時は南北朝時代。江湖(こうこ)の48門派を集めて作られた「四十八寨(しじゅうはちさい)」の当主の娘・周翡(しゅうひ)は、義侠心に溢れる性格で武芸の修練に励む日々を送っていた。ある日、彼女は寨(とりで)の固い守りを破って侵入した軽功の名手・謝允(しゃいん)と出会う。彼の届けた文により、周翡の父親は山を下り、父娘は離れ離れになってしまう。修練を続け成果を認められた周翡は、任務のために下山した先で謝允と再会。そんな中、宿敵の地煞山荘(ちさつさんそう)が民を苦しめている現実を目の当たりにした周翡は、彼らを倒すため謝允と行動を共にすることに。道中で武芸の達人たちと出会い成長しながら、襲いくる様々な敵に立ち向かう中で、2人の距離は次第に近づいていくがー?
第1話 山奥の
時は南北朝時代。南刀(なんとう)こと李徵(りちょう)は48門派の者と共に、山中に四十八寨(しじゅうはちさい)を築いた。李徵亡きあとは娘の李瑾容(りきんよう)が当主を務め、その娘で義侠心溢れる性格の周翡(しゅうひ)は武芸の修練に励んでいた。そんなある日、謎の青年・謝允(しゃいん)が砦(とりで)の固い守りを見事な軽功(けいこう)で突破し侵入する。彼を取り逃し責められる周翡を見た李晟(りせい)は、悔しさから山を下りることを決意。引き止めに行った周翡は、李晟と共に洗墨(せんぼく)江に張り巡らされた仕掛けで窮地に陥るが、目の前に謝允が現れて…。
第2話 父の教え
四十八寨に侵入した謝允を逃がした周翡は母で当主でもある李瑾容から厳しい罰を受けるが、父・周以棠(しゅういとう)の取りなしでその場は収まる。周翡にとって父は常に自分をかばい、愚痴を聞いてくれる存在だった。周翡が1人になったのを見計らい謝允が現れる。周翡はうまく誘導して謝允を木のうろに閉じ込め、四十八寨へ来た理由を問い詰める。謝允は、王麟(おうりん)に託された文を周以棠に渡すためだと答える。王麟の願いは令牌(れいはい)を周以棠に届け、安平(あんへい)軍を任せることだった。
第3話 母に挑む
地煞山荘(ちさつさんそう)大荘主の沈天庶(しんてんしょ)は、海天一色(かいてんいっしき)の秘密を知る呉費(ごひ)将軍を捕らえる。そして将軍の家族の命と引き換えに秘密の鍵となる水波紋(すいはもん)の品を得ようとするも失敗し、将軍夫婦を殺害する。残された2人の子供は、張晨飛(ちょうしんひ)の案内で四十八寨を目指すが、地煞山荘の追っ手はすぐそこまで迫っていた。そこへ偶然通りかかった謝允が一行の危機を察し、一計を案じて助ける。しかし謝允を疑う張晨飛は、林で出会った霍家堡(かくかほう)の兵士に、数日間、身を寄せたいと願い出て…。
第4話
魚老(ぎょろう)から聞いた祖父・李徵の話で周翡は真の英雄の姿を思い浮かべる。そしてついに四十八寨を離れる日を迎える。孫・張晨飛の行方を追う王(おう)夫人に付き添い、旅に出た周翡と李晟。途中寄った村で住民から憎悪の視線を向けられ賊と罵られるが、そこに本物の賊が現れ王夫人と共に対峙する。常軌を逸した賊の要求に耐えかねた王夫人から力を解放することを許された周翡は、母から伝授された破雪刀(はせつとう)で賊を倒す。その威力に周翡の手は震えるのだった。
第5話
周翡は霍家堡の牢(ろう)にとらわれている四十八寨の師兄たちを救うため、囚人に盛られた温柔散(おんじゅうさん)の解毒薬を探していた。その時、互いの素性を知らぬまま地煞山荘大荘主の沈天庶と出会う。沈天庶は四象山(ししょうさん)朱雀(しゅじゃく)主・木小喬(ぼくしょうきょう)の命と、霍連涛(かくれんとう)の持つ海天一色の品の1つである慎独印(しんどくいん)を狙い牢に潜んでいたのだ。解毒薬を手に入れた周翡は謝允と共に囚人たちを解放する。その頃、暗い牢の中では己の目的を果たすため、武芸者たちが戦いを繰り広げていた。
第6話 知己と美酒
朱雀主・木小喬は長年歌い続けた「哭粧(こくしょう)」の歌詞の間違いを謝允に指摘され、衝撃を受けて去っていく。周翡と謝允はぼう然とするが、無事に逃げ延びたことで、牢を出た者たちとひとまず山中で休憩を取ることに。周翡は師兄から話し相手になるよう促されて呉楚楚(ごそそ)に声をかける。呉楚楚の首にかかるお守りを見て自分も謝允からもらった木製の刀の飾りを首にかけると、女子にとって首にかける物には深い意味があると聞かされるのだった。
第7話 焼け落ちた客舎
周翡と呉楚楚が逗留先の客舎を離れた間に、地煞山荘が火を放ったため、客舎は全焼し大勢の犠牲者が出る。華容(かよう)に紛れ込んだ悪人を成敗し街の安全を守るためだと言うが、地煞山荘大荘主・沈天庶と三荘主・仇天晋(きゅうてんしん)が城を封鎖して客舎から逃げた者の捜査を行ったため、街は大混乱に。周翡は仇天晋の狙いが呉将軍の遺児たちだと知り、呉楚楚と共に県衙内院(けんがないいん)に身を隠すことにした。そして沈天庶の捜査の目的は仇天晋と異なり、何か別の物であることに気づく。
第8話 犠牲となる者
県衙内院に身を隠した周翡と呉楚楚。客舎の火事で生き残った者を捜しに外へ出ようとした周翡の前に、中庭で歌っていた女が姿を現し、たやすく行く手を阻む。その女は周翡が繰り出した破雪刀を見ると李徵との関係を尋ねるのだった。一方、謝允は白(はく)先生と共に火事の現場へ行き、痛ましい姿となった張晨飛を見つける。地煞山荘に痛めつけられながらもまだ生きている張晨飛を救うため、動こうとした謝允。それを止めた白先生は意外な行動に出る。
第9話
周翡が李徵の孫だと知り、段九娘(だんきゅうじょう)は李徵との出会いを思い出す。それは李徵への想いを伝えたものの、拒まれた苦い思い出だった。正気を失い県衙内院で暮らす段九娘に同情した周翡は、一緒に四十八寨に行こうと誘う。その時、段九娘が突然周翡に枯栄手(こえいしゅ)の気を注入した。あまりの衝撃の強さに、周翡は倒れてしまう。その頃、謝允たちは沈天庶の追っているのが謝允の義弟で第三皇子の陳子琛(ちんしちん)だと気づき、無事に華容から脱出できるよう一計を案じる。
第10話 祖父の手ほどき
地煞山荘に襲われたところを沖霄(ちゅうしょう)に助けられた李晟は、王夫人と仲間の死を知り自責の念に駆られる。そして四十八寨に戻ろうとしたところを半ば強引に沖霄に付き合わされ、共に霍家堡へ向かう。一方、段九娘に気を注入され内力まで封じられて苦しむ周翡は、横になったまま沖霄から贈られた「道徳経(どうとくきょう)」を読んでみた。すると書物の中に陣法と技が表されていることに気づく。記された内功を少し試すとたちまちふらつき、体内で2種類の気が戦い始める。
第11話 託された思い
ようやく謝允と合流し、県衙内院から逃げ出した周翡だが、枯栄手の気が体内で暴れて身動きが取れなくなってしまう。その頃、段九娘は愛する李徵の死の原因が自らにあると悔やみ、因縁の敵である地煞山荘の荘主たちを倒そうと1人で立ち向かっていた。そこへ「道徳経」の力で気を融合させることに成功した周翡が駆けつける。その戦いぶりを目の当たりにした段九娘は、周翡こそが枯栄手の継承者だと認め、ある決断を下すのだった。
第12話
周翡と謝允は華容を離れ衡(こう)山に到着する。街で唯一の客舎に身を寄せ段九娘が来るのを待っていると、別の客の話から、段九娘が沈天庶に殺されたことを知る。周翡が心を痛めていると、青龍(せいりゅう)主の配下の殷沛(いんはい)が来た。父親の敵を捜して何度もこの客舎を訪れていると言う。殷沛と九龍(きゅうりゅう)翁の傍若無人な振る舞いに、周翡は怒り心頭に発する。一方、四十八寨へ向かう聞煜(ぶんいく)将軍と呉楚楚の所に、李瑾容の使いを名乗る男が現れ、呉楚楚を連れていこうとする。
第13話
李晟と沖霄は欲に取りつかれた沖霄の弟弟子に追われ、八卦(はっけ)陣の中へと逃げ込んだ。間一髪の状況ながらも沖霄は陣の進み方を李晟に伝授する。一方、謝允は青龍主の旗を折り、香を消してしまう。体面を傷つけられた青龍主・鄭羅生(ていらせい)がまもなく来るため、誰もが守りの準備に追われるのだった。そんな中、周翡は呉楚楚から謝允のこれまでの人生を聞かされる。謝允の本当の名は蕭川(しょうせん)。前朝の皇子として生まれたが赤ん坊の頃、反乱に遭い故国を失っていた。
第14話 憎むべき敵
地下道に潜む周翡たちに、紀雲沈(きうんちん)は若き日の話を聞かせる。北刀(ほくとう)の関鋒(かんほう)に師事していた紀雲沈は、名を上げて門派を再興させるため、山川(さんせん)剣の後継者である殷沛の父・殷聞嵐(いんぶんらん)に戦いを挑んだのだった。挑戦を拒まれた紀雲沈は息子を人質にして殷聞嵐を呼び出す。しかし2人の戦いのさなか、殷家は何者かに襲われていた。紀雲沈を罵る殷沛に、謝允は真の敵を討つべきだと諭す。一行の前に青龍主が現れるが、謝允の口から出たのは驚くべき言葉だった。
第15話
洞窟では、呉楚楚(ごそそ)が段九娘(だんきゅうじょう)と周翡(しゅうひ)が手合わせした時の記憶を頼りに枯栄手(こえいしゅ)の技を描いていた。枯栄手を後世に残したいと考えたのだ。そこへ、山の外から銅鑼(どら)の音が聞こえてくる。青龍(せいりゅう)主たちが迫っていると知った謝允(しゃいん)は、皆に洞窟を出るよう勧めるが、紀雲沈(きうんちん)は青龍主を殺すべきだと言い、「廃した武芸の能力を取り戻すまで、時間稼ぎをしてほしい」と周翡に協力を求める。そのうえで文闘(ぶんとう)という方法を使って北刀(ほくとう)の断水纏絲(だんすいてんし)を伝授したいともちかけた。
第16話 復活の時
周翡は紀雲沈から文闘で北刀の断水纏絲を伝授されていた。謝允たちは洞窟の入り口を塞ぎ見守っていたが、青龍主の配下たちに居所を突き止められてしまう。やがて青龍主が現れ、周翡は紀雲沈が力を回復する時間を稼ぐべく交戦する。北刀をも取り入れた周翡の進歩の早さに圧倒された青龍主は、周翡を始末しようと攻撃。だが、青龍主がかつて殷聞嵐(いんぶんらん)夫人の物であった護身衣を身に着けていることに気づいた謝允は、海天一色(かいてんいっしき)の話題を出して、青龍主の動揺を誘う。
第17話 劇団の
李晟(りせい)の機転で谷天顕(こくてんけん)たちから逃れた呉楚楚は、そのまま李晟と四十八寨(しじゅうはちさい)へ向かうことに。一方、周翡と謝允は衡陽(こうよう)に到着。ただ1人周翡を救うことができるという内力の持ち主・霓裳(げいしょう)夫人の行方を捜して奔走する謝允だが、周翡の具合は悪くなるばかり。ようやく霓裳夫人を見つけるも、すげなく断られてしまう。同じ頃、地煞山荘(ちさつさんそう)の大荘主・沈天庶(しんてんしょ)も衡陽に到着していた。沈天庶は霓裳夫人が率いる歌劇団・羽衣班(ういはん)を狙い、次々と殺めていく。
第18話 二流の達人
周翡と謝允のあとをつけて、霓裳夫人の居場所を探し当てた沈天庶は、海天一色について夫人を問い詰める。夫人は羽衣班に危害が及ぶのを恐れ、海天一色は巨大な宝物であると明かす。一方、霓裳夫人のおかげで回復した周翡は、訪れた茶楼で講談を聞いた。語られていたのは、南刀(なんとう)の継承者である侠女が活躍する武勇伝だった。その頃、衡陽の街を一人で散策する李妍(りけん)も李徵(りちょう)についての講談を聞き、自分は李徵の孫だと思わず叫んでしまう。
第19話 名声の行方
李妍を南刀の継承者だと思い込む楊瑾(ようきん)だったが、行脚幇(あんぎゃほう)の徐舵主(じょだしゅ)に勘違いであると知らされ、本物の継承者である周翡を訪ねに羽衣班の滞在場所・樵雲居(しょううんきょ)へと向かう。門前でにらみ合う羽衣班と行脚幇。徐舵主と楊瑾は李妍の腕輪を見せ、挑戦を受けるよう周翡に迫る。楊瑾は擎雲溝(けいうんこう)の主(あるじ)で断雁十三刀(だんがんじゅうさんとう)の使い手だった。周翡は挑発に乗ることなくその場を去るが、ひそかに楊瑾たちを追って李妍の居場所を探る。李妍は大事な人質としてもてなされていた。
第20話 力と知恵
楊瑾に挑まれた勝負を受けようとする周翡。しかし彼女の弱った体を案ずる謝允は、断雁十三刀の速さと重さには太刀打ちできないと周翡を説得しようとする。それでも周翡は南刀の継承者として楊瑾に勝つために秘策を練っていた。勝負の日、周翡は霓裳夫人に刀を借りる。霓裳夫人の脳裏をよぎるのは、かつての好敵手・李徵と殷聞嵐の姿であった。一方、追っ手から逃れて四十八寨へ向かう李晟と呉楚楚は、立ち寄った街で狼藉者に襲われる。
第21話 春山に積もる雪
霓裳夫人が謝允に「今から語る話を題材に曲を書いてほしい」と語り始めたのは、若き日の李徵と殷聞嵐の友情の物語だった。南刀の李徵には周翡という後継者が育っているが、山川(さんせん)剣の殷家の零落を思うと、夫人の心は深く沈む。翌朝、周翡たちが目覚めると殷聞嵐ゆかりの剣が見当たらず、樵雲居の羽衣班も皆、姿を消していた。その時、樵雲居の門を叩く者が。門を開けると、周翡と李晟を捜して李妍と共に下山した馬吉利(ばきつり)がいて…。
第22話
四十八寨の麓、春回(しゅんかい)鎮でのにぎやかな夜、喧噪から外れるように屋根の上で酒を飲む周翡と謝允。そんな時、馬吉利が慌てた様子でやってきて李妍が消えたと伝える。李妍も街のにぎわいが気になり、楊瑾に手伝わせて宿を抜け出したのだった。それを確かめた周翡たちは安心し、四十八寨を望む場所で飲み直す。楊瑾に付きまとわれながら宿に戻った李妍が兄・李晟と再会し、呉楚楚と出会っていた頃、周翡は四十八寨の異変を感じ取っていた。
第23話 教えを胸に
四十八寨へと攻め込んできた谷天顕や寇丹(こうたん)たちと対峙する周翡は、師であった魚老(ぎょろう)の死に衝撃を受ける。寇丹が四十八寨を裏切ったのは、海天一色の品を手に入れるためであった。一方、地煞山荘の動きが怪しいと警戒した李晟は、やむを得ず奇策を講じる。負傷者が多数出る中、呉楚楚は守られるだけでなく、自ら四十八寨を守る役に立ちたいと手当てを志願するのだった。そんな時、麓の村に柱国(ちゅうこく)・兪聞止(ゆぶんし)の大軍が到着し、村人たちを次々と捕らえていく。
第24話 2つの目的
周翡は兪聞止を捕らえるため、馬吉利から精鋭を借りて謝允と共に山を下りる。兪聞止の居場所を探しつつも、周翡は捕らえられた村人を救いたいと思っていた。2つの目的を果たすため謝允は折衷案を出す。長老(ちょうろう)堂では李晟たちが四十八寨防衛のための策を練っていた。鄧甄(とうしん)は、外の山門を撃破されたら、飛虹(ひこう)橋を第2の防御線として戦うことを提案する。その頃、沈天庶と兪聞止は山門と洗墨(せんぼく)江の双方から四十八寨を挟み撃ちにする計画を立てていて…。
第25話 天地と己に恥じぬ生き方
援軍要請の文を届けるため下山した李妍は、危険なところを偶然再会した楊瑾に救われる。そして一緒に行くという楊瑾に周翡を助けるよう頼むと、1人で寒水(かんすい)鎮の拠点へと向かったが、ここにも地煞山荘の手は伸びていた。李妍の下山により抜け道の存在を知った兪聞止は寇丹に疑いを抱く。兪聞止の居所を探る周翡と謝允は離間計によって護衛を交代させ、そのあとを追うことで居所をつかむ。だが、忍び込んだ周翡を待っていたのは意外にも行脚幇の者だった。
第26話 募る思い
地煞山荘が寨門に迫るその時、周翡の母である当主・李瑾容(りきんよう)が帰還し、四十八寨は危機を免れる。意識を失った周翡のもとを訪れた李瑾容は、周翡が段九娘に枯栄手の気を注入されたこと、また李徵の刀を手に入れたことを知り、感慨を覚えるのだった。自らの命を顧みず推雲掌(すいうんしょう)を放った謝允は、残された時間が少ないことを悟り、周翡に別れを告げようと決意する。一方、四十八寨から撤退した沈天庶と兪聞止は、謝允の正体と体の異変に気づいていた。
第27話 魔の薬
霍家堡(かくかほう)の霍連涛(かくれんとう)が打倒地煞(ちさつ)を旗印に武林の者を集め、滅煞(めっさつ)大会を開催することになった。しかし四十八寨(しじゅうはちさい)当主・李瑾容(りきんよう)は四十八寨の立て直しのために手が離せず、代理で李晟(りせい)が参加することになる。殷沛(いんはい)は武芸を磨こうと鍛錬を積むが、体質的な限界を感じ悩んでいた。その時、沖霄(ちゅうしょう)が話していた鳳凰丹(ほうおうたん)を思い出し、沖霄の部屋から盗んで服用すると猛烈な効果が得られた。だが鳳凰丹は、むやみに飲めば命を縮め、飲んだ者の心を崩壊させる魔の薬だった。
第28話 毒と過ごした年月
零陵(れいりょう)で謝允(しゃいん)を捜す周翡(しゅうひ)。その姿を見かけた謝允は慌てて身を隠し、老人に扮して当てもなく街をさまよう。するとそこに周翡が現れて行く手を阻み、四十八寨で自分がやられたのと同じように謝允の昏睡穴(こんすいけつ)を打って眠らせ宿へ運び込む。その頃、李晟と呉楚楚(ごそそ)も零陵に到着。偶然周翡と会い、さらに李妍と楊瑾(ようきん)にも出くわす。周翡は李晟に羽衣班(ういはん)の霓裳(げいしょう)夫人を捜すよう頼むのだった。四象山(ししょうさん)の玄武(げんぶ)主・丁魁(ていかい)は、霍連涛に協力を申し出るが門前払いを食らう。
第29話 運命に
謝允の体が毒に侵されていることを知った周翡に対し、謝允は自分が生きれば戦が続き、天下に災いをもたらすから放っておけと口走る。その言葉に怒りをあらわにした周翡は、謝允を必ず助けると誓うのだった。翌日、周翡に手料理をふるまおうとする朱晨(しゅしん)の様子を見た謝允は、心の中に嫉妬が芽生えていることに気づく。そして訪れた滅煞大会の日。第三皇子・陳子琛(ちんしちん)が零陵を訪れていることを知った地煞山荘の四荘主・楚天瑜(そてんゆ)はある計略を思いつく。
第30話
滅煞大会の会場に現れた霍連涛は、武林の盟主となる英雄を選び、その者に霍家伝来の慎独印(しんどくいん)を譲ると約束した。そして武林が団結して海天一色(かいてんいっしき)の宝を探すことを提案する。その話しぶりから、謝允は霍連涛が実は海天一色が何であるか分かっていないと見破る。一方、大会の参加者たちは英雄の選び方を巡ってもめていた。武芸を競う声が高まったが、李晟たちはそんなことをすれば地煞山荘に立ち向かうどころか、武林の力が弱体化すると憂慮していた。
第31話 美と力
霍家堡の林は混乱を極めていた。霓裳夫人と丁魁が戦い、李晟は迷う人々を出口へと導く。楚天瑜は霍連涛を一撃で倒すと朱雀(しゅじゃく)主・木小喬(ぼくしょうきょう)も攻撃し、慎独印を奪う。道に迷い襲われた陳子琛は周翡と謝允に救われ、周翡の鮮やかな戦いぶりに目を奪われる。ついに楚天瑜と遭遇した謝允は戦う覚悟を決める。天門鎖(てんもんさ)でつながれたまま楚天瑜と戦う周翡と謝允だったが、途中でどうにか鎖を外すことに成功。謝允は再び内力を使い、推雲掌(すいうんしょう)を繰り出した。
第32話 かすかな希望
同明(どうめい)大師は謝允の秘められた過去について周翡に語る。謝允の体内にある透骨青(とうこつせい)の毒は、「薬王経(やくおうきょう)」に記されたものであった。毒を毒で制すれば謝允の命をつなぐことができると知った周翡は、10年に1度咲くという火蓮(かれん)を探して雪山へ旅立つ。一方、守られるばかりの立場を脱しようと武芸の修練に励む呉楚楚の前に、別人のようになった殷沛が現れる。殷沛が手にする沖霄の払子(ほっす)を目にした李晟は、払子を奪おうと殷沛に襲いかかり…。
第33話
李妍たちは手負いの劉有良(りゅうゆうりょう)を救い、ある荒寺にたどり着いた。李妍が李徵(りちょう)の孫娘だと知った劉有良は、自分が海天一色の宝の守り人であることを明かす。地煞山荘の六荘主・童天仰(どうてんぎょう)の追っ手が迫った時、劉有良は李妍に1枚の地図を見せて裏に書かれた詩を覚えるよう命じた。その頃、周翡は火蓮を求めて雪山を目指していた。そのあとを追うのは、雪狼(せつろう)の異名を持つ地煞山荘の七荘主・陸天曠(りくてんこう)と、木小喬。山頂付近で三つ巴となった3人は、慎独印を巡って駆け引きを始める。
第34話 奇妙な友情
李晟は沖霄の安否を確かめに斉門(さいもん)の迷踪林(めいそうりん)へと入った。李晟を追ってきた呉楚楚は、封無言(ほうむげん)に声をかけられ迷踪林へと案内されるが進み方が分からず、封無言は怒って去っていく。その様子を殷沛が陰からうかがっていた。火蓮を求めて雪山に登った周翡は陸天曠の攻撃と雪崩を避け、木小喬と共に洞穴にいた。腹を割って話すうちに、木小喬との間に奇妙な友情が芽生え、慎独印を渡す代わりに火蓮を摘む手助けをしてもらうことにする。
第35話 宝の秘密
周翡が擎雲溝(けいうんこう)へ向かうと読んだ地煞山荘の五荘主・胡天瑛(こてんえい)は、慎独印を奪うために地煞山荘を出る。一方、周翡は父・周以棠(しゅういとう)が海天一色の秘密を知ると聞き、安平(あんへい)軍の軍営へ向かう。久々の再会を果たした父娘。周以棠から海天一色が隠された経緯を聞き、宝刀を贈られた周翡は、謝允を救う決意を固めるのだった。その頃、周翡から文を受け取った李妍たちは、楊瑾が掌門(しょうもん)を務める擎雲溝へ赴き、謝允を救うために猛毒の朱明草(しゅめいそう)を採ろうと試みるのだが…。
第36話
小薬谷(しょうやくこく)の長老から掌門の任を解かれた楊瑾は、擎雲溝の禁林(きんりん)近くで李妍と応何従(おうかしょう)に追いつく。猛毒の朱明草のある林は瘴気に包まれ、警備の者から奪った瘴気よけの香袋を使っても思うように動けない。それでも3人は知恵を出し合いながら林の奥へ進み、ついに朱明草を発見する。一方、掌門不在となった小薬谷に胡天瑛が現れた。自ら大薬谷(だいやくこく)の伝承者を名乗る胡天瑛は、腕試しと称して長老に毒を盛って体の自由を奪い、小薬谷を支配するのだった。
第37話 再会
酒に酔う周翡の前に謝允が現れた。幻だと知りつつ、そばにいてほしいと周翡は願う。蓬莱(ほうらい)にいる謝允は薬湯の効果もあり命を取り留めているが体の冷えは変わらず、ほとんど眠っている状態だった。李妍と楊瑾は擎雲溝で手に入れた朱明草を周翡に渡すために急いで零陵へと向かう途中、李晟と呉楚楚に会う。再会の喜びも束の間、地煞の童天仰が現れ朱明草を狙う。李晟たちが救援要請の花火を上げると、周翡が颯爽と現れて…。
第38話 夜明け前
己の命が短いことを悟った謝允は、運を天に任せようと心に決める。謝允が周翡に贈る刀の名に選んだのは「夜明け前のかすかな光」を意味する「熹微(きび)」であった。謝允は周翡と共に蓬莱を出て、かつて過ごした建康(けんこう)へと向かう。一方、四十八寨へ戻った李晟は、殷沛を討つべく江湖(こうこ)の達人たちと手を組み、決戦に備えていた。武芸書をまとめる務めにいそしむ呉楚楚の姿を見た李瑾容は、父の遺した破雪刀(はせつとう)を書き記してほしいと呉楚楚に頼む。
第39話 武林の結束
柳家荘(りゅうかそう)に武林の武芸者が集結し、清暉真人(せいきしんじん)こと殷沛を討つための協議を行っていた。李晟は武林の団結の必要性を説き、柳荘主の母の誕辰祝いを利用した作戦を提案する。案の定、鉄面の魔が宴に姿を現したが、あっさり罠に落ちて捕らえられる。李晟たちが不可解に思っていると、さらに7人の鉄面の魔が現れた。呉楚楚は8人の背格好から、その中に殷沛がいないと見抜く。李晟に呼ばれて謝允と共に柳家荘に到着した周翡は、殷沛に出くわし対決する。
第40話
柳家荘から逃げた殷沛を山川剣(さんせんけん)の剣譜(けんふ)と鞘(さや)を狙う童天仰が追っていた。剣譜は霓裳夫人から呉楚楚へ託されていたが、呉楚楚はそれを後顧の憂いを絶つために燃やす。すると殷沛が現れ、呉楚楚を殷家荘跡へとさらう。その頃、周翡の前に木小喬が現れ、胡天瑛を殺したと告げる。胡天瑛の毒を受け先が長くないと悟った木小喬は慎独印を周翡に託し、鳳凰丹で謝允を救えるかもしれないと伝えると1人去っていった。同じ頃、林には胡天瑛の姿が…。
第41話 母の決断
四十八寨(しじゅうはちさい)に戻ってきた周翡(しゅうひ)たち一行は、地煞山荘(ちさつさんそう)との戦いの成果を当主・李瑾容(りきんよう)に褒められ、しばし安寧の時を過ごす。周翡たちの帰還で、海天一色(かいてんいっしき)の5つの品すべてが四十八寨に集まることとなった。この先に起こるであろう波乱を案じる李瑾容は、父が遺した品を見ながらかつての出来事を思い出し、ある決断を下す。一方、周翡たちの帰還を知った柱国(ちゅうこく)・兪聞止(ゆぶんし)は、周以棠(しゅういとう)が安平(あんへい)軍を離れると読み、地煞山荘の大荘主・沈天庶(しんてんしょ)に周以棠の暗殺をもちかけるのだった。
第42話 皇子の恋
安平軍を聞煜(ぶんいく)将軍に託した周以棠は、李瑾容の誕辰の時期に合わせて四十八寨へ向かう。途中で現朝の配下と思われる賊に襲われるが、機転を利かせ、無事に難を乗り越えた。その頃、柱国は病の床に伏している第三皇子の陳子琛(ちんしちん)のもとへ地煞山荘の五荘主・胡天瑛(こてんえい)を送り込み、四十八寨襲撃の突破口とする計画を進めていた。うまく皇子の側近の信頼を得た胡天瑛は、皇子の恋の病を治すためには周翡への求婚が薬になるとほのめかし、陳子琛らと共に四十八寨へ向かう。
第43話 悪い夢
李瑾容は沈天庶と戦い、とどめを刺す。確かな手応えを感じたが、刺した相手はいつの間にか夫の周以棠に変わっていた。自分自身の悲痛な叫びと共に目を覚まし、悪夢だったと気づく李瑾容。その後、密偵などの情報から地煞山荘が周以棠を使って自分を脅し、海天一色の品を奪おうとしていると悟る。李瑾容は自身の病状を周囲に伏せ、1人で地煞山荘へ向かい沈天庶を討とうと考えていた。すると部屋に謝允(しゃいん)がやってきて海天一色の品を葬るよう訴える。
第44話 解毒の術
胡天瑛の毒に倒れた李瑾容。さらに海天一色の品もすべて盗み出されてしまった。周翡は解毒の術を聞き出すために胡天瑛を追って山を下りる。一方、傷心の陳子琛一行も山を下りようとするが、山門は封鎖され、張博林(ちょうはくりん)たちから地煞山荘と結託しているのではと疑いの目を向けられる。すべてが胡天瑛の謀略であったことに気づいた謝允は、周翡の身を案じてあとを追う。その頃、沈天庶は胡天瑛を迎えるべく、四十八寨の麓にある寒水(かんすい)鎮に到着していた。
第45話 離間計
盗まれた海天一色の品の奪還を図る李晟(りせい)は、ある奇策を思いつく。それは、兪聞止の間者から奪った令牌(れいはい)を使って、沈天庶と胡天瑛を離間させることだった。そのために行脚幇(あんぎゃほう)と羽衣班(ういはん)の協力を得て、寒水鎮に向かう地煞山荘の二荘主・谷天顕(こくてんけん)を捕らえる。その頃、親切心から助けたつもりの沈天庶に捕らわれた李妍(りけん)は、劉有良(りゅうゆうりょう)に教えられた詩を書き出すよう迫られていた。四十八寨の仲間に危害が及ぶことを恐れた李妍は、ついに詩の内容を沈天庶に教えてしまう。
第46話 仲間と共に
周翡の破雪刀(はせつとう)に倒れた胡天瑛は沈天庶を信じて待つが、会うことはかなわず苦しみながら死んでいく。地煞山荘に戻った沈天庶は、李妍から聞き出した詩を頼りに谷天顕へ海天一色のありかを探すよう命じる。沈天庶は武器鍛造の最高技術「宿鉄法(しゅくてつほう)」を海天一色に求めていた。一方、周翡は四十八寨に帰還した周以棠と対面する。胡天瑛の言葉を思い出し、海天一色の中に李瑾容の毒の解毒法があると伝えるが、周以棠は李瑾容を蓬莱(ほうらい)へ連れていくと言い出し…。
第47話 秘密の村
李妍が口にした詩を手がかりに、地煞山荘の谷天顕と七荘主・陸天曠(りくてんこう)は大薬谷(だいやくこく)へたどり着く。仕掛けが施された扉の向こうには、村が広がっていた。2人は海天一色のありかを聞き出すために、村人全員を監禁する。谷天顕たちのあとに続いて大薬谷にやってきた周翡たち一行は、捕らわれた村人たちを見て、どう動くべきか考えあぐねていた。一方、軍営にいる聞煜将軍のもとを訪れた謝允は、戦に苦しむ民を思い、君主のあり方について決意を固める。
第48話 詩が表す場所
地煞山荘の2人の荘主を一度に相手とする周翡は、先に谷天顕を捕らえる。だが、地煞山荘の名誉のためだと言って陸天曠が谷天顕を射殺。さらに陸天曠は攻撃の刃を周翡たちに向ける。するとその時、聞煜将軍へ助けを求めに行っていた呉楚楚(ごそそ)が将軍の配下と共に現れ、地煞山荘を追い払うことに成功するのだった。再会を果たした周翡らは、劉有良が残した詩の表す情景が、目の前に広がる景色のことだと気づき、海天一色のありかを目指す。
第49話
仕掛けに迷う李晟たちの前に沈天庶が壁を打ち破り現れる。海天一色の仕掛けを解くよう迫られた李晟は、仲間の無事を保証し、「薬王経(やくおうきょう)」を渡すことを条件に応じる。そして、5つの品を使った八卦(はっけ)の術でついに仕掛けを解くが、沈天庶は約束を破って書物を奪い李晟たちに襲いかかる。一方、「斉物訣(さいぶつけつ)」の世界に捕らえられた周翡は気が暴走し、謝允の必死の呼びかけでやっと現実へ戻る。そして沈天庶と対決し、書物を取り返そうとするが…。
第50話 赤い衣の
平穏を取り戻した大薬谷をあとにして、周翡たち一行は帰路についた。しかし、沈天庶は謝允の残した「宿鉄法」を試すために数多くの匠を集め、再び大薬谷の人々を捕らえてしまう。一方、四十八寨に戻り、周翡を遊びに誘った謝允が向かった先は仕立て店であった。周翡のために赤い衣を仕立てさせていたのだ。試着をしようと席を外した周翡の茶に、謝允はある薬を入れる。謝允は己の生死を選択するために、最後の決断を下していた。
第51話(最終話) 最後の決闘
沈天庶に恨みを抱く陸天曠は、「宿鉄法」より劣る技術で造った義手を、「宿鉄法」だと偽って沈天庶に贈る。その策略を見破った沈天庶は陸天曠の裏切りを確信し、報復として同じ方法で造った劣悪な武器を陸天曠に届ける。その頃、李晟と呉楚楚は、帝位を狙う兪聞止と沈天庶の結託を示す証拠を現朝の郭中丞(かくちゅうじょう)に届け、呉(ご)将軍の敵を討つための協力を求めていた。そしてついに、周翡と謝允、李晟、楊瑾(ようきん)、応何従(おうかしょう)たちは軍勢を率いて地煞山荘へ向かい、戦いを挑む。