を襲うよう依頼する。これは王錦堯への袁朗の忠誠を推し量るためでもあったが、快く引き受けた袁朗は…。
第21話 月明かりの告白
劉(りゅう)家村に泊まることになった寧鈺軒と季曼は、月明かりのもと、ほろ酔いで川辺に腰を下ろす。じゃんけんをして敗者が勝者の質問に答える遊びをしているうちに、図らずも互いの気持ちを確かめ合った2人。翌朝、村を去ろうとすると1人の老婆の険しい視線に気づく。後を追い、何か話があるのではないか尋ねると、失踪した息子が何事かに巻き込まれたと言う。2人は海に出ると言って戻って来ない男たちが王錦堯の企みの犠牲になっていることを知る。
第22話 よみがえった記憶
都へ年貢を運ぶ船が海賊に襲われ、仮面を着けた海賊たちと乱闘になるが、寧鈺軒は頭領らしき男から剣を突きつけられ武器を奪われる。仮面を取った海賊はなんと袁朗だった。袁朗が海上貿易組合と手を組んでいたことを明かし、寧鈺軒を罵る王錦堯。王錦堯の指示を受けて斬りかかろうとする袁朗を思い留(とど)まらせようと説得する寧鈺軒だが、そんな寧鈺軒を王錦堯はあざ笑う。一方、寧鈺軒の身を案じひそかに船に乗り込んでいた季曼は…。
第23話 門前の魚に秘めた想い
海に落ちた季曼の無事にひと安心した寧鈺軒だが、今度は季曼がいずれ帰海号に戻ることを思って胸を痛める。船の修繕を引き延ばしてでも引き止めたいと思いつつ、季曼のために手料理を作ってかいがいしく世話をやく。一方、記憶が戻ったこと、自分の想い人が寧鈺軒だったことを本人に打ち明ける機会をうかがっている季曼。かつては海坊から都の寧(ねい)府へ新鮮な魚を届けさせていたことも思い出した。門前に置かれていた魚には寧鈺軒も気づいていたが…。
第24話 不意打ちの口づけ
18年ぶりに聶向遠(じょうきょうえん)と再会した季銘(きめい)は、娘・季曼が聶桑楡として寧鈺軒の妻になっていると知り愕然とする。季銘はかつて茶幇(ちゃほう)の三番手で、聶桑楡・季曼姉妹の実父は茶幇の幇主(ほうしゅ)・蔡聞正(さいぶんせい)であり、その蔡聞正を殺したのは寧鈺軒の父・寧忠天(ねいちゅうてん)だと言う。親の敵(かたき)の息子と夫婦だという現状は不本意ながら、2人は季曼の安全を優先して様子を見ることにする。その頃、記憶を取り戻した季曼は寧鈺軒に、これまでのいきさつを繰り返し語って聞かせていた。
第25話 第二夫人の罠
千怜雪(せんれいせつ)は多額の借金を抱えた弟・千炳言(せんへいげん)を救うために、深夜の皓雪堂で銀票(ぎんぴょう)に手をつけてしまう。そこへなぜか温婉が現れ、弱みを握られた千怜雪は温婉の手助けをすることを約束させられる。寧鈺軒は、いつまで聶桑楡として生きるのかと思い悩む季曼に“一生涯2人だけ”という意味を持つ水晶を贈り、温婉のことは事情があって寧府に迎えただけで、季曼を裏切ったことはないと打ち明ける。2人の様子を物陰から見ていた温婉は千怜雪を呼びつけ…。
第26話 悪夢の原因
毒入りの非晩霜(ひばんそう)を渡され、戸惑いを隠せない温婉に容赦なくたたみかける寧鈺軒。すでに温婉の侍女が一部始終を白状していた。過去に温婉が辱めを受けた一件が狂言だったこと、婚礼の日の刺傷事件も温婉が自ら傷を負ったことなどを挙げられ、ついに温婉は観念する。劉家村で草薬の植えつけを教えてきた季曼が県衙に戻ると、すでに就寝していた寧鈺軒が悪夢にうなされていた。季曼は優しく添い寝をしながら、寧鈺軒の父親が殺された日の話を聞く。
第27話 出会いは因果か運命か
寧鈺軒がひそかに婚礼衣装を用意していることに気づいた季曼。求婚の言葉を待ちわびるが、ロマンティックな演出を計画している寧鈺軒はなかなか切り出さない。しかし寧鈺軒から皓雪堂に届けられた差し入れのお菓子の中には「夜に川辺で会おう」という意味の書きつけが入っていた。いよいよ求婚の時だと、装いを凝らして出かける季曼だったが、海坊に戻った季銘が会いに来て、足止めを食うはめに。さらに季銘は寧鈺軒との仲を断固反対する。
第28話 運命にあらがう恋
求婚の機会は逃がしたものの、互いの想いを通い合わせた季曼と寧鈺軒。しかし、季銘が2人の恋路を阻む。季銘が2人の仲を裂くために帰海号を出航させて、当分海坊には戻らないつもりであることを知った季曼は、あの手この手で寧鈺軒と会おうとするが、そのたびに季銘に見抜かれてしまう。実は季曼の動向を季銘に伝えている間者がいたのだ。決して2人の仲を許そうとしない季銘に業を煮やした季曼と寧鈺軒は、既成事実を作ることにしたが…。
第29話 消えた花嫁
季曼(きまん)は帰海(きかい)号を抜け出し、寧鈺軒(ねいぎょくけん)のもとへと駆けつけて婚礼の支度を整えた。父・季銘(きめい)に反対されてはいるものの幸せを噛(か)みしめていると突然袁朗(えんろう)が現れ、「過ちを止めに来た」と告げる。婚礼衣装に着替えた寧鈺軒は季曼が姿を消したと知らせを受け、夜を徹して捜し回るがどこにも見つからない。絶望しながら季曼の行き先に考えを巡らせた寧鈺軒は、ある場所を思いつく。一方、袁朗は前夜までの様々な出来事を思い返しながら、ある人物を待っていた。
第30話 残酷な真実
山で薬草を採取していた季曼は急な雨に襲われる。心配して捜しに来た寧鈺軒になぜ自分を避けるのかと問い詰められ、ついに自分が蔡聞正(さいぶんせい)の娘だと告白してしまう。季曼の実の父親が長年恨み続けた蔡聞正だと知り、寧鈺軒はショックのあまりその場で倒れ、目覚めた時は県衙(けんが)にいた。落胆した寧鈺軒は季曼に関わる物をすべて片づけるよう鬼白(きはく)に命じる。一方、海坊(かいほう)を去ると決めた季曼は、商いを滞りなく引き継げるよう皓雪堂(こうせつどう)で準備を進めていた。
第31話 復讐のための生還
都に護送されたはずの温婉(おんえん)が檀(たん)王の姪(めい)・如月郡主(じょげつぐんしゅ)として海坊に戻って来た。檀王と凌剣星(りょうけんせい)の駒として寧鈺軒を倒し、皇商大会で勝利して海上貿易組合の会長の座を手に入れるため、そして何より私怨を晴らすことが目的だった。季曼が県衙を出たことで寧鈺軒との夫妻仲を疑う凌剣星は、2人に離縁の話が出ればすぐに皇帝に奏上しようと、間者を配して身辺を探らせる。寧鈺軒は帰海号の季曼を訪ね、間者の目を欺くために県衙に戻ってほしいと頼む。
第32話 皇商大会初戦
皇商大会の初戦で歓顔堂(かんがんどう)は意外にも非晩霜(ひばんそう)に負けない品質の明月霜(めいげつそう)を打ち出した。品質や使用感では審査官も甲乙つけ難く、成分を見比べての審査となる。その結果、より高価な原料を使っている明月霜が高く評価されてしまった。如月郡主が急に高品質の化粧品を作ったことで、季曼らは処方を盗まれたのではと疑うが証拠はない。また歓顔堂が「投票者には商品1瓶を贈る」という思い切った特典を打ち出したことで票を集め、皓雪堂は1敗を喫する。
第33話 暴かれた過去
寧鈺軒と季曼は円満な夫婦を演じ続け、報告を受けた凌剣星は監視を解いて矛先を袁朗に向ける。手を組んだはずなのに消極的な袁朗にいらだち、凌剣星は切り札を突きつける。すでに隠居している父・袁定山(えんていざん)がかつて犯した大罪を暴かれ、動揺した袁朗は…。一方、皇商大会第2戦に向けて、非晩霜1000個の生産に取り組む季曼だが人手が足りず、父・季銘に船乗りたちを借りることにするが、荒くれ者たちに細かい作業は難しく、なかなか進まない。
第34話 漏らされた秘密
海坊にやって来た聶向遠(じょうきょうえん)は聶桑楡(じょうそうゆ)とうり二つの季曼に対面し心中は複雑だった。寧鈺軒と2人きりになった聶向遠は聶桑楡を甘やかして育てた己の悔いを語り、不幸な娘の運命を嘆くが、部屋の外で陶思維(とうしい)が聞いていることを2人は知らなかった。含みのある言葉で過去の聶桑楡を語る陶思維に、季曼は自分の素性が知られたと気づく。友として陶思維を信じたい季曼と寧鈺軒だったが、秘密は凌剣星に漏らされる。信じられない思いの凌剣星だが…。
第35話 万事休す
自分の父親を殺したのは茶幇(ちゃほう)の幇主(ほうしゅ)・蔡聞正ではなく、幇主の名をかたった袁定山だったと袁朗から聞かされた寧鈺軒は、敵(かたき)の息子である袁朗を前に感情を昂ぶらせるが、それが確かな事実であることを突き止めるまでは決着は持ち越すことにする。皓雪堂では皇商大会第2戦の商品を作り終えて瓶に詰め込むばかりだったが、朝に到着するはずの瓶が着かない。今か今かと待ちわびる季曼に届いたのは、港に入る前に荷が強奪されたとの知らせだった。
第36話 妻の霊位
季曼は如月郡主が納めた化粧品に多量の水銀が含まれていると指摘し検査を提案するが、勝ち目がないと悟った如月郡主はあっさりと負けを認める。凌剣星にとっての真の目的は勝利ではなく、寧鈺軒と季曼を潰すことだったからだ。化粧品部門の勝者は皓雪堂に決まり、季曼は海坊の商いを発展させるために商品の処方を公開すると宣言する。満足げな皇帝だったが、そこへ凌剣星が贈り物と称して霊位を運ばせる。そこには聶桑楡の名が書かれていて…。
第37話 別々の道
凌剣星によって陰謀の数々を暴露され、ついに檀王の野望は潰え、裁きを受けることになった。茶幇に対する嫌疑は晴れるが、聶桑楡になりすましていた季曼は寧鈺軒の将来のため身を引く決意をする。聶青雲(じょうせいうん)は、姉が別人に入れ替わっていたという噂を聞きつけ、陶思維を問い詰める。そして許嫁(いいなずけ)の想い人が姉であること、季曼を陥れたことを知り、陶思維のもとを去る。季曼が罪に問われないことを知った陶思維は君命と偽って牢から季曼を連れ出し…。
第38話 (最終話)夢がかなう時
寧鈺軒は都に戻ってからも鬼白に命じて季曼を捜させていたが、行方は依然として知れぬままだった。1年後、寧鈺軒のもとに、水害に見舞われた海坊では食糧が不足し餓死者が出そうだとの知らせが届く。心血を注いだ海坊の危機を知った寧鈺軒はすぐに駆けつけるが、すでに飢えている民は都から陸路で運ぶ食糧が届くまでもちそうになく、近隣の土地から十分な食糧を集めるのも難しい。そんな時、馬洪竹(マー・ホンジュー)という他郷の富商から大量の食糧が届く。